看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
ICUで、急性心筋梗塞後の60歳男性。肺動脈カテーテルが挿入され、モニター上でPCWPが22 mmHgに上昇しているのをあなたが発見しました。患者は少し苦しそうな表情をしています。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
即時のアセスメント: バイタルサイン(特に呼吸数、SpO2、血圧)、聴診(肺野のラ音の有無)、呼吸様式(努力性、起坐位を好むか)、痰の性状、皮膚の色調を確認します。
2.
医師への報告: 「PCWP 22 mmHg上昇、呼吸苦の徴候あり」と、SBAR形式で迅速に報告します。
3.
看護ケア: 医師の指示を待ちながら、安楽な体位(ファウラー位または起坐位)を確保し、酸素投与を開始します。不安を取り除く声かけを行います。
4.
治療の協働: 医師から利尿薬(フロセミドなど)の静脈内投与指示が出たら、効果(尿量増加)と副作用(電解質異常、脱水)に注意しながら実施します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- PCWP測定時は、バルーンを膨らませすぎたり、長時間膨らませたままにしない(肺動脈破裂や虚血のリスク)。
- カテーテル挿入部位の感染徴候(発赤、腫脹、排膿)を常に観察します。
- データの解釈は、患者の全身状態と合わせて総合的に行います(数値だけに頼らない)。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護の焦点 | 具体的アクション |
|---|
| PCWP上昇確認時 | 呼吸状態の悪化予防 | 体位変換(ファウラー位)、SpO2連続モニタリング、聴診の頻回実施 |
| 利尿薬(ループ利尿薬)静注時 | 効果と副作用のモニタリング | 時間毎の尿量測定、電解質(特にK)チェック、血圧・脈拍観察 |
| 肺動脈カテーテル管理 | 合併症予防 | 挿入部の清潔保持、波形の確認(適切な楔入波形か)、ゼロ校正の実施 |
先輩看護師からの一言
「血行動態の数字は、患者さんの体が発している『SOS信号』です。PCWPが高いということは、『肺に水が溜まり始めているよ、苦しいよ』というサイン。数値を追うだけでなく、その数字が意味する患者さんの苦痛を想像し、先回りしてアセスメントすることが、ICU看護の醍醐味であり、プロの看護師の証ですよ!」