看護学のコア解説
この問題は、
血液力学的モニタリング (Hemodynamic monitoring) のデータを解釈し、
心原性ショック (Cardiogenic shock) の患者に対して最優先の看護介入を判断する能力を問うています。心臓カテーテルデータの読み取りと、病態生理に基づいた適切なケアの選択が鍵となります。
重要概念の分析 (Key Concept)
問題の患者データを分析します。
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CVP 18 mmHg:中心静脈圧 (Central Venous Pressure) の正常値は
2-8 mmHg です。上昇したCVPは、
右心不全 (Right-sided heart failure) または血管内容量過剰を示唆します。
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PAWP 22 mmHg:肺動脈楔入圧 (Pulmonary Artery Wedge Pressure) の正常値は
6-12 mmHg です。著明な上昇は、
左心不全 (Left-sided heart failure) による
肺うっ血 (Pulmonary congestion) を強く示しています。
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心拍出量 3.2 L/min:心拍出量 (Cardiac Output) の正常値は
4-8 L/min です。低下しています。
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全身血管抵抗 1800 dynes/sec/cm⁵:全身血管抵抗 (Systemic Vascular Resistance) の正常値は
800-1200 dynes/sec/cm⁵ です。上昇しており、末梢血管が収縮している状態(代償機転)を示します。
ここがポイント! このデータパターン(
PAWP上昇 + 心拍出量低下)は、
心原性ショック (Cardiogenic shock) の典型的な所見です。心筋のポンプ機能が低下し、十分な血液を送り出せないため、心拍出量が低下します。その結果、左心室の血液がうっ滞し、PAWPが上昇し、肺うっ血を引き起こします。CVPの上昇は、右心にも負荷がかかっている(両心不全)か、または肺うっ血が重度であることを示しています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①「医師の指示に基づき強心薬を投与し、心収縮力を改善する」です。
心原性ショックの根本的な問題は、
心筋の収縮力低下 (Decreased myocardial contractility) です。強心薬(例:ドブタミン、ドパミン)は、心筋の収縮力を直接増強することで心拍出量を増加させ、臓器灌流を改善します。これが最も根本的な治療アプローチであり、看護師として優先すべき介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、この患者の病態では有害となる可能性があります。
②「輸液を増やして前負荷を改善する」:PAWPがすでに
22 mmHg と非常に高い状態です。これ以上輸液を増やすと、
急性肺水腫 (Acute pulmonary edema) を悪化させ、呼吸状態をさらに悪化させる危険があります。
③「Trendelenburg体位(頭部を下げる体位)にして静脈還流を促進する」:これも静脈還流(前負荷)を増加させるため、②と同様に肺うっ血を悪化させます。ショック時の体位は通常、
ショック体位 (Shock position)(下肢を挙上)ですが、心原性ショックでは禁忌です。
④「深呼吸を促して酸素化を改善する」:酸素化の改善自体は重要ですが、これは対症療法です。根本的な心ポンプ機能の改善が最優先であり、この選択肢は「最優先の介入」としては不十分です。また、重度の肺うっ血がある患者に深呼吸を強いることは困難で、かえって呼吸仕事量を増加させる可能性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
血液力学的パラメータは、ショックの種類を鑑別する上で極めて重要です。
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心原性ショック:PAWP ↑、心拍出量 ↓、SVR ↑
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循環血液量減少性ショック (Hypovolemic shock):PAWP ↓、心拍出量 ↓、SVR ↑
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敗血症性ショック (Septic shock)(高拍出型):PAWP ↓ or →、心拍出量 ↑、SVR ↓
看護師は、これらのデータのトレンド(変化)を継続的にモニタリングし、治療への反応を評価することが求められます。
概念のまとめ
PAWP上昇 + 心拍出量低下 = 心原性ショック。治療の第一目標は、強心薬による心収縮力の改善。輸液負荷は肺うっ血を悪化させるため禁忌。
一目で比較!
| ショックの種類 | PAWP | 心拍出量 | 全身血管抵抗 | 優先看護介入 |
|---|
| 心原性ショック | 上昇 | 低下 | 上昇 | 強心薬投与、肺うっ血の管理 |
| 循環血液量減少性ショック | 低下 | 低下 | 上昇 | 急速輸液、出血源のコントロール |
| 敗血症性ショック(早期) | 正常〜低下 | 上昇 | 低下 | 抗菌薬、大量輸液、昇圧薬 |
解剖生理と薬理のポイント
PAWPは、肺動脈カテーテルの先端を肺動脈の末梢で楔入させて測定します。これは左心房圧を間接的に反映し、
左心室の前負荷 (Left ventricular preload) の指標となります。前負荷が高すぎると肺うっ血に、低すぎると心拍出量が低下します。強心薬(ドブタミンなど)は心筋のβ1受容体を刺激して収縮力を高め、
心係数 (Cardiac index) を改善します。
暗記のコツとゴロ合わせ
心原性ショックのデータを覚えるゴロ:「
ハ(8)ワイ(1)が下がって、パワー(PAWP)が上がる」
「ハワイ」→ 心拍出量(CO)が「下がる」、PAWPが「上がる」。SVRは代償で上がります。
国試頻出ポイント
血液力学的モニタリングの数値とショックの鑑別は超頻出です。正常値と、各ショックにおける変化の方向性(↑↓)をセットで暗記しましょう。また、「最優先の看護介入」を問う問題では、
病態生理の根本原因に直接アプローチするケアを選ぶことが鉄則です。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「心原性ショック」でも、
1. データ解釈からショックの種類を選ばせる問題。
2. 提示されたデータに基づき、看護師が実施すべき/実施してはいけないケアを選ばせる問題(本問)。
3. 強心薬(ドブタミンなど)投与中の観察ポイント(不整脈、血圧、尿量など)を問う問題。
と、様々な角度から出題されます。データ解釈とケア選択をセットで学習することが重要です。