看護学のコア解説
この問題は、
心原性ショック (Cardiogenic shock)の患者に対する
優先度の高い看護介入 (Priority nursing intervention)を問うています。心原性ショックは、
心筋梗塞 (Myocardial infarction)などにより心臓のポンプ機能が著しく低下し、全身への十分な血液供給が維持できなくなった状態です。
重要概念の分析 (Key Concept)
問題文の患者は、急性心筋梗塞後の心原性ショックです。血圧
80/50 mmHg、心拍数
110 bpm、尿量
15 mL/hr(乏尿の定義は通常20mL/hr未満)と、
組織灌流不全 (Tissue hypoperfusion)を示す典型的な所見が揃っています。心原性ショックの根本的な問題は「ポンプの故障」、つまり心筋収縮力の低下です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 心原性ショックの第一選択治療は、
強心薬 (Inotropic agents)の投与です。ドパミンやドブタミンなどが用いられ、低下した心筋収縮力を強化し、
心拍出量 (Cardiac output)と血圧を上昇させます。これにより、腎臓を含む重要臓器への血流が改善され、尿量の回復が期待できます。看護師は、医師の指示に基づき迅速に強心薬の準備と投与を行うことが、最も優先度の高い介入となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 500 mLの生理食塩水の急速投与:
混同注意! これは
循環血液量減少性ショック (Hypovolemic shock)の初期治療です。心原性ショックでは、ポンプ機能が低下しているため、過剰な輸液は
肺うっ血 (Pulmonary congestion)や
肺水腫 (Pulmonary edema)を悪化させる危険があり、禁忌です。
② 酸素流量を6 L/分に増量:酸素投与は重要ですが、
優先度 (Priority)の観点からは、根本的なポンプ機能を改善する強心薬投与の方が緊急性が高いです。酸素投与は並行して行われます。
③ トレンデレンブルグ体位:この体位(頭部を低くする)は、一時的に脳への血流を増やす目的で使われることもありますが、心原性ショックでは横隔膜が挙上し呼吸がさらに困難になるため、一般的には推奨されません。根本治療にはなりません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックの種類によって初期対応が異なります。心原性ショックは「ポンプ障害」、循環血液量減少性ショックは「内容量の不足」、敗血症性ショックは「血管拡張と内容量の相対的不足」が主な病態です。看護師は、バイタルサイン、尿量、皮膚所見(冷感、蒼白)などからショックの種類をアセスメントし、適切なケアを選択する能力が求められます。
概念のまとめ
・心原性ショック:心臓のポンプ機能障害が原因。
・優先介入:強心薬投与による心筋収縮力の改善。
・禁忌:過剰な輸液(肺水腫のリスク)。
・評価指標:血圧、尿量、意識レベル、皮膚灌流。
一目で比較!
| ショックの種類 | 主な原因 | 初期治療の原則 | 看護上の注意 |
|---|
| 心原性ショック | 心筋梗塞、心筋症 | 強心薬、IABP | 輸液は慎重に、肺水腫に注意 |
| 循環血液量減少性ショック | 出血、脱水 | 急速輸液、出血源のコントロール | 急速輸液路の確保、出血量の観察 |
| 敗血症性ショック | 重症感染症 | 抗菌薬、輸液、昇圧薬 | 感染源の同定、早期治療開始 |
| 神経原性ショック | 脊髄損傷 | 輸液、昇圧薬 | 除脈、体温調節障害に注意 |
解剖生理と薬理のポイント
・
強心薬 (Inotropes):心筋の収縮力を高める(陽性変力作用)。例:ドブタミン(β1作用優位)、ドパミン(用量依存性)。
・
昇圧薬 (Vasopressors):血管を収縮させ血圧を上げる。例:ノルアドレナリン(α作用優位)。心原性ショックでは、強心作用も併せ持つドパミンなどが第一選択となることが多い。
・尿量は
腎灌流 (Renal perfusion)の重要な指標。正常は
0.5-1 mL/kg/hr以上。これ以下は乏尿を示す。
暗記のコツとゴロ合わせ
・ショックの優先対応:「心原性は強心、出血は輸液、感染は抗菌薬」とシンプルに覚える。
・心原性ショックで輸液がダメな理由:「ポンプが弱いのに水を入れすぎると、あふれて肺が水浸し(肺水腫)」。
国試頻出ポイント
心原性ショックは、急性心筋梗塞の重篤な合併症として頻出です。「最も優先すべき看護行動は?」「禁忌となる処置は?」という形で問われます。病態生理(ポンプ障害)を理解していれば、自ずと答えが導けます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「心原性ショックの治療は?」と問うだけでなく、具体的な臨床データ(低血圧、乏尿)を示した上で、「看護師が最初に実施すべきことは?」と
優先順位付け (Prioritization)を問う問題が増えています。看護過程のアセスメント力が試されます。