看護学のコア解説
この問題は、
術後患者 (Postoperative patient)に発生した
低容量性ショック (Hypovolemic shock)に対する
最優先の看護介入 (First priority nursing intervention)を問うています。ショック時の対応では、
ここがポイント! 病態生理に基づいた
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)と、原因に対する直接的な治療が基本となります。
重要概念の分析 (Key Concept)
低容量性ショックは、循環血液量の急激な減少により組織への酸素供給が不足する状態です。本症例では、大手術後6時間というタイミングから、
術中・術後の出血 (Intraoperative/Postoperative bleeding)や体液の喪失が主要な原因として疑われます。血圧
80/50 mmHg、心拍数
120 bpm、尿量減少は、循環血液量減少に伴う代償性の
頻脈 (Tachycardia)と、
腎血流量 (Renal blood flow)の低下を示す典型的な所見です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解が「① 大口径の静脈路を確保し、輸液蘇生を開始する」である理由は、低容量性ショックの根本的な治療が「循環血液量の補充」だからです。他の介入はすべて、この一次治療が行われた上で、または並行して行われる二次的な介入です。大口径(14G~18G)の静脈路は、急速な輸液や必要に応じた輸血を行うために必須です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ② 処方された昇圧薬を投与する:昇圧薬(例:ノルアドレナリン)は血管を収縮させ血圧を上げますが、血管内に十分な容量がない状態で使用すると、末梢組織への血流をさらに悪化させるリスクがあります。原則として、十分な輸液蘇生を行っても血圧が維持できない場合に追加されます。
混同注意! ③ トレンデレンブルグ体位にする:かつてはショック時に推奨されていましたが、現在では横隔膜を挙上させ呼吸を妨げる可能性や、脳圧を上昇させるリスクがあるため、推奨されていません。代わりに、下肢を挙上する
ショック体位 (Shock position)(仰臥位で下肢を20~30度挙上)が考慮されますが、これも輸液蘇生に優先する介入ではありません。
混同注意! ④ 検査のための血液サンプルを採取する:血液検査(血算、凝固能、電解質など)は診断や状態把握に重要ですが、緊急時の最優先事項ではありません。多くの場合、静脈路確保の際に採血を同時に行うことができます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックの種類(低容量性、心原性、分布異常性、閉塞性)によって、一次治療が異なります。例えば、心原性ショックでは過剰な輸液は肺水腫を悪化させるため禁忌です。常に「ショックの原因は何か?」を考えて介入を選択することが臨床推論の基本です。
概念のまとめ
・低容量性ショック:循環血液量の絶対的不足が原因。
・第一選択治療:
輸液蘇生 (Fluid resuscitation)。
・静脈路確保:
大口径 (Large-bore, 14G-18G)、可能なら2本。
・ショック体位:トレンデレンブルグ体位は非推奨。下肢挙上が基本。
一目で比較!ショック時の体位
| 体位名 | 方法 | 目的・注意点 |
|---|
ショック体位 (Shock position) | 仰臥位、下肢を20-30度挙上 | 下肢の血液を中枢に還流させ、心拍出量を増加させる。現在推奨される基本体位。 |
トレンデレンブルグ体位 (Trendelenburg position) | 頭部を低く、下肢を高くした傾斜位 | 呼吸障害、頭蓋内圧亢進のリスクあり。低容量性ショックでは推奨されない。 |
ファウラー位 (Fowler's position) | 上半身を45度以上挙上 | 呼吸困難時の体位。心原性ショックや肺水腫で考慮。低容量性ショックでは不適。 |
解剖生理と薬理のポイント
・ショック時の代償機序:血圧低下→
圧受容体 (Baroreceptor)刺激→交感神経興奮→心拍数増加・末梢血管収縮(皮膚は冷たく蒼白になる)。
・尿量減少のメカニズム:
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS)の活性化と、
抗利尿ホルモン (ADH)の分泌増加により、水分とナトリウムの再吸収が促進される。
・昇圧薬の作用:血管収縮(α1作用)により血圧を上げるが、臓器血流を犠牲にする可能性がある。容量補充が前提。
暗記のコツとゴロ合わせ
ショック対応の優先順位「あ・か・さ・た・な」
あ:気道確保 (Airway)
か:呼吸管理 (Breathing) &
かんりょう補充 (Circulation & Volume)
さ:静脈路確保 (Secure IV access)
た:輸液開始 (Transfusion/Fluid)
な:原因検索・二次治療 (Next steps: drugs, labs, etc.)
低容量性ショックでは、「か(容量)」と「さ・た(静脈路と輸液)」が最優先!
国試頻出ポイント
「術後◯時間」「外傷後」などの設定で低容量性ショックが登場し、「最初に行う看護」「最優先の処置」を問うパターンが非常に多いです。常に「
原因治療が最優先」という原則を思い出しましょう。輸液蘇生が正解のカギです。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ低容量性ショックでも、選択肢に「酸素投与」が入ることがあります。気道・呼吸の確保(ABCのAとB)は常に最優先ですが、本設問のように明らかに循環不全が主問題で、気道開通・自発呼吸がある場合は、「循環血液量の補充」が次の最優先となります。状況に応じた臨床判断力を試す問題です。