看護学のコア解説
この問題は、
ショック (Shock)状態にある術後患者のアセスメントにおいて、
最も緊急性が高く、即時の介入を必要とする指標を判断する能力を問うています。ショックとは、組織への酸素供給が需要を満たせない状態であり、放置すれば多臓器不全に至る生命の危機です。
重要概念の分析 (Key Concept)
術後患者に出現した「落ち着きのなさ (Restlessness)」「尿量減少 (Decreased urine output)」「冷たく湿った皮膚 (Cool, clammy skin)」は、
循環血液量減少性ショック (Hypovolemic shock)の典型的な兆候です。これは、出血や体液喪失により循環血液量が減少し、
心拍出量 (Cardiac output)と
平均動脈圧 (Mean arterial pressure)が低下した状態です。身体は生命維持のため、
代償機構 (Compensatory mechanisms)(カテコラミン放出による頻脈、末梢血管収縮)を発動しますが、これが限界を超えると代償不全に陥り、急速に悪化します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解である①「血圧 80/50 mmHg、脈拍120回/分で微弱」は、
ここがポイント! ショックが代償期から非代償期(進行期)に移行したことを示す
決定的な所見です。
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収縮期血圧80mmHgは、組織灌流を維持するのに不十分なレベルです(通常、
収縮期血圧90mmHg以下はショックの目安)。
- 「微弱な脈 (Weak, thready pulse)」は、心拍出量の著しい減少を反映しています。
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脈拍120回/分の頻脈は、心拍出量(心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数)を維持しようとする代償反応ですが、それでも血圧が低下していることは、代償機構が破綻しつつあることを意味します。
この状態は、脳、心臓、腎臓などの重要臓器への血流が途絶えかねないため、
直ちに輸液や輸血、昇圧剤投与などの循環動態改善策が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢も重要ですが、優先度が異なります。
- ②「呼吸数28回/分、浅い呼吸」:これは
呼吸性代償 (Respiratory compensation)(代謝性アシドーシスへの反応)や不安の現れであり、ショックの初期や代償期にも見られます。確かに観察すべき所見ですが、血圧低下という直接的な循環不全の証拠ほど緊急性は高くありません。
- ③「体温37.3°C、軽度の発汗」:軽度の発熱と発汗は、感染や疼痛、不安など様々な原因で起こり、この単独所見ではショックの特異的・緊急の指標とは言えません。
- ④「SpO2 92%、軽度の見当識障害」:低酸素血症は確かに問題ですが、
SpO2 92%は酸素投与などの対応で比較的速やかに改善可能な範囲です。また、「軽度の見当識障害」は、①の血圧低下による脳灌流圧の低下が原因である可能性が高く、根本原因である循環不全を是正する方が優先されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックの管理では「
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)」が基本です。気道(A)と呼吸(B)に問題がなければ、次に優先されるのは循環(C)の評価です。血圧と脈拍は、循環状態を評価する最も基本的かつ重要なバイタルサインです。看護師は、バイタルサインの変化を単独で見るのではなく、「血圧低下+頻脈+末梢所見(冷感、尿量減少)」という
パターンとして捉え、病態を総合的に判断する能力が求められます。
概念のまとめ
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ショックの3主徴:低血圧、頻脈、末梢循環不全(冷感、チアノーゼ、尿量減少)。
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代償期 vs 非代償期:代償期は血圧が保たれ頻脈のみ。非代償期は血圧も低下し、生命の危機。
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術後ショックの主要原因:出血(最も多い)、体液喪失、敗血症、心筋梗塞など。
一目で比較!ショックの評価における所見の優先度
| 所見 | 緊急性 | 理由 |
|---|
| 血圧著明低下+頻脈 | 最優先 | 直接的な循環不全の証拠。臓器虚血が即座に進行する。 |
| 呼吸促迫・SpO2低下 | 高 | 気道・呼吸の問題は迅速な対応が必要だが、本例では循環不全が一次因の可能性大。 |
| 意識レベルの変化 | 高 | 脳灌流低下の結果。原因(本例では低血圧)への介入が優先。 |
| 軽度発熱・発汗 | 中〜低 | ショックの非特異的所見。他の緊急所見と合わせて評価する。 |
解剖生理と薬理のポイント
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平均動脈圧 (MAP)の計算式:MAP = 拡張期血圧 + 1/3(収縮期血圧 - 拡張期血圧)。
通常65mmHg以上が臓器灌流に必要とされます。本例(80/50)のMAPは約60mmHgで、危険水域です。
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ショック時の身体反応:血圧低下→圧受容体刺激→交感神経興奮→カテコラミン放出→心拍数増加・心収縮力増大・末梢血管収縮(皮膚・腎臓など)。これが「冷たく湿った皮膚」「尿量減少」のメカニズムです。
暗記のコツとゴロ合わせ
- ショックの緊急サイン:「
血圧が下がって、脈が速く、手足が冷たい」は即アラート!
- 優先順位の考え方:「
止まれば即死(循環)、止まらなければ数分(呼吸)、それ以外は数時間〜数日」。循環(C)の異常は最も時間的猶予が少ないのです。
国試頻出ポイント
ショック患者の「最初に行う看護」「優先度の高い観察項目」「与薬(輸液・昇圧剤)の目的」が頻出です。本例のように、複数の異常所見から
最も生命に直結する問題を選択させるパターンは定番です。
国試出題パターンの変化に注意!
同じショックでも、
原因別(出血性、敗血症性、心原性など)で初期対応や観察ポイントが異なります。例えば、心原性ショックでは過剰な輸液は禁忌です。問題文の背景(術後、熱傷後、心筋梗塞後など)から原因を推測し、適切なケアを選択できる力が試されます。