核心解説
この問題は、
老人保健法 (Health and Medical Services Law for the Aged) の制定目的を問うています。同法は1982年(昭和57年)に制定され、
老人医療費の無料化(1973年導入)が招いた医療費の急増と財政負担の不公平を是正することを主な目的としました。2008年には後期高齢者医療制度の創設に伴い廃止されていますが、国試では法制度の変遷と目的を問う頻出テーマです。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 老人保健法は、老人医療費無料化(いわゆる「老人医療費無料化制度」)を改め、
医療費の一部自己負担を導入することで費用負担の公平化を図りました。同時に、40歳以上の住民を対象にした
保健事業(健康診査・健康教育・健康相談など)を推進し、疾病予防と健康増進を目指しました。正解の④はこの核心を正確に捉えています。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①は
介護保険法 (Long-Term Care Insurance Act) で規定される介護老人保健施設(老健)の設置基準と混同しやすい選択肢です。老人保健法は老健の制度基盤を与えましたが、設置基準そのものを定めたのは介護保険法です。
②は
後期高齢者医療制度 (Medical Care System for the Elderly in the Latter Stage of Life) と混同しがちです。同制度は2008年に老人保健法に代わって創設されましたが、老人保健法自体は独立した医療保険制度を創設したわけではありません。
③は
年金制度 (Public Pension System) の目的です。老人保健法は年金給付を扱いません。
⑤は
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法) の目的です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
老人保健法の制定背景として、
1973年の「福祉元年」での老人医療費無料化により、医療費が高騰し、医療機関への過剰受診(社会的入院)が問題化しました。この反省から、1982年の老人保健法では
予防重視・費用負担の適正化が打ち出されました。また、同法は老人保健事業として
基本健康診査(現在の特定健診に発展)や
機能訓練を実施した点も重要です。
概念整理:
老人保健法(1982年制定・2008年廃止)の目的は、
①老人医療費の適正化(無料化の廃止と一部負担導入) ②40歳以上の住民への保健事業の推進(疾病予防・健康増進)。医療保険制度ではなく、医療費と保健事業の両面から高齢者の健康を支える総合法律でした。
一目で比較!:
| 法律 | 制定年 | 主な目的 |
|---|
| 老人保健法 | 1982年 | 老人医療費無料化の見直し + 保健事業推進 |
| 介護保険法 | 1997年(2000年施行) | 要介護高齢者への介護サービス提供(社会保険方式) |
| 後期高齢者医療制度 | 2008年 | 75歳以上を対象とした独立した医療保険制度 |
看護過程ポイント: 看護師は、高齢者への
健康診査や
保健指導の場面で、老人保健法の精神(予防と自己負担の公平性)を理解し、患者の健康管理を支援する。高齢者の医療費負担に関する相談にも対応できるよう、法制度の変遷を把握しておく。
暗記のコツ: 「老人保健法 = 老人の健康(保健)と医療費のバランスを取るための法律」と覚えましょう。「老人医療費無料化(1973年)→ 医療費が高騰 → 老人保健法(1982年)で一部負担導入 + 予防重視」という流れを「1973年から1982年への9年間の反省」と結びつけると記憶に残りやすいです。
国試頻出ポイント: 老人保健法は廃止されましたが、
「老人医療費無料化の弊害」「医療費適正化」「保健事業の推進」「後期高齢者医療制度への移行」という文脈で、現在の医療保険制度や介護保険との比較問題として頻出します。法の目的と、なぜ廃止されたのか(後期高齢者医療制度に移行した理由)を押さえておきましょう。
出題パターン注意!: 「老人保健法の目的はどれか」という単純知識問題に加え、「老人医療費無料化の問題点を述べた文として正しいのはどれか」や「後期高齢者医療制度との違い」を問う比較問題が出題されやすいです。事例問題では「高齢者の医療費負担が増えた理由」を問う形で出ることもあります。