臨床実践ガイド
臨床シナリオ
「大地震発生から2日後、被災地内の病院で治療を受けていた呼吸不全の重症患者が、さらなる高度治療のためSCU経由で遠方の大学病院へ搬送されることになりました。あなたはSCUで待機している看護師です。救急車で到着した患者は、気管挿管され人工呼吸器管理中です。モニター上、SpO2 92%、脈拍110回/分、血圧90/50mmHgと不安定な状態です。まもなく自衛隊の大型ヘリコプターが到着しますが、天候悪化により予定より1時間早く離陸しなければならないと連絡が入りました。この状況で、あなたの看護判断と優先すべき行動は何ですか?」
看護介入と判断戦略
最重要! SCUでの看護師の役割は、短時間で刻々と変化する状況下において、傷病者の
安全な搬送を完遂するための「つなぎ」の医療を提供することです。
1.
観察: バイタルサイン(特にSpO2、血圧、脈拍)、呼吸器の設定と作動状況、点滴ライン・気管チューブの固定、瞳孔所見などを瞬時に再確認します。
2.
アセスメント: 「低血圧と頻脈は、ショック状態の悪化か、あるいは鎮静・鎮痛薬の影響か?」「悪天候と早期離陸による振動や気圧の変化に、この患者の状態は耐えられるか?」と短時間で評価します。
3.
報告と調整: 医師やSCUリーダー(DMAT医師など)に、患者の不安定な状況と早期離陸の情報を
SBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)で簡潔に報告します。「酸素ボンベ残量が飛行時間ギリギリです。追加のボンベと、気圧変化に対応できる輸液ポンプの準備を推奨します」など、具体的な提案を行います。
4.
介入: 医師の指示のもと、輸液の増量や昇圧薬の投与速度調整を準備します。同時に、搬送用ストレッチャーへの安全な移動、毛布による保温、振動対策(固定の強化)をチームで迅速に行います。
5.
評価: ヘリコプターに患者を引き継ぐ直前までバイタルサインをモニタリングし、搬送チーム(航空自衛隊の救護班など)への確実な申し送りを行います。
看護プロトコル
| 項目 | SCUにおけるポイント |
|---|
| 観察項目 | ABCDEアプローチ(気道、呼吸、循環、意識、体温)の迅速評価、外傷の再確認、使用中薬剤・ライン類の確認 |
| 報告基準 (SBAR) | 状況(離陸時間変更)、背景(患者の不安定な状態)、評価(悪化リスク)、提案(必要物品・人員)を簡潔に |
| 記録 | SCU入退室時のバイタルサイン、実施した処置、使用薬剤、搬送先と搬送手段をSCU記録用紙に簡潔に記載 |
| 家族への説明 | 今後の搬送計画と目的を簡潔に説明し、不安の軽減に努める。連絡先を確認し、搬送先情報を提供する |
先輩看護師の一言
「災害時は、いつも通りの医療ができない中で、看護師の臨機応変な判断力とチームワークが何よりも求められます。SCUはまさにその最前線。患者さんの命を遠くの病院へつなぐための、最後の砦だと思ってください。国試の勉強では、『SCUは中継基地』と丸暗記するだけでなく、『そこで看護師は何を考え、どう動くのか』というイメージを持つことが、試験当日の事例問題でも、そして将来の災害現場でも、あなたの大きな力になります!」