核心解説
この問題は、
災害看護 (Disaster Nursing) における
災害対応サイクル の初期対応と、
災害対策本部 (Incident Command System) の役割を問うています。災害医療の原則である
CSCATTT (Command & Control, Safety, Communication, Assessment, Triage, Treatment, Transport) のうち、最初の「指揮と統制 (Command & Control)」を確立するために、正確な状況認識が不可欠であることを理解する必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 災害対策本部が最初に行うべきことは、
被災状況の情報収集と院内の被害状況の把握 です。これは、災害対応の原則である
アセスメント (Assessment) に該当し、その後の人員配置、物資の確保、患者受け入れ体制の決定など、すべての意思決定の基盤となります。正確な情報なくして、適切な指揮命令や効果的な活動は行えません。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! 災害時には複数の対応が同時並行で行われますが、「最初に」行うべきことは状況把握です。
①
外来患者の全員帰宅指示:情報収集の結果、安全が確認されるまでは、むしろ帰宅を急がせずに安全な場所で待機してもらう判断が必要になる場合もあります。最初に行う判断ではありません。
③
手術室の即時閉鎖:手術中の患者の安全確保は重要ですが、病院全体の被害状況やライフライン(電気・水・医療ガス)の状況を把握した上で、継続か中断か、あるいは安全な場所への移動かを判断します。
④
入院患者の全員避難開始:
危険! 病院の被害状況を確認せずに全患者を避難させることは、患者の状態悪化(例:人工呼吸器使用中の患者)や転倒などの二次災害を引き起こすリスクがあります。垂直避難や水平避難も含め、状況に応じた判断が必要です。
⑤
テレビやラジオによる情報発信:情報発信は、指揮命令系統が確立し、ある程度状況が整理された後に行います。また、通常は広報担当者が指定されて行います。
概念整理:
| 概念 | 説明 |
|---|
| 災害対策本部 | 病院の災害対応を指揮・統制する組織。本部長(通常は病院長)の下、状況評価、資源管理、情報発信などを統括する。 |
| 情報収集(アセスメント) | 災害対応の第一歩。地震の規模、院内のライフライン(電気、水道、ガス、通信)状況、各部署の被害状況、負傷者の有無と数などを迅速に把握する。 |
| CSCATTT | 災害医療の基本原則。Command & Control(指揮・統制)、Safety(安全)、Communication(情報伝達)、Assessment(評価)、Triage(トリアージ)、Treatment(治療)、Transport(搬送)の頭文字。 |
一目で比較!:
| タイミング | 行動 | 目的 |
|---|
| 発災直後(0〜15分) | 身の安全確保、第一報、被害状況の迅速な把握 | 指揮命令系統の確立、初期対応方針の決定 |
| 初動対応期(15分〜2時間) | トリアージエリアの設置、ライフラインの確認と復旧、応援要請 | 多数傷病者の受け入れ準備、医療機能の維持 |
| 本格的対応期(2時間〜) | 患者受け入れ・治療、外部支援チームとの連携、情報発信 | 地域の医療ニーズへの対応、社会的役割の遂行 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 看護師は、自部署の被害状況(患者・スタッフの安全、設備の破損、医療物資の状況)を迅速に評価し、災害対策本部へ報告する役割を担います。この情報が、病院全体の状況把握の基礎となります。
計画: 災害対策本部の決定に基づき、各部署で具体的な行動計画を立案します(トリアージの準備、避難経路の確保、応急対応など)。
実施: 患者の安全を最優先に、トリアージや応急処置、避難誘導などをチームで協力して行います。
暗記のコツ:
「
サイガイ
シュウライ!
ジョウホウ
アツメテ
ホウシン
ケッテイ」と覚えましょう。
災害 (Disaster) 発生 →
指揮命令系統を確立するため、まず
情報 (Information) を
集めて
方針 (Policy) を
決定する。この順序が重要です。
国試頻出ポイント:
災害看護では、CSCATTTの各要素、トリアージ(特にSTART式トリアージ)、災害サイクル(静穏期・準備期・急性期・亜急性期・復旧復興期)に関する問題が頻出です。「最初に行うこと」「最優先すること」を問う問題で、今回のように「アセスメント(情報収集)」が正答となるパターンをしっかり押さえておきましょう。
出題パターン注意!
状況設定問題では、具体的な地震や火災の状況が提示され、「このときの災害対策本部の対応で正しいのはどれか」と問われます。看護師個人の動きだけでなく、
組織としての意思決定と優先順位を問う視点が重要です。