核心解説
この問題は、災害医療における
トリアージ (Triage)、特に
START法 に基づく
黒タグ (Black Tag) の判定基準を問うています。トリアージとは、限られた医療資源を最大限に活用するため、傷病者の治療優先順位を決定するプロセスです。黒タグは「死亡 (Dead)」または「救命困難 (Expectant)」に分類され、生命兆候がなく、明らかに救命不可能な状態を指します。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
災害時トリアージの核心は、
生理学的評価に基づき、呼吸・循環・意識の順で迅速に評価し、治療優先度を4つの色(赤・黄・緑・黒)に分類することです。黒タグの判定は、
最重要! 「生命反応の不可逆的な停止」が客観的に確認できるかが唯一の基準です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は2番です。
最重要! 心肺停止状態 (Cardiopulmonary Arrest) に加え、
死斑 (Livor Mortis) のような死後変化が確認されれば、それは不可逆的な死を意味し、蘇生の対象とはなりません。したがって黒タグが最も適切です。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
①、③、④、⑤はいずれも重篤な状態ですが、適切な治療により救命できる可能性があります。これらは治療優先度が最も高い
赤タグ (Red Tag) に分類されるべき状態です。生理学的徴候がまだ存在する場合は、決して黒タグと判定してはいけません。
混同注意! 特に、心肺停止でも死斑や死後硬直がなければ、災害現場では時間的制約があるものの、状況が許せば赤タグとして蘇生の対象と判断される場合があります。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージタグの分類を整理します。
| タグ | 分類 | 状態の特徴 | 具体例 |
|---|
| 赤 (I) | 最優先治療群 | 生命危機状態だが、即時治療で救命可能 | ショック、重症呼吸不全、意識障害 (JCS 100以上) |
| 黄 (II) | 待機的治療群 | 治療の遅延が可能な中等症 | 単純骨折、軽度熱傷 |
| 緑 (III) | 軽傷群 | 歩行可能で、ほとんど医療を必要としない | 擦過傷、打撲 |
| 黒 (0) | 死亡・救命困難群 | 生命兆候がなく、明らかに救命不可能 | 死斑、死後硬直、頭部切断 |
概念整理
トリアージの基本原則は「最大多数の傷病者に最善の医療を提供すること」です。黒タグは、医療資源を投入しても無益な「不可逆的死」の状態を客観的に判定し、他の救命可能な傷病者へ資源を振り向けるための重要な判断です。この判断は、医師のみならず看護師もトリアージナースとして実施できるよう、正確な知識が求められます。
一目で比較!
赤タグ vs 黒タグの判断分岐点
心肺停止 (CPA) の傷病者を発見した場合、
最重要! 以下の点を即座に評価します。
- 赤タグへ移行する基準: 明らかな死後変化がないCPA。時間的余裕と人的資源があれば、気道確保などの蘇生を試みる。
- 黒タグへ移行する基準: 死斑・死後硬直の確認、頭部切断、体幹部離断など、明らかに不可逆的な死の徴候があるCPA。
看護過程ポイント
アセスメント: START法の流れ(歩行確認 → 呼吸 → 循環 → 意識)に沿って迅速に評価します。
看護診断: 黒タグ該当者は看護介入の対象外ですが、尊厳ある死への配慮が求められます。
計画・実施: 黒タグと判定した場合でも、遺体の安置場所への移動、所持品の管理、記録などを冷静に行います。
暗記のコツ
「黒タグは“生”の反対、つまり“死”が確定した状態」と覚えましょう。キーワードは
死斑・
死後硬直・
体幹部離断です。血圧値や意識レベルの数字で判断しないことが最大のポイントです。
国試頻出ポイント
災害看護の分野では、毎年のようにトリアージ区分の具体的事例が問われます。特に、
赤タグと黒タグの判別、
START法の評価順序と基準(呼吸数10未満or30以上、ショックの指標となる末梢循環不全の確認方法など)は頻出です。
出題パターン注意!
単純なタグの色と定義の暗記だけでなく、「バイタルサインがこの数値なら何タグか」といった状況設定問題が多く出題されます。数字の基準をタグの色とセットで正確に暗記する必要があります。例えば、
呼吸数 30回/分以上 は赤タグの基準です。