核心解説
この問題は、
脳卒中後遺症(片麻痺)患者に対する
T字杖 (T-cane) を用いた
歩行介助 (Ambulation Assistance) の基本原理を問うています。
核心概念の分析 (Key Concept): 片麻痺患者の杖歩行では、
患側(麻痺側)の体重支持能力が低下しているため、杖によって支持基底面を補い、重心移動を安定させることが目的です。そのため、
最重要! 基本パターンは、
「杖 → 患側下肢 → 健側下肢」の順で動く
3点歩行 (Three-point gait) です。
正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢4の「杖を出し、次に右下肢を出し、最後に左下肢を出す」は、左片麻痺である患者にとって、杖を出した後に患側である左下肢を出す、という手順を示しています。問題文は「左片麻痺」と「右下肢」の表記に注意が必要です。左片麻痺では、左下肢が患側、右下肢が健側となります。正しい歩行パターンは「杖 → 左下肢(患側)→ 右下肢(健側)」です。選択肢4をよく見ると「杖→右下肢→左下肢」と書かれていますが、これは左片麻痺の患者にとって「杖→左下肢(患側)→右下肢(健側)」の誤りです。正しい手順は選択肢2の「杖と右下肢を同時に出し、次に左下肢を出す」です。これは2点歩行として安定した歩行が可能になります。
誤答の分析 (Distractor Analysis): 各選択肢の歩行パターンが、患者の支持基底面や重心移動にどのような影響を与えるかを分析します。
混同注意! 杖の支持と下肢の振り出しの順序を誤ると、患側への過剰な荷重や、支持性不足による転倒リスクが高まります。
関連概念の整理 (Related Concepts):
T字杖、
四点杖 (Quad cane)、
歩行器 (Walker) の適応の違い、平地歩行と階段昇降(「健側から上がり、患側から下りる」)の違いも併せて理解を深めましょう。
概念整理:
| 歩行補助具 | 適応と特徴 |
|---|
| T字杖 | 片麻痺など、比較的軽度の支持性低下に用いる。患側の反対側(健側)の手に持つ。 |
| 四点杖 | 支持性がより高く、多点で接地するため安定性が高い。重度の片麻痺やバランス障害に適応。 |
| 歩行器 | 両上肢で体重を支持し、高い安定性を確保できる。免荷歩行や術後早期の歩行練習に用いる。 |
一目で比較!:
| 歩行パターン | 順序(患側を左とする) | 特徴・適応 |
|---|
| 3点歩行 | 杖 → 患側(左)→ 健側(右) | 患側に完全に体重をかけられない場合(免荷)。安定性が高い。 |
| 2点歩行 | 杖と患側(左)を同時に出す → 健側(右) | 患側にある程度体重をかけられる場合。よりスムーズな歩行が可能。 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 下肢の筋力(MMT)、関節可動域(ROM)、バランス能力、高次脳機能障害の有無を評価します。
看護介入: 平地歩行では
最重要!「杖→患側→健側」のリズムで声かけを行い、介助者は患者の患側または後方に立ち、常に転倒に備えます。階段では「健側から上がり、患側から下りる」が原則です。
暗記のコツ:
「
杖から出発、患側が続く、最後に健側が追い越す」とリズムで覚えましょう。階段は「
良い足(健側)から上へ、悪い足(患側)から下へ」が定番の語呂合わせです。
国試頻出ポイント:
歩行介助は、状況設定問題でイラストや事例を用いて出題されることが非常に多いテーマです。疾患別(片麻痺、大腿骨頸部骨折後など)の正しい介助法と、その
根拠(なぜその順番なのか)をセットで理解することが、応用問題を解く鍵となります。
出題パターン注意!:
「左片麻痺のある患者が、T字杖を使って階段を昇降する。正しい方法はどれか」といった形で、平地歩行と階段昇降を混同させる引っかけ問題が頻出します。