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問題

在宅で療養中の要介護高齢者が、車椅子からベッドへの移乗時に介助者に体重を預けることができず、移乗に時間がかかっている。この状況で最も適切な看護援助はどれか?

解説
車椅子からベッドへの安全な移乗では、まず車椅子のブレーキを確実にかけ、フットレストを外すことが基本である。これにより車椅子が安定し、患者の足が床に着くことで体重支持が可能となり、立ち上がりや移乗がスムーズになる。選択肢1は腋窩への負担が大きく、患者の上肢を傷める可能性がある。選択肢3は膝を伸展すると立ち上がりが困難になる。選択肢4は不安定で転倒リスクが高い。選択肢5は回旋動作を利用した方が移乗しやすい場合が多い。
同じテーマの次の問題在宅で療養中のパーキンソン病患者が、歩行時に小刻み歩行とすくみ足がみられ、転倒を繰り返している。この患者に対する歩行援助で適切なのはどれか?

詳細解説

核心解説 この問題は、在宅における移乗介助 (Transfer Assistance) の基本的かつ最も重要な安全原則を問うています。ボディメカニクス (Body Mechanics) の原則に基づき、介助者が安全に介助でき、かつ患者の残存機能を最大限に活かすための環境調整がポイントです。 1. 核心概念の分析 (Key Concept) 移乗動作を「準備」「起立」「方向転換」「着座」の一連の流れとして捉えます。本症例の問題点は「介助者に体重を預けられない」ことではなく、移乗に時間がかかっているという非効率性と、それに伴う転倒などの二次的リスクです。安全かつ円滑な移乗のための「環境準備」が最優先されます。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! 移乗の第一歩は、車椅子のブレーキをかけ、フットレスト(足置き)を外す/上げることです。これにより、車椅子が動かなくなり安定した土台となる上、患者が両足底を床にしっかりつけて起立のための支持基底面を確保できます。これこそが安全な移乗の絶対条件です。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis) 混同注意! 各選択肢は、臨床現場でよく見られる非効率的・危険な介助方法です。 選択肢1: 混同注意! 腋窩(わきのした)に手を入れて引き上げる行為は、患者の腕神経叢(Brachial Plexus)や肩関節を損傷するリスクが非常に高く、絶対に行ってはいけません。患者の体重を一部でも介助者が肩や腰だけで支えることになり、介助者の腰痛の原因にもなります。 選択肢2: 混同注意! 起立動作の基本は、まず体幹を前傾し、膝を屈曲位にして重心を前方に移動させ、大殿筋や大腿四頭筋といった抗重力筋を使うことです。膝を伸展したままでは、これらの大きな筋肉が使えず、起立が極めて困難になります。 選択肢3: 混同注意! 移乗では、必ず両足底を床につけ、体重を下肢で支持することが必要です。足が浮いた状態は、患者にとって不安定で恐怖心を与え、介助者が全重量を支えることになるため、双方にとって危険です。 選択肢4: 混同注意! 方向転換の際には、小さく足を踏みかえながら行うのが基本です。体を回旋させずに直線的に移動させることは、車椅子とベッドの位置関係によっては物理的に不可能であり、かえって介助者の無理な姿勢を強いることになります。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts) 移乗動作は、廃用症候群 (Disuse Syndrome) の予防のためにも、患者の自立度に応じた「できること」を見極め、適切に支援することが重要です。今回の「介助者に体重を預けることができず」という情報から、現状の能力評価(立位保持能力、下肢筋力、理解力)と、福祉用具(スライディングボードなど)の活用も視野に入れる看護過程が展開できます。
概念整理 - ボディメカニクスの原則: 支持基底面を広く、重心を低く、てこの原理を応用し、水平移動・回旋移動を活用し、大きな筋群を使う。 - 移乗の基本手順: ① 環境準備(ブレーキ、フットレスト)→ ② 声かけと目標の共有 → ③ 起立(前傾姿勢・膝屈曲)→ ④ 方向転換(足踏み)→ ⑤ 着座 → ⑥ 安全確認・安楽確認。
一目で比較!
正しい介助誤った介助
患者の腰部または肩甲骨部を支持患者の腋窩を抱え込む
起立時は膝を屈曲位にして前傾膝を伸展させたまま引き上げる
両足底を床にしっかりつける足を床から浮かせた状態で動かす
小さく足踏みして方向転換無理に体を捻ったり直線移動にこだわる

看護過程ポイント - アセスメント (Assessment): 患者の移乗能力(FIM動作項目など)、残存筋力、関節可動域、認知機能、車椅子とベッドの高さ・位置関係、在宅環境を評価する。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 身体可動性障害(Impaired Physical Mobility)、移乗能力障害(Impaired Transfer Ability)、転倒リスク(Risk for Falls)など。 - 計画 (Planning): 患者の能力に応じた具体的な介助量(見守り、一部介助、全介助)と目標を設定する。福祉用具の導入を検討する。 - 実施 (Implementation): ボディメカニクスに則り、声かけをしながら安全最優先で行う。患者のペースに合わせ、疲労に配慮する。 - 評価 (Evaluation): 設定した目標に到達できたか、患者・介助者双方に負担や危険な動作はなかったかを振り返り、計画を見直す。
暗記のコツ 移乗の基本は「ブ・フ・ク・マ」!「レーキかけて、ットレスト外し、つを履いて足底をつけ、たいで支える」と覚えましょう。
国試頻出ポイント ボディメカニクスと移乗介助は、基礎看護学の領域で必出です。状況設定問題では「どの動作が患者・介助者の負担を増やすか」「安全な移乗のための最初の行動は何か」を問われます。禁忌肢である「腋窩への手を入れる」「下肢を浮かせる」は即座に除外できるようにしましょう。
出題パターン注意! 在宅看護論や老年看護学の事例問題では、さらに「福祉用具の選定(リフト、スライディングボードの適応)」「住宅改修(手すりの位置、段差解消)」「介護者の腰痛予防」といった発展的な内容と組み合わせて出題されます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario) 「85歳女性、要介護3。自宅で夫が主介護者として車椅子移乗を行っている。娘さんから『最近、母が移乗時に介助者の体にしがみつくように体重を預けてしまい、父の腰が悲鳴を上げている。車椅子の前で立ちすくんでしまい、なかなか次の動作に移れない』と訪問看護師に相談があった。移乗場面を観察すると、車椅子のフットレストを外さないまま夫が患者を引き上げようとしており、患者は恐怖心から体を強張らせている様子が観察された。」 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 観察 (Observation): まずは現在の移乗方法を一連の流れで観察します。患者の表情(恐怖や不安がないか)、介助者の姿勢、動作環境(家具の配置、照明、床の材質)も確認します。 アセスメント (Assessment): 患者が立ちすくむ原因は、身体機能の低下に加え、不安定な車椅子や足底が床につかない状況による「恐怖心」と「不適切な介助方法」であると判断します。 介入 (Intervention): 最重要! まずは介助者である夫に、「安全第一」を伝え、「車椅子のブレーキをかけ、フットレストを外して、患者さんの足を床にしっかりつけることから始めましょう」と具体的な根拠(安定性、起立しやすさ、恐怖心の軽減)を説明しながら指導します。起立時は「お辞儀をするように前かがみになり、膝を曲げて立ち上がりましょう」と声をかけ、患者の腰部を支えながら一緒に動作を行います。 評価 (Evaluation): 正しい環境設定と声かけにより、患者が落ち着いて起立・移乗できるか、介助者である夫の負担が軽減したかを確認します。継続的な指導と、必要であればスライディングボードや手すりの導入など環境調整も提案します。
看護プロトコル - 観察項目: 患者の表情、体の緊張度、呼吸状態、血圧変動(起立性低血圧の有無)、動作の円滑さ。 - 報告基準 (SBAR): Situation(移乗動作が安全にできない)→ Background(廃用が進み、介護負担が増大している)→ Assessment(不適切な環境と介助法による二次障害のリスクが高い)→ Recommendation(訪問リハビリテーションによる動作指導と福祉用具導入の提案)。 - 家族指導: 「介護者の腰を守ることも、患者さんを守ることにつながる」と伝え、無理な姿勢での介助をしないよう、具体的に指導する。
先輩看護師の一言 「移乗は、看護師と患者さんの共同作業であり、まさに『対話』です。『今からベッドに移りますね。まず足を下ろしますよ』と一言添えるだけで、患者さんの緊張がほぐれ、驚くほどスムーズに動けることがあります。『さあ行くよ!』と力任せに動かすのではなく、患者さんが自ら動きたくなるような声かけと、動ける環境を整えるのが、プロの看護です。この国試問題は、その原点を教えてくれているんですよ。」

重要概念

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