核心解説
この問題は、
新生児の分娩麻痺 (Neonatal Birth Palsy) の中で最も発生頻度が高いものを問うています。特に、本症例のように
肩甲難産 (Shoulder Dystocia) と巨大児(4000g)の出生歴がある場合、分娩時の牽引や過度な伸展によって神経損傷が生じやすくなります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
新生児の分娩麻痺のうち、最も頻度が高いのは
腕神経叢麻痺 (Brachial Plexus Palsy) です。特に、上位型である
Erb-Duchenne麻痺 (C5-C6) が多く、肩甲難産や吸引分娩・鉗子分娩の際に、頸部と肩の間の腕神経叢が伸展・牽引されることで発生します。本症例では、右上肢の運動が認められないことからも、腕神経叢の損傷が強く示唆されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 大腿神経麻痺:骨盤位分娩などで稀に生じることがありますが、頻度は高くありません。
③ 横隔神経麻痺:腕神経叢麻痺に合併することがあります(特にC3-C5レベルの横隔神経損傷)が、単独で最も頻度が高いわけではありません。
④ 反回神経麻痺:声帯麻痺の原因となりますが、分娩麻痺として最も頻度が高いものではありません。
⑤ 顔面神経麻痺:鉗子分娩で生じることがありますが、腕神経叢麻痺に比べ頻度は低いです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
腕神経叢麻痺には、
混同注意! 上位型(Erb-Duchenne麻痺:C5-C6、肩と上腕の麻痺)と下位型(Klumpke麻痺:C8-Th1、手と手指の麻痺)があります。本症例のように上肢全体の運動障害がある場合、腕神経叢の広範な損傷が考えられます。自然回復が多いですが、重度の場合は神経縫合や腱移行術などの外科的治療が必要となることもあります。
概念整理
-
腕神経叢麻痺 (Brachial Plexus Palsy): 分娩時に頸部と肩の過度な牽引で腕神経叢が伸展損傷。Erb-Duchenne麻痺(上位型、C5-C6)が最多。肩甲難産・巨大児・吸引分娩がリスク。
-
その他の分娩麻痺: 顔面神経麻痺(鉗子圧迫)、横隔神経麻痺(C3-C5損傷で呼吸障害)、反回神経麻痺(声帯麻痺)など。
一目で比較!
| 麻痺の種類 | 原因/頻度 | 主な症状 |
| 腕神経叢麻痺 (Erb型) | 肩甲難産 / 最多 | 上肢の挙上不能、Morro反射消失 |
| 顔面神経麻痺 | 鉗子圧迫 / やや多い | 口角の偏位、泣く時に左右非対称 |
| 横隔神経麻痺 | 腕神経叢麻痺合併 / 稀 | 呼吸困難、横隔膜挙上 |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 出生後早期に四肢の自発運動の有無、左右差、筋緊張を観察。特に肩甲難産や巨大児では注意深く観察する。Morro反射の左右差も評価。
-
看護診断: 身体的損傷に関連する末梢神経障害のリスク状態。または、運動機能障害によるセルフケア不足(長期的な視点)。
-
介入: 医師の指示に基づき、損傷肢の安静を保ちつつ、適切なポジショニング(過度な牽引を避ける)。保護者への説明と心理的支援(自然回復の見込みが多いことを伝える)。理学療法士との連携。
暗記のコツ
「腕神経叢麻痺(ブラキアル)」は「肩甲難産(肩が引っかかる)」とセットで覚えましょう。特に
Erb-Duchenne麻痺 は「C5-C6、肩と上腕」の麻痺で、
Klumpke麻痺 は「C8-Th1、手指の麻痺」です。「Erbは肩(Shoulder)、Klumpkeは手(Hand)」とイメージすると良いです。
国試頻出ポイント
- 新生児の分娩麻痺の中で最も頻度が高いもの(腕神経叢麻痺)を問う問題は頻出。
- リスク因子(肩甲難産、巨大児、吸引・鉗子分娩)と、症状(上肢の運動障害、Morro反射異常)も合わせて出題される。
- Erb-Duchenne麻痺とKlumpke麻痺の違い(損傷高位と症状の違い)も比較問題として出題される。
出題パターン注意!
本問のように「最も頻度が高い」ものを問う単純知識問題に加えて、「肩甲難産後、右上肢が動かない新生児への観察項目は?」といった状況設定問題へ発展することがあります。その場合、
最重要! 呼吸状態(横隔神経麻痺合併の有無)や、疼痛の有無、安静の維持などが選択肢に含まれます。