核心解説
この問題は、
乳児 (Infant) を対象とした
聴覚スクリーニング検査 (Hearing Screening Test) の適切な方法を問うています。乳児期に難聴を早期発見し、早期療育につなげることは、言語発達や社会性の発達において極めて重要です。特に新生児聴覚スクリーニングは、母子保健法に基づき全国的に実施されています。選択肢の中で、乳児に対して非侵襲的かつ簡便に行える検査を選ぶことが鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は④番の
耳音響放射検査 (Otoacoustic Emissions, OAE) です。この検査は、
外有毛細胞 (Outer Hair Cells) の機能を評価するもので、蜗牛(内耳)に音刺激を与えた際に生じる微かな音響信号(耳音響放射)を外耳道に挿入した小さなプローブで捉えます。被験者の協力が不要で、寝ている乳児や新生児に対しても短時間(数分)で実施可能な、非侵襲的で簡便なスクリーニング検査です。日本では、多くの自治体で新生児聴覚スクリーニングとして導入されています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! その他の選択肢は、いずれも被験者の積極的な応答(ボタンを押す、聞こえたら手を挙げるなど)や、ある程度の年齢・理解力が必要な検査です。
①
語音聴力検査 (Speech Audiometry):単語や文章を聞き取る検査で、幼児でも実施可能な遊戯聴力検査に発展しますが、新生児や乳児初期には適用できません。
②
標準純音聴力検査 (Standard Pure Tone Audiometry):聴力検査の基本ですが、ヘッドホンを装着し、聞こえたらボタンを押すなどの反応が必要であり、乳児には実施困難です。
③
自記オージオメトリー (Self-Recording Audiometry, Bekesy Audiometry):被験者自身が音の聞こえに応じてスイッチを操作する検査で、やはり乳児には適しません。
⑤
ティンパノメトリー (Tympanometry):中耳の機能(鼓膜のコンプライアンス、耳小骨の状態)を評価する検査です。滲出性中耳炎などの診断に有用ですが、内耳の感音性難聴を直接評価するスクリーニング検査ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
乳児の聴覚スクリーニングでは、耳音響放射(OAE)に加えて、
自動聴性脳幹反応 (Automated Auditory Brainstem Response, A-ABR) も広く用いられます。A-ABRは、音刺激に対する脳幹の反応を評価し、より中枢側の聴覚経路の異常を捉えることができます。多くの自治体では、OAEとA-ABRを併用したり、一次スクリーニングでOAEを実施し、リファー(要再検査)となった場合にA-ABRを行うといった2段階方式が採用されています。難聴が疑われる場合の精密検査では、条件詮索反応聴力検査(COR)や遊戯聴力検査(PA)など、発達段階に応じた検査が用いられます。
概念整理: 乳児の聴覚スクリーニングは、
協力不要で非侵襲的な検査が必須。代表的なのは
耳音響放射検査 (OAE) と
自動聴性脳幹反応 (A-ABR)。OAEは内耳の外有毛細胞、A-ABRは脳幹までの聴覚経路の機能を評価する。
一目で比較!:
| 検査名 | 評価対象 | 乳児への適応 |
|---|
| 耳音響放射 (OAE) | 内耳(外有毛細胞) | 〇 スクリーニングに最適 |
| 自動聴性脳幹反応 (A-ABR) | 脳幹までの聴覚路 | 〇 スクリーニングに最適 |
| ティンパノメトリー | 中耳(鼓膜・耳小骨) | △ 中耳疾患の補助診断 |
| 標準純音聴力検査 | 全周波数の聴力レベル | ✕ 乳児には不可 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 出生歴(低出生体重児、仮死、高ビリルビン血症)、家族歴(遺伝性難聴)、頭頸部の奇形の有無、新生児期の聴覚スクリーニング結果を確認。
看護介入: 検査前に保護者に目的と方法を説明し、不安を軽減。検査中は乳児が啼泣しないよう、授乳や抱っこで鎮静を図る。
評価: スクリーニングでリファー(要再検査)となった場合、保護者が精密検査機関を確実に受診できるよう、情報提供と継続的なフォローアップが重要。
暗記のコツ: 「
耳(OAE)で音を出して、その反響をキャッチ」と覚えましょう。OAEは耳の奥(内耳)に小さな音を出して、その反響音(エコー)を聴いているイメージです。新生児に使える検査は「OAE」か「A-ABR」とセットで暗記すると良いでしょう。
国試頻出ポイント: 乳児の聴覚スクリーニングは、母子保健の分野で頻出です。特に「どの検査か」を選ばせる問題と、「スクリーニングでリファー(要再検査)となった場合の看護師の対応(保護者への説明やフォローアップ)」を問う状況設定問題がよく出題されます。
出題パターン注意!: 「耳音響放射検査(OAE)」は新生児聴覚スクリーニングの代表ですが、「パルスオキシメーターを用いた新生児先天性心疾患スクリーニング」など、他のスクリーニング検査と混同しないようにしましょう。