核心解説
この問題は、
自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder, ASD) の幼児期における特徴的な行動パターンを問うています。ASDは、
社会的コミュニケーションの質的障害と
限定された反復的な行動・興味・活動を2つの核心症状とする神経発達症 (Neurodevelopmental Disorder) です。幼児期のASDでは、「他者と関わることの困難さ」と「同一性保持への強い欲求」が行動に如実に現れます。本問では、この「限定された反復的な行動パターン」に該当する選択肢が正解となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は「特定の物への強いこだわり」です。これはASDの診断基準の中核である
「興味の範囲の限局と常同性 (Restricted, repetitive patterns of behavior, interests, or activities)」 を直接的に示しています。例えば、同じ車のおもちゃのタイヤだけを回し続ける、特定のテレビ番組のワンシーンだけを繰り返し見る、物の並べ方に強いこだわりを持つなどの行動が該当します。この行動は、見通しが立たないことへの不安から、環境の予測可能性を高め、安心感を得るための適応行動であると理解できます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番の「模倣遊びの活発さ」は誤りです。ASDの幼児は、他者の行動を観察し模倣する
「社会的参照 (Social Referencing)」 や
「見立て遊び (Pretend Play)」 が困難であることが特徴的です。定型発達児が「電話ごっこ」や「おままごと」を自然に始めるのに対し、ASD児は物の機能的な使い方(例:車を走らせる)に固執し、象徴的な遊びに発展しにくいです。
③番の「視線が合いやすい」は誤りです。
混同注意! ASDでは、対面での
アイコンタクトの回避が早期から見られるサインの一つです。新生児期から人の顔を見ようとしない、視線を合わせてもすぐにそらすなどの特徴が、乳児期の気づきのきっかけとなることが多いです。
④番の「言語発達の促進」は誤りです。ASDでは
言語発達の遅れや退行が高頻度で見られます。特に、2歳前後で一度獲得した言葉が消失する「獲得言語の退行」はASDに特徴的で、早期発見の重要な手がかりとなります。ただし、知的障害を伴わない高機能ASDでは、語彙自体は豊富でも、会話のキャッチボールができない、相手の気持ちを汲んだ言語使用が苦手という「語用論的障害」が前景に出ることもあります。
⑤番の「他児への関心が強い」は誤りです。ASDの幼児は、他の子どもに対して無関心であるか、または独特な方法で関わろうとすることが多いです。一方的に自分の好きな話題を話し続ける、集団遊びに入れず一人遊びに没頭する、他児が近づくとパニックになるなどの行動が見られます。
概念整理:
自閉スペクトラム症 (ASD) は、
社会的コミュニケーションの障害(対人相互反応、非言語的コミュニケーション、関係構築の困難)と
限局的反復行動(常同運動、同一性保持、限定された興味、感覚の特異性)の2軸で理解します。幼児期の診断では、これらの行動が「年齢相応の発達」から逸脱しているかどうかが評価の鍵となります。
一目で比較!
| 特性 | 自閉スペクトラム症 (ASD) | 注意欠如・多動症 (ADHD) |
|---|
| 対人関係 | 回避・無関心・独特な関わり | 衝動的・過度に社交的 |
| こだわり | 強い (変化への抵抗) | 少ない (飽きやすい) |
| 注意 | 特定対象への過集中 | 注意散漫・持続困難 |
看護過程ポイント
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アセスメント: 乳幼児健診や保育園での集団生活における観察情報が重要。「視線が合わない」「名前を呼んでも振り返らない」「一人遊びが多い」「特定の遊びに固執する」などのサインを見逃さない。
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看護診断: 例:「社会的相互作用の障害 (Impaired Social Interaction)」「非効果的対処 (Ineffective Coping)」「危険への防御低下 (Risk for Injury)」など。
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介入: 構造化された環境の提供(見通しが立つスケジュール表示)、感覚過敏への配慮(照明や音の調整)、本人のペースを尊重した関わり、保護者への支援と社会資源(療育機関、ペアレントトレーニング)の情報提供。
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評価: 特定の行動が軽減したか、コミュニケーション手段が拡大したか、保護者の育児負担感が軽減したか。
暗記のコツ
ASDの3つの核心症状は「
3つの『こ』」で覚えましょう。
1. **こ**みゅにけーしょん(コミュニケーション)障害
2. **こ**さい(交代性)が苦手
3. **こ**だわりが強い
国試頻出ポイント
ASDは、小児看護学だけでなく、精神看護学、発達障害の分野でも頻出です。特に以下のポイントが問われます。
- 早期発見のサイン(3歳児健診でのチェックリストなど)
- 診断基準(DSM-5の2つの核心症状)
- 合併しやすい疾患(知的障害、てんかん、ADHD、不安障害)
- 薬物療法(易刺激性や常同行動に対するリスペリドンなど)
- 保護者支援と療育の基本(TEACCHプログラム、応用行動分析)
出題パターン注意!
事例問題で「保育園で集団行動ができず、一人で遊んでいる幼児」の事例が提示され、「最も考えられるのは?」という出題が典型的です。また、ASDとADHDの鑑別を問う問題や、ASD児の看護介入の優先順位(例:環境調整 vs 服薬指導 vs 保護者への病状説明)を問う問題も増えています。