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高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
問題
78歳の男性が転倒により右橈骨遠位端骨折と診断された。ギプス固定で保存的治療を行うことになった。この患者への指導として適切なのはどれか。
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1
ギプス固定中は患側上肢の運動を全て禁止する
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2
手指の色・感覚・運動を定期的に確認するよう指導する
✓ 正解
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3
疼痛が強い場合はギプスを自分で緩めてよい
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4
ギプス固定は2週間で終了する
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5
ギプスが濡れても乾燥させれば問題ない
解説
ギプス固定中の患者には、コンパートメント症候群や神経圧迫の早期発見のため、手指の色調(蒼白・チアノーゼ)、感覚(しびれ)、運動(動かせるか)の定期的な自己観察が必要である。ギプスを濡らすと強度低下や皮膚トラブルの原因となる。疼痛が強い場合は自己判断せずに受診するよう指導する。
同じテーマの次の問題85歳の女性が転倒後に右大腿部痛と歩行困難を訴えている。単純X線写真で右大腿骨頸部内側に骨折線を認めた。この骨折の分類として正しいのはどれか。
詳細解説
核心解説
この問題は、ギプス固定 (Cast Immobilization) 中の看護・患者指導に関する基礎知識を問うています。特に高齢者の骨折では、不動に伴う合併症予防と、患者自身が観察すべきポイントを正しく指導できるかが鍵となります。コンパートメント症候群 (Compartment Syndrome) はギプス固定中の重大な合併症であり、早期発見には末梢循環・神経状態のモニタリングが必須です。
正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! ギプス固定後は、ギプス内の浮腫や血腫による圧迫で、筋区画内圧が上昇し、神経や血管が障害されるリスクがあります。このコンパートメント症候群を早期に発見するため、患者自身が「手指の色(血行状態)」「感覚(しびれの有無)」「運動(動かせるか)」を定期的に確認する習慣をつけることが最も重要です。これにより、異常を早期に医療者へ報告できます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①番の「全て禁止」は不適切です。むしろ、手指の能動的運動や肩関節の運動は、浮腫軽減や筋萎縮予防のために積極的に指導します。
③番の自己判断でのギプス緩和は禁忌 (Contraindication)です。ギプスを切ったり緩めたりすると、固定力が低下し骨折部の転位や治癒遅延を招きます。疼痛が強い場合は、コンパートメント症候群の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診するよう指導します。
④番の「2週間で終了」は誤りです。橈骨遠位端骨折のギプス固定期間は、一般的に4~6週間程度で、骨癒合の状態によって医師が判断します。
⑤番の「乾燥させれば問題ない」は誤りです。ギプスが濡れると強度が低下するだけでなく、内部の皮膚が湿潤して皮膚トラブル(びらん、潰瘍、感染)の原因となります。入浴時などは防水カバーを着用するよう指導します。
関連概念の整理 (Related Concepts): ギプス固定の合併症として、コンパートメント症候群の他に、混同注意! 反射性交感神経性ジストロフィー (RSD) / 複合性局所疼痛症候群 (CRPS) や ギプスによる褥瘡(圧迫創)、深部静脈血栓症 (DVT) も合わせて覚えておきましょう。また、ギプス固定中の運動は、患側の手指・肩関節の他、健側の全身運動(歩行など)も重要です。
概念整理: ギプス固定中の観察ポイント(5P:Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Paresthesia(知覚異常)、Paralysis(運動麻痺)、Pulselessness(脈拍消失))を患者自身にも指導する。特にコンパートメント症候群は6時間以内の早期対応が生命・機能予後に直結する緊急事態である。
一目で比較!: ギプス固定 vs シーネ固定(アルフェンス):ギプスは強固な固定が可能だが、コンパートメント症候群のリスクが高く、観察が難しい。シーネは浮腫に対応しやすく観察が容易だが、固定力はやや弱い。
看護過程ポイント: アセスメントでは「ギプス固定中の患者の末梢循環・神経状態の観察」が最優先。看護診断は「末梢循環障害のリスク」「神経血管機能障害のリスク」が該当。計画では「2時間ごとの5Pチェック」と「疼痛評価」を立案。実施では具体的な観察方法と患者教育を実践。評価では「異常の早期発見と報告」ができているか確認。
暗記のコツ: ギプス観察の5Pは「Pain(痛い!)→Pallor(青白い!)→Paresthesia(しびれる!)→Paralysis(動かない!)→Pulselessness(脈がない!)」の順番で重症度が上がると覚える。最後のPulselessnessは非常に重篤な状態で、この段階では筋壊死が進行している可能性が高い。
国試頻出ポイント: ギプス固定中の患者指導は頻出テーマ。特に「手指の観察」の具体的内容(色・感覚・運動)を正しく選べるか、また「自己判断でギプスを外さない」「濡らさない」といった禁忌事項を問う問題が多い。
出題パターン注意!: 「ギプス固定中の患者への指導として適切なのはどれか」という単純な知識問題から、「ギプス固定中の患者が夜間突然『指がしびれて痛い』と訴えた。看護師の最初の対応は?」といった状況設定問題に発展。5Pチェックの順序と緊急時の対応(ギプス切開、医師報告)まで押さえておく必要がある。
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは整形外科病棟の看護師です。78歳の男性患者さんが、転倒による右橈骨遠位端骨折でギプス固定後、病棟で経過観察中です。夜間、患者さんから「指がじんじんして痛い。ギプスがきつく感じる」と訴えがありました。バイタルサインは安定していますが、右手指はわずかに蒼白で、患者さんは「指先の感覚が鈍い」と言います。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まずは 5Pの緊急評価 を実施します。①疼痛の程度と性状(通常の骨折痛か、灼熱痛か)、②蒼白の程度と範囲、③知覚異常の部位と範囲(正中神経・尺骨神経・橈骨神経の領域を確認)、④手指の能動運動の可否、⑤橈骨動脈の触知。この症例では「疼痛増強」「蒼白」「感覚鈍麻」があるため、コンパートメント症候群の前駆症状(危険所見)と判断します。直ちに医師へSBARで報告し(S: 状況、B: 背景、A: アセスメント、R: 提案)、ギプス切開の準備と疼痛コントロールの指示を仰ぎます。決して患者さんの訴えを「骨折だから痛いのは当たり前」と軽視してはいけません。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 高齢者は痛みの感覚が鈍麻していることがあり、コンパートメント症候群が進行してから訴える可能性もあります。また、鎮痛薬の使用により症状がマスクされるリスクも考慮します。ギプス切開後も症状が改善しない場合は、筋膜切開術が必要になることもあります。転倒予防の観点から、ギプス固定中は患側上肢を使わないよう指導し、バランスの変化による転倒リスクをアセスメントします。
看護プロトコル: ギプス固定後24時間は2時間ごとに5Pチェック。その後は4時間ごと、退院時には患者自身がセルフチェックできるように指導。記録には、観察時間、5Pの各項目の詳細(例:「手指色調: 右 vs 左、蒼白の有無、毛細血管充満時間」)、疼痛のNRSスコア、医師への報告内容と指示、介入後の変化を漏れなく記載。
先輩看護師の一言: 「ギプス固定の患者さんにとって、『ちょっと違うな』という感覚はとても大事なサインです。痛みの質の変化(ズキズキ→ジンジン)や、指の色がいつもと違う、といった細かい変化を見逃さないでください。『ちょっとした違和感』が、コンパートメント症候群の最初の兆候かもしれません。国試では5Pを暗記するだけでなく、その順番と緊急度をイメージできるようにしておきましょう!」
重要概念
- コンパートメント症候群 (Compartment Syndrome) — 四肢の筋膜で区画された筋区画内圧が上昇し、毛細血管灌流が障害されて筋や神経の虚血・壊死を引き起こす病態。ギプス固定や外傷による浮腫で発生し、早期発見と緊急減圧(ギプス切開・筋膜切開)が必要。
- 5P (Five P's) — ギプス固定やコンパートメント症候群の観察項目。Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Paresthesia(知覚異常)、Paralysis(運動麻痺)、Pulselessness(脈拍消失)の頭文字をとったもの。進行に伴い順に出現する。
- 橈骨遠位端骨折 (Distal Radius Fracture) — 手関節近くの橈骨遠位端の骨折。転倒時に手をついて発生することが多く、高齢者に頻発。保存的治療(ギプス固定)か手術的治療(プレート固定など)が選択される。
- ギプス固定 (Cast Immobilization) — 骨折や脱臼の治療法の一つ。ギプス(石膏または合成樹脂)で患部を固定し、骨癒合を促進する。固定中は末梢循環・神経状態の観察と、合併症予防のための患者指導が重要。
- 反射性交感神経性ジストロフィー (RSD) / 複合性局所疼痛症候群 — 骨折や外傷後に生じる難治性の疼痛症候群。ギプス固定後の合併症として稀に発生。痛みに加え、浮腫、発汗異常、皮膚の変化などを伴う。早期発見とリハビリテーションが重要。
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