核心解説
この問題は、
大腿骨転子部骨折 (Femoral Trochanteric Fracture) の術後離床計画に関する知識を問うています。特に高齢者の術後管理では、
早期離床 (Early Mobilization) が廃用症候群や深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT) の予防に極めて重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 大腿骨転子部骨折に対する骨接合術(プレートや髄内釘による内固定)は、強固な内固定が得られるため、術後翌日から
車椅子乗車 (Wheelchair Transfer) を開始することが標準的です。早期に離床することで、筋力低下・関節拘縮・心肺機能低下などの廃用症候群 (Disuse Syndrome) や、下肢を動かさないことで生じやすい深部静脈血栓症を予防します。高齢者は術前から活動性が低いことが多く、安静期間が長引くと回復が著しく遅れるため、早期離床の重要性が特に強調されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番:
混同注意! 術後1週間のベッド上安静は、高齢者では筋委縮や血栓症リスクを著しく高め、離床後の回復を困難にします。大腿骨頸部骨折とは異なり、転子部骨折は血行が良好で骨癒合が早いため、早期離床が推奨されます。
- ③番:術後3日目からの完全荷重歩行は時期尚早です。完全荷重 (Full Weight-Bearing) は骨癒合の進行に応じて、術後数週間から数ヶ月かけて開始します。
- ④番:部分荷重歩行 (Partial Weight-Bearing) は、術後の骨癒合状態や内固定の強度に応じて、通常は術後数週間目から徐々に開始します。
- ⑤番:抜釘 (Implant Removal) は骨癒合完了後(術後1年~1年半程度)に行うため、離床開始の基準にはなりません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
大腿骨近位部骨折(転子部骨折と頸部骨折)の術後管理の違いを押さえましょう。
混同注意! 大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture) は血行が脆弱で骨頭壊死リスクが高いため、人工骨頭置換術 (Hemiarthroplasty) が選択されることが多く、術後早期からの荷重制限が厳格な場合があります。一方、転子部骨折は血行が豊富なため骨接合術が行われ、早期離床が容易です。高齢者の骨折手術では、いかに早期に離床し、ADL(日常生活動作)を維持・向上させるかが治療の成否を分けます。
概念整理:
大腿骨転子部骨折 の術後は、強固な内固定により
早期離床(術後翌日からの車椅子乗車) が可能であり、高齢者の
廃用症候群 (Disuse Syndrome) と
深部静脈血栓症 (DVT) の予防が看護の最優先目標となる。
一目で比較!:
| 骨折部位 | 術式 | 術後離床開始 | 荷重制限 |
|---|
| 大腿骨転子部骨折 | 骨接合術(髄内釘・プレート) | 早期(翌日~2日目)車椅子乗車 | 徐々に部分荷重 → 完全荷重 |
| 大腿骨頸部骨折 | 人工骨頭置換術 | 術後2~3日目から車椅子乗車 | 脱臼予防のため厳格な荷重制限あり |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 術後の疼痛コントロール状態、下肢の循環状態(色調・温感・浮腫)、神経症状(足趾の運動・感覚)を確認。DVT予防のため、下肢周径測定やHomans徴候の観察も行う。
-
看護診断: 「術後の痛みに関連した身体可動性障害」 「安静による廃用症候群のリスク状態」
-
計画・実施: 医師の離床指示に基づき、術後翌日からベッドアップ(ギャッジアップ)→端座位→車椅子乗車へ段階的に進める。離床時は疼痛に注意し、鎮痛薬の投与タイミングを調整する。歩行器や松葉杖の使用指導も早期に開始する。
-
評価: 患者の自覚症状(痛み・めまい)、バイタルサインの変動、離床後の疲労度を評価し、計画を修正する。
暗記のコツ: 「転子部=血行良い=早期離床OK」と覚えましょう!「頸部=血行悪い=骨頭壊死リスク=人工骨頭=脱臼予防」とセットで暗記すると、混乱しにくいです。
国試頻出ポイント: 大腿骨近位部骨折(転子部・頸部)の術後離床計画は、毎年と言っていいほど出題される頻出テーマです。特に「転子部骨折は早期離床が可能」というポイントと、「高齢者では廃用症候群予防のため早期離床が絶対条件」という視点が問われます。骨折部位ごとの術式と術後管理の違いを表で整理して覚えましょう。
出題パターン注意!: 「82歳女性、転子部骨折術後3日、バイタルサイン安定、創部痛あり。離床計画として適切なのは?」→「術後翌日から車椅子乗車開始」が正解。類似問題で「頸部骨折、人工骨頭置換術後」の場合は「術後脱臼予防のため、股関節の屈曲・内転・内旋の禁止」「手術台やベッドの高さに注意」などが問われます。