核心解説
この問題は、
人工膝関節全置換術 (Total Knee Arthroplasty, TKA) 後の創部管理において、
深部感染 (Deep Surgical Site Infection) の徴候を見極めるポイントを問うています。TKA後の感染は、人工関節の機能不全や抜去につながる重篤な合併症であり、バイタルサインや創部の観察が極めて重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は
④ 創部周囲の熱感と悪臭を伴う排膿 です。
熱感 (Heat) と悪臭を伴う排膿 (Purulent Drainage with Foul Odor) は、細菌感染が進行していることを示す確実な徴候です。特に人工関節のような異物がある場合、感染は関節腔内に広がりやすく、抗生剤治療のみでは難治性で、再手術が必要となることがあります。看護師は、創部の視診・触診・嗅覚を総合的にアセスメントし、異常を早期に発見する必要があります。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 創部周囲の皮下出血斑 は、手術中の血管損傷や止血不足による
血腫 (Hematoma) を示します。感染の直接的な徴候ではなく、術後早期によく見られます。ただし、大きな血腫は感染のリスクを高めるため注意が必要です。
②
創部からの漿液性の浸出液 は、創傷治癒過程における正常な滲出液(創液)であり、感染徴候ではありません。量が急に増えたり、色調が変化したりする場合は注意が必要ですが、単独では感染とは言えません。
③
創部周囲の軽度の発赤 は、炎症反応の一部として術後数日間は正常に見られます。しかし、発赤が拡大したり、持続したりする場合は感染の可能性が高まります。軽度であれば経過観察の範囲です。
⑤
創部の縫合糸の露出 は、創部離開や縫合不全を示す所見であり、感染の直接的な徴候ではありません。感染が原因で離開することもありますが、単独では感染とは判断しません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
TKA後の合併症として、深部静脈血栓症 (DVT)・肺血栓塞栓症 (PE)・感染・関節不安定性・骨折などがあります。感染のリスク因子には、糖尿病・肥満・免疫抑制状態・長期ステロイド使用などが挙げられます。また、感染予防のための周術期抗生剤投与や、術中の清潔操作の徹底が重要です。
概念整理:
人工関節周囲感染 (Periprosthetic Joint Infection, PJI) は、表層感染と深部感染に分類されます。深部感染は関節腔内に及び、治療が困難です。感染徴候は、局所所見(発赤・熱感・腫脹・疼痛・排膿・悪臭)と全身所見(発熱・白血球増多・CRP上昇)を総合的に評価します。
一目で比較!:
| 所見 | 正常な術後経過 | 感染の疑い |
|---|
| 創部の状態 | 軽度の発赤、少量の漿液性浸出液 | 熱感、悪臭を伴う排膿、発赤の拡大 |
| 疼痛 | 経時的に軽減する創部痛 | 増悪する疼痛、安静時痛 |
| 全身症状 | なし | 発熱 (38℃以上)、倦怠感 |
| 血液検査 | CRPは術後3-4日でピーク後低下 | CRP再上昇、白血球増多 |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 創部の視診(発赤・腫脹・排膿の有無と性状)、触診(熱感・圧痛)、嗅覚(悪臭の有無)、バイタルサイン(体温・脈拍)、血液検査(CRP・白血球数)を毎日評価する。患者の主観的訴え(痛みの悪化)も重要。
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看護診断: 「感染リスク状態 (Risk for Infection)」「急性疼痛 (Acute Pain)」「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」
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計画・実施: 無菌的操作による創部交換、抗生剤の確実な投与、創部の安静保持、疼痛コントロール、栄養状態の改善(特にたんぱく質摂取)
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評価: 感染徴候の有無、創部の治癒経過、炎症反応の推移
暗記のコツ:
「熱・悪臭・排膿=感染確定!」 と覚えましょう。正常な術後創は「少し赤い」「少し液が出る」程度ですが、感染が加わると「熱を持つ」「臭い」「膿が出る」の3拍子が揃います。
国試頻出ポイント: 人工関節置換術後の合併症は、感染・DVT・脱臼の3つが頻出です。感染の徴候として、局所の熱感・悪臭・排膿が最も確実な所見であることを押さえておきましょう。状況設定問題では、創部観察のタイミングや報告基準(SBAR)と関連して出題されることが多いです。
出題パターン注意!: 「TKA術後3日目、創部から悪臭のある膿性排液が少量認められた。看護師の最初の対応は?」→ 直ちに医師へ報告し、培養検査用の検体を採取する準備をする(新しいガーゼや滅菌容器の準備)。創部を洗浄したり、自己判断で抗生剤を投与したりしない。