大腿骨頸部骨折の手術後、荷重制限のある患者のベッド上での移動方法の指導として適切なのはどれか。 | MyMerci
運動機能障害のある患者の看護
問題

大腿骨頸部骨折の手術後、荷重制限のある患者のベッド上での移動方法の指導として適切なのはどれか。

解説
荷重制限のある患者の移動では、患側への荷重を避ける必要がある。頭側のベッド柵を握り、健側の下肢で蹴る方法は、患側に体重をかけずに安全に移動できるため適切である。

詳細解説

核心解説 この問題は、大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture) 術後で、荷重制限 (Weight-Bearing Restriction) がある患者に対するベッド上での安全な移動方法を問うています。荷重制限とは、手術した患側の脚に体重をかけられない状態であり、転倒や骨折の再発、またはインプラント(人工骨頭やスクリュー)の破損を防ぐために最も重要な制限です。看護師は、患者が患側に荷重せず、かつ効率的に体を移動できる方法を指導する必要があります。 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! 選択肢③「頭側のベッド柵を握り、健側の下肢で蹴って移動する」が正解です。
この方法は、上肢(腕の力)と 健側 (Unaffected Side) の下肢の力のみを使って体を移動させるため、患側への荷重が完全に回避 できます。頭側のベッド柵を握ることで体を引き上げるための固定点ができ、健側の下肢でベッドを蹴る推進力が加わることで、スムーズな移動が可能です。これは術後の安全な移動の基本テクニックです。 誤答の分析 (Distractor Analysis) 混同注意! 各誤答は、荷重制限の原則や、術後の体の使い方を誤って理解している場合に選びやすい選択肢です。 - ①番:ベッド柵につかまり、両肘を伸ばして体を持ち上げる
→ 誤り。両肘を伸ばすためには、両肩甲骨と両上肢に体重を預ける必要がありますが、この動作だけでは 患側の下肢に無意識に力が入り、結果的に荷重制限を破る危険があります。また、体幹の回旋を伴わないため、効率的な移動にはなりません。 - ②番:健側の肘と患側の膝を使って体を引き上げる
→ 誤り。患側の膝(患側の脚)を支点にすることは、荷重制限に反します。 患側の膝でベッドを押すことで、骨折部や手術創に大きな負荷がかかり、疼痛やインプラントの破損リスクが高まります。 - ④番:患側の肩甲骨と骨盤を支点に体を回旋させる
→ 誤り。患側の骨盤を支点にすることは、結果的に 患側の股関節(骨折部)に体重をかけること になります。これは荷重制限の観点から禁忌です。また、肩甲骨を支点にする動作は体幹の不安定性を招き、転倒リスクが高まります。 - ⑤番:患側の上肢と下肢を使って体を引き上げる
→ 誤り。患側の上肢は手術のために動きが制限されている場合が多く(特に側臥位などでの手術後)、また患側の下肢を使うことは、荷重制限に真っ向から反します。 患側の脚を支点にしてしまうため、絶対に避けるべき方法です。 関連概念の整理 (Related Concepts) - 荷重制限の種類: 「非荷重 (Non-Weight Bearing: NWB)」「つま先接地 (Toe-Touch Weight Bearing: TTWB)」「部分荷重 (Partial Weight Bearing: PWB)」「全荷重 (Full Weight Bearing: FWB)」の違いを理解しておきましょう。本問では最も厳しい「非荷重」の状態を想定しています。 - ベッド上移動の基本原則: 移動方向の反対側のベッド柵を握る、健側の下肢で蹴る、体幹を少し起こして重心を移動させる、の3点をセットで指導します。 - 術後合併症予防: 荷重制限中は 深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis: DVT)廃用症候群 (Disuse Syndrome) のリスクが高まります。ベッド上での足関節の自動運動(ポンプ運動)や、体位変換の指導も併せて行います。
概念整理: 大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture) 術後は、患側への荷重制限 (Weight-Bearing Restriction) が最優先。ベッド上移動では、上肢(健側優位)と健側下肢のみを使用し、患側下肢に体重をかけない方法を指導する。
一目で比較!:
方法可否理由
健側下肢で蹴る適切患側荷重なし、推進力確保
患側膝を使う禁忌患側に荷重がかかる
両肘を伸ばす非効率・危険患側下肢に無意識に力が入る

看護過程ポイント: アセスメント:術前のADL(移動能力、筋力)と疼痛の程度を評価。荷重制限の指示(NWB/PWBなど)を医師の指示書で確認。看護診断:『術後運動機能障害 (Impaired Physical Mobility)』『転倒リスク状態 (Risk for Falls)』計画・実施:安全な移動方法の具体的な指導(見本を示す)、ベッド柵の高さ調整、コールの位置確認。移動後の疼痛の有無を確認。評価:患者が正しい方法で安全に移動できているか、疼痛の出現はないか。
暗記のコツ: 「患側(手術した方)は絶対に地面につけない・体重をかけない」と覚えましょう。「健側(元気な方)の力だけで移動する」という原則をイメージすると、③番が自然と選べます。
国試頻出ポイント: 大腿骨頸部骨折は高齢者に多く、術後の看護(荷重制限、転倒予防、DVT予防、せん妄ケア)は国試の頻出テーマです。特に「荷重制限下での移動方法」は、実技試験(OSCE)でも問われる実践的な知識です。
出題パターン注意!: 単純な「適切な移動方法」の選択に加えて、「移動時に患者が疼痛を訴えた場合の看護師の対応」や「荷重制限が解除された後の歩行訓練の開始時期」を問う発展的な事例問題もよく出ます。移動方法だけでなく、その根拠を深く理解しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 80代女性、大腿骨頸部骨折に対して 人工骨頭置換術 (Bipolar Hip Arthroplasty: BHA) 後2日目。医師の指示は「非荷重 (NWB)」。患者はベッド上で「お尻の位置を少し上に動かしてほしい」と訴えています。ベッド柵は両側に設置されています。あなたは看護師として、患者にどのように移動方法を指導しますか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 1. 観察 (Observation): まず、患者の疼痛の程度(Numerical Rating Scale: NRS)、バイタルサイン、意識レベルを確認。術後の創部の状態(発赤、腫脹、渗出液の有無)も観察。ベッド柵の高さが患者の上肢の力で十分に握れる高さか確認。 2. アセスメント (Assessment): 最重要! 患者はNWBであるため、患側の左下肢に体重をかけることは絶対禁忌。患者の上肢と健側の右下肢の筋力は、移動に十分かどうかを判断。 3. 報告 (Report - SBAR): 医師や先輩看護師への報告は不要なレベルですが、もし移動後に疼痛が増強した場合や、患者が自力で移動できない場合は報告する。記録には、移動指導の内容と患者の反応、移動後の疼痛評価を記載。 4. 介入 (Intervention): 患者のそばで、実際に動作を見せながら指導します。「では、一緒にやってみましょう。まず、頭の上の方のベッド柵(頭側の柵)を右手でしっかり握ってください。次に、痛くない方の右足(健側)でベッドのマットレスをグッと蹴って、お尻を上に引き上げます。そうすると、手術した左足に全く力が入らずに移動できますよ。」と声かけ。 5. 評価 (Evaluation): 患者が正しい方法で移動できたか確認。移動後に「痛いところはありませんか?」と必ず確認し、疼痛の有無と移動の達成感を評価。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) - 転倒リスク: ベッド上での移動中にバランスを崩してベッドから転落しないよう、必ず両側のベッド柵を上げておく。 - 疼痛管理: 移動前に鎮痛薬の効果時間を確認し、疼痛が強い場合は無理に移動させない。医師に相談し、必要に応じて指示を受ける。 - 特殊な注意点(高齢者): 高齢者は筋力低下や認知機能低下がある場合が多い。指導は短く、具体的に、繰り返し行う。安全が確認できるまでは、必ず看護師が付き添って行う。 - 深部静脈血栓症 (DVT) 予防: ベッド上で安静が続くため、移動の前後には足関節の自動運動(ポンプ運動)を促す。
看護プロトコル: 観察項目:移動前後の疼痛(NRS)、バイタルサイン、SpO2。移動の可否判断。患者の協力の可否。移動時のバランス。移動後の下肢のしびれや冷感の有無。報告基準(SBAR):S: 患者がベッド上移動に難渋している。B: 大腿骨頸部骨折術後2日目、NWB指示。A: 患側への荷重を回避する方法を指導したが、疼痛が強く自力移動が困難。R: 医師の再評価と鎮痛薬の追加指示が必要。
先輩看護師の一言: 「荷重制限のある患者さんの移動介助は、『正しい知識』と『優しい声かけ』の両方が大事です。患者さんは痛くて不安でいっぱい。『痛い方の足は使わないでね』と一言添えるだけで、患者さんの安心感が全然違います。そして、何より『なぜこの方法なのか』を自分が理解していないと、患者さんに自信を持って指導できません。国試の勉強も、ぜひ『現場でどう使うか』を考えながら進めてくださいね!」

重要概念

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