核心解説
この問題は、
人工股関節全置換術 (Total Hip Arthroplasty, THA) の術後急性期における
脱臼予防のための体位管理を問うています。THA後は、新しい人工関節が安定するまでの間、周囲の軟部組織の緊張を保ち、特定の肢位によって関節が不安定になることを防ぐ看護が極めて重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! THA術後早期(特に術後数日~数週間)は、
脱臼 (Dislocation) のリスクが最も高い時期です。人工関節は関節包や靭帯などの支持組織が損傷・切開された状態で挿入されるため、不安定です。
股関節を伸展位かつ軽度外転位に保つことが脱臼予防の基本原則となります。
④「膝を伸ばした仰臥位で股関節を軽度外転位に保つ」は、この原則に完全に合致します。膝の下に枕を入れずに伸展させることで、股関節の屈曲を防ぎ、外転位を保つことで関節の安定性を高めます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意!「患側下肢を内旋位に固定する」→
禁忌。THA術後は、内旋位も脱臼を誘発する危険な肢位です。特に後方アプローチでは、屈曲・内転・内旋の複合動作が脱臼の最大リスクとなります。
② 「股関節を90度以上屈曲した座位を許可する」→
禁忌。90度以上の屈曲は、人工関節の可動域限界を超え、前方脱臼を引き起こす可能性が高いため、術後早期は厳禁です。
③ 「膝の下に枕を入れて股関節を屈曲位に保つ」→
禁忌。膝の下に枕を入れると股関節が屈曲位になります。これは、臥位においても脱臼リスクを高めるため避けるべき体位です。
⑤ 「患側を下にした側臥位を許可する」→
禁忌。患側を下にする側臥位は、股関節への過度な圧迫と不安定な肢位を強いるため、脱臼リスクが非常に高く許可されません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
THA後の脱臼予防は、「手術アプローチ(後方・側方・前方)」によって禁忌肢位が若干異なります。
| 手術アプローチ | 最も避けるべき肢位 |
| 後方アプローチ(最も多い) | 屈曲 + 内転 + 内旋(例:和式トイレ、低い椅子からの立ち上がり、足を組む) |
| 前方アプローチ | 伸展 + 外転 + 外旋(例:仰臥位で枕を腰の下に入れる) |
しかし、どのアプローチにおいても、術後早期の過度な屈曲(90度以上)、内旋、外旋、内転は原則として避けるべきです。
概念整理
THA術後急性期の体位管理は、
脱臼予防が最優先課題です。基本肢位は「仰臥位で股関節伸展・軽度外転位」。これを守るため、膝の下に枕を入れない、患側を下にしない、90度以上の座位をとらせない、内旋・外旋させないことが看護師の重要な役割です。
一目で比較!
| 許可される体位 | 禁止される体位(術後早期) |
| 仰臥位(股関節伸展・軽度外転) | 患側を下にした側臥位 |
| 健側を下にした側臥位(枕での高さ調整必須) | 患側下肢の内旋・外旋位固定 |
| 座位(90度未満、足を床につけて) | 股関節90度以上の屈曲座位(低いソファなど) |
| 端坐位(股関節屈曲90度未満) | 膝の下に枕を入れた仰臥位(屈曲位) |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 手術アプローチの種類、術中安定性の確認、術前の可動域、患者の理解度(脱臼予防の教育が必須)。
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看護診断 (Nursing Diagnosis): 【転倒・転落リスク状態】、【術後合併症(脱臼)リスク状態】、【活動不耐容】。
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計画・実施: ベッド上での三角枕や外転枕の使用。離床時には必ずハイバックチェアを使用し、股関節が90度以上にならないよう指導。夜間帯の体位変換時の声かけと確認。
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評価: 脱臼徴候(股関節部の激痛、下肢長の左右差、下肢の異常な肢位、歩行困難)がないか確認。
暗記のコツ
「THA術後は、
股関節を『伸ばす・広げる(外転)』が基本、『曲げる・閉じる・ひねる(屈曲・内転・内旋)』は危険」と覚えましょう。「曲げて(屈曲)、閉じて(内転)、ひねる(内旋)」が後方脱臼の最大リスクです。
国試頻出ポイント
- 「術後翌日」の体位、離床時の注意点、退院指導の内容(和式トイレ・低い椅子・足を組むことの禁止)は頻出。
- 「脱臼予防のための禁忌肢位」を具体的に問う選択肢問題としてよく出題されます。
- アプローチの違いによる禁忌肢位の微妙な差異は、応用問題として出題されることがあります。
出題パターン注意!
事例問題として出題される場合:「THA術後2日目の患者が『足を組みたい』『低いソファに座りたい』と言っている。看護師の対応として適切なのはどれか。」という形で、脱臼予防の指導内容を問われることが多いです。基本的な禁忌肢位を理解していれば対応できます。