糖尿病網膜症の治療において、汎網膜光凝固術(PRP)の目的はどれか。 | MyMerci
感覚機能障害のある患者の看護
問題

糖尿病網膜症の治療において、汎網膜光凝固術(PRP)の目的はどれか。

解説
汎網膜光凝固術は、網膜の虚血領域を焼灼することで、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生を抑制し、新生血管を退縮させる。黄斑浮腫の改善や視力向上が直接の目的ではなく、増殖性糖尿病網膜症の進行を防ぐための治療である。

詳細解説

核心解説 この問題は、糖尿病網膜症 (Diabetic Retinopathy) に対する治療法である 汎網膜光凝固術 (Panretinal Photocoagulation: PRP) の治療目的を問うています。糖尿病網膜症は、高血糖による微小血管障害が原因で、網膜の虚血とそれに伴う 血管内皮増殖因子 (VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor) の過剰産生が病態の鍵となります。PRPは、虚血状態にある網膜組織をレーザーで焼灼(凝固)することで、VEGFの産生源を減少させ、結果として異常な新生血管の発生・増殖を抑制する治療です。つまり、最重要! PRPの主目的は、増殖性糖尿病網膜症の進行を防ぎ、失明を予防することにあり、すでに低下した視力の回復や黄斑浮腫の直接的な改善を目的とした治療ではありません。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、糖尿病網膜症 の病態生理と、それに対する 汎網膜光凝固術 (PRP) の作用機序を正しく理解しているかです。糖尿病網膜症は非増殖期(NPDR)と増殖期(PDR)に分類され、PDRで出現する 新生血管 (Neovascularization) は脆弱で、硝子体出血や牽引性網膜剥離の原因となります。PRPはこの新生血管を直接レーザーで焼くのではなく、その発生源となる虚血網膜を減少させることで、VEGFの産生を抑制し、新生血管を退縮させます。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は ② 新生血管の退縮 です。PRPにより、虚血網膜が焼灼され、VEGF産生が抑制されることで、すでに発生した新生血管は退縮し、新たな新生血管の発生も予防されます。これにより、硝子体出血や網膜剥離といった重篤な合併症のリスクを低減し、視力の維持・失明予防を図ります。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番「白内障の予防」は、白内障(Cataract)は水晶体の混濁であり、網膜のレーザー治療であるPRPでは予防や治療の対象とはなりません。
混同注意! ③番「視力の向上」は、PRPの直接的な目的ではありません。PRPは進行を抑制し現状の視力を維持することが目的であり、すでに低下した視力を回復させる効果は期待できません。視力向上を目的とする場合は、硝子体手術や抗VEGF療法などが検討されます。
混同注意! ④番「網膜の酸素需要の増加」は、治療目的とは逆です。PRPは網膜の虚血領域を焼灼することで酸素需要の高い組織を減らし、結果的に網膜全体の酸素需給バランスを改善する効果があります。
混同注意! ⑤番「黄斑浮腫の改善」は、PRPの直接的な効果ではありません。むしろ、黄斑部にレーザー照射を行うと視力低下を招く危険があるため、PRPでは黄斑部を避けて治療を行います。黄斑浮腫の治療には、抗VEGF薬の硝子体内注射や黄斑部への局所光凝固(フォーカルレーザー)が用いられます。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 糖尿病網膜症 の治療には、PRPの他に 抗VEGF療法 (Anti-VEGF Therapy)硝子体手術 (Vitrectomy) があります。抗VEGF療法は、VEGFの働きを直接阻害することで黄斑浮腫や新生血管の活動性を抑制し、時にPRPと併用されます。硝子体手術は、すでに硝子体出血や網膜剥離が生じた進行例に対して行われます。また、糖尿病網膜症の予防には、厳格な血糖コントロール、血圧管理、脂質管理が不可欠であることを押さえましょう。
概念整理: 汎網膜光凝固術 (PRP) は、増殖性糖尿病網膜症 (PDR) の標準的治療であり、網膜の虚血領域をレーザーで焼灼することで、血管内皮増殖因子 (VEGF) の産生を抑制し、新生血管の退縮と発生予防 を図る。目的は失明予防であり、視力回復が直接の目的ではない。
一目で比較!:
治療法主な目的対象病態
汎網膜光凝固術 (PRP)新生血管の退縮・発生予防(失明予防)増殖性糖尿病網膜症 (PDR)
抗VEGF療法黄斑浮腫の改善、新生血管活動性の抑制糖尿病黄斑浮腫 (DME)、PDR
硝子体手術硝子体出血の除去、網膜復位硝子体出血、牽引性網膜剥離

看護過程ポイント: - アセスメント: 患者の糖尿病歴、血糖コントロール状況(HbA1c)、現在の視力、自覚症状(飛蚊症、視野欠損、視力低下の有無)を評価。治療後の眼痛、視力変化のモニタリングも重要。 - 看護診断: 【感覚知覚変調(視覚)】、【治療処置に関連する不安】、【セルフケア不足(血糖管理、眼の保護)】などが考えられる。 - 計画・実施: 治療後は眼帯保護、安静の確保。散瞳薬使用による羞明への対応(サングラス)。点眼薬の正しい使用法指導。血糖コントロールの重要性について再度教育。 - 評価: 治療後の眼底所見(新生血管の退縮)、視力の維持、合併症(眼圧上昇、炎症)の有無、患者の不安軽減、血糖コントロールの継続。
暗記のコツ: 「PRP = Photo = 光、Retinal = 網膜、PhotoCoagulation = 光凝固」と分解して覚えましょう。「Pan-(汎)Retinal(網膜)だから、網膜の広い範囲をレーザーで焼くんだな」とイメージすると、虚血組織を減らしてVEGF産生を抑えるという目的につながります。「新生血管を退縮させる」がキーワードです。
国試頻出ポイント: 国試では、「PRPの目的は?」という直接的な知識問題に加え、増殖性糖尿病網膜症の患者の状態(硝子体出血、網膜剥離)を理解した上で、「なぜPRPが必要か」「PRP後の看護で注意することは何か」といった状況設定問題で問われることがあります。
出題パターン注意!: 「糖尿病網膜症の患者にPRPを施行した。術後の観察で最も重要なのは?」という問題に発展することがあります。この場合、眼圧上昇(緑内障発作)や網膜剥離の兆候(急激な視力低下、視野欠損)が正解となりえます。単純な治療目的の暗記だけでなく、治療に伴う合併症とその観察ポイントも併せて学習しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 「50代男性、糖尿病歴15年。HbA1c 9.5%。定期受診で眼底検査を施行したところ、両眼に増殖性糖尿病網膜症(PDR)と診断されました。主治医より『左眼から汎網膜光凝固術を開始します』と説明がありました。患者は『目にレーザーを当てるって聞いたけど、痛いのかな…。視力は良くなるの?』と不安を訴えています。」このような場面で、看護師としてどのような説明とケアが必要でしょうか? - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まず、患者の不安に共感し、治療の目的と実際の流れを丁寧に説明します。「この治療は、悪い血管(新生血管)ができる原因となる場所にレーザーを当てて、病気の進行を止める治療です。視力が良くなる治療ではなく、今の視力を保ち、失明を防ぐことが目的です。」と伝えます。治療中は局所麻酔のため痛みはほとんどありませんが、光がまぶしく感じること、治療後は数時間、視界がかすむ可能性があることを説明します。治療後は、眼痛の有無、眼圧上昇(眼球の硬さ、吐き気、頭痛)の観察が重要です。また、血糖コントロールの重要性を再度強調し、必要に応じて糖尿病療養指導士や栄養士と連携します。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 治療後の運転は絶対に避けるよう指導します(散瞳による羞明と調節障害のため)。眼をこすらないこと、感染予防のため手指衛生と点眼指導を徹底します。治療を複数回に分けて行うことが一般的であるため、通院計画の調整支援も必要です。急激な視力低下や激しい眼痛が生じた場合は、直ちに受診するよう伝えます。
看護プロトコル: 観察項目: 自覚症状(眼痛、視力低下、視野欠損、飛蚊症の増加)、他覚症状(眼球の硬さ、結膜充血、前房の状態)、バイタルサイン(特に眼圧上昇に伴う嘔気・頭痛)。 報告基準(SBAR): S(状況)「PRP後〇時間経過の患者ですが」、B(背景)「糖尿病網膜症の治療後で」、A(アセスメント)「眼痛と嘔気があり、眼圧上昇が疑われます」、R(提案)「至急の医師の診察と眼圧測定をお願いします」。 記録: 治療日、照射部位・回数、患者の自覚症状、バイタルサイン、実施したケアと患者の反応。
先輩看護師の一言: 「糖尿病の患者さんにとって、目の治療はとても怖いものです。『目が悪くなるのでは?』『もっと見えなくなるのでは?』という不安をまず受け止めてあげてください。PRPは、今ある視力を守るための大切な治療です。『失明を予防するためのレーザー治療』と伝えることで、患者さんの治療への理解と意欲が大きく変わります。血糖コントロールが治療の効果を左右するので、食事や運動の支援も併せて行いましょう!」

重要概念

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