核心解説
この問題は
糖尿病性ケトアシドーシス (Diabetic Ketoacidosis, DKA) の血液検査所見の特徴を問うています。DKAは、インスリン欠乏を背景とした代表的な糖尿病急性合併症です。
インスリン欠乏により、グルコースの細胞内取り込みが障害され高血糖 (Hyperglycemia) をきたすと同時に、脂肪分解が亢進してケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)が過剰産生されます。このケトン体が強酸性であるため、血液は
代謝性アシドーシス (Metabolic Acidosis) へと傾きます。動脈血ガス分析では、pH低下、
HCO3-低下、アニオンギャップ (AG) の開大が特徴的です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
正解は⑤「高血糖と代謝性アシドーシス」です。DKAの病態の核心は、①絶対的インスリン不足による
高血糖、②ケトン体蓄積による
代謝性アシドーシスの2つです。したがって、血液検査では血糖値が著明高値(通常250mg/dL以上、しばしば350~500mg/dL以上)を示し、血液ガス分析では代謝性アシドーシス(pH 7.3未満、HCO3- 15mEq/L未満)が確認されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①と④の「低血糖」は誤りです。DKAはインスリン不足による高血糖であり、低血糖(血糖値70mg/dL未満)はインスリンの過剰投与やインスリノーマ(インスリン産生腫瘍)で見られます。また、②「代謝性アルカローシス」は誤りです。ケトン体は酸性物質であるため、アルカローシスにはなりません。代謝性アルカローシスは嘔吐による胃酸喪失などで起こります。③「正常血糖」は誤りで、DKAでは高血糖が必須です。また「呼吸性アシドーシス」は、肺胞低換気(CO2貯留)が原因であり、DKAのアシドーシスは代謝性が本態です。DKAでは代償性の過換気(Kussmaul呼吸)により、むしろ呼吸性アルカローシス傾向を伴うことがありますが、一次的な病態は代謝性アシドーシスです。
関連概念の整理 (Related Concepts):
DKAの鑑別として、
高血糖高浸透圧状態 (Hyperosmolar Hyperglycemic State, HHS) があります。HHSは著明な高血糖と脱水をきたしますが、ケトーシスやアシドーシスは軽度であり、DKAとの違いを整理しておきましょう。また、DKAの治療では、補液(生理食塩水)とインスリン持続静注、カリウム補正が三大原則です。
概念整理:
DKAの三徴:
高血糖 (Hyperglycemia) +
ケトーシス (Ketosis) +
代謝性アシドーシス (Metabolic Acidosis)。インスリン欠乏 → 糖利用障害(高血糖) + 脂肪分解亢進(ケトン体産生・アシドーシス)。
一目で比較!:
| 病態 | 血糖値 | アシドーシス/アルカローシス | ケトン体 |
|---|
| DKA | 高血糖(250mg/dL以上) | 代謝性アシドーシス | 高値 |
| HHS | 超高血糖(600mg/dL以上) | 正常〜軽度代謝性アシドーシス | 陰性〜軽度 |
| インスリノーマ | 低血糖(70mg/dL未満) | 代謝性アルカローシス傾向 | 低値 |
看護過程ポイント:
最重要! DKA患者のアセスメントでは、意識レベル(GCS)、脱水徴候(皮膚ツルゴール低下、口渇、尿量減少)、Kussmaul呼吸の有無、バイタルサイン(頻脈、低血圧)を評価します。看護診断としては「非効果的健康維持」「体液量不足リスク状態」「電解質バランス異常リスク状態」などが挙げられます。介入では、補液速度の厳守、インスリン持続静注時の血糖モニタリング(1時間ごと)、カリウム値の確認が必須です。
暗記のコツ:
DKAの3文字を分解して覚えましょう!
D = 糖尿病(高血糖)
K = ケトン(ケトーシス)
A = アシドーシス(代謝性)
「糖尿病でケトンが出てアシドーシスになった」とストーリーで覚えてください。
国試頻出ポイント:
DKAの血液検査所見(高血糖 + 代謝性アシドーシス + ケトン体上昇)は、看護師国家試験で毎年必ずと言っていいほど出題されます。また、DKAとHHSの鑑別や、DKA治療中の低カリウム血症(インスリン投与によるK+の細胞内シフト)への注意も頻出です。
出題パターン注意!:
単純な「DKAの血液ガス所見は?」という知識問題から、「DKA患者にインスリン持続静注中、血糖値が低下し、心電図でU波が出現した。何を疑うか?」といった、治療経過中の合併症(低カリウム血症)を問う状況設定問題へ発展します。