核心解説
この問題は、
肝硬変 (Liver Cirrhosis) における複合的な栄養障害 (Malnutrition) の病態生理を問うています。肝硬変では、線維化 (Fibrosis) と肝細胞の壊死・再生結節により肝機能が著しく低下し、あらゆる栄養代謝に異常が生じます。特に、
グリコーゲン貯蔵能の低下 (Decreased Glycogen Storage Capacity) は、空腹時の低血糖と飢餓状態を引き起こす重要な要因です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
④番が正解です。肝硬変では肝細胞の障害により、
肝臓でのグリコーゲン合成と貯蔵能が著しく低下します。通常、肝臓は食後の過剰なブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵し、空腹時にはこれを分解して血糖を維持します。肝硬変ではこの機能が障害されるため、
最重要! 短時間の絶食でも低血糖をきたしやすく、体内のエネルギー源が枯渇した
飢餓状態 (Starvation State) に陥りやすいのです。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
①番:
誤り。 糖質代謝は大きく障害されます。肝硬変ではインスリン抵抗性 (Insulin Resistance) による耐糖能異常(糖尿病合併)と、肝性グリコーゲン分解能低下による低血糖が混在します。代謝が正常に保たれることはありません。
②番:
誤り。 食欲はむしろ低下(食欲不振)することが多く、さらに腹水による胃の圧迫や、味覚異常なども加わり、栄養摂取量は不十分になりがちです。
③番:
誤り。 肝臓での蛋白合成能 (Protein Synthesis Capacity) は低下します。その結果、アルブミン (Albumin) 産生が減少し、
低アルブミン血症 (Hypoalbuminemia) による浮腫や腹水が出現します。低蛋白血症は起こりやすいです。
⑤番:
誤り。 肝硬変では肝臓での胆汁酸 (Bile Acid) の合成・分泌が障害されるため、胆汁による脂肪の乳化が不十分となり、脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の吸収が障害されます。
関連概念の整理 (Related Concepts):
肝硬変の栄養障害は多岐にわたります。糖質異常(耐糖能異常+低血糖傾向)、蛋白異常(低アルブミン血症、アンモニア代謝障害による肝性脳症)、脂質異常(脂肪便、脂溶性ビタミン欠乏)、さらに亜鉛やマグネシウムなどの微量元素欠乏も加わります。栄養管理は、分岐鎖アミノ酸 (BCAA) を強化した肝不全用栄養剤の使用や、エネルギー消費量の増加に対応した高カロリー・高蛋白(ただし肝性脳症時は蛋白制限)が基本です。
概念整理: 肝硬変では肝臓の三大代謝(糖質・蛋白・脂質)すべてが障害される。特に
グリコーゲン貯蔵能低下 → 低血糖傾向、
蛋白合成能低下 → 低アルブミン血症、
胆汁酸合成低下 → 脂溶性ビタミン吸収障害 の3点が核心。
一目で比較!:
| 代謝 | 肝硬変の障害 | 結果 |
| 糖質 | グリコーゲン貯蔵能低下 | 空腹時低血糖 |
| 蛋白 | アルブミン合成低下 | 低アルブミン血症・腹水 |
| 脂質 | 胆汁酸産生低下 | 脂溶性ビタミン欠乏 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、血糖値(特に空腹時・夜間)、血清アルブミン値、プロトロンビン時間(ビタミンK依存性凝固因子の指標)を確認。看護診断は「栄養バランスの変化:必要量より少ない栄養摂取」が優先される。介入では、少量頻回食の提供、低血糖症状の早期発見、夜間の補食の検討が重要。
暗記のコツ: 「肝硬変の栄養障害は『3つの低下』」と覚えましょう。
1. グリコーゲン
貯蔵能低下 → 低血糖
2. 蛋白
合成能低下 → 低アルブミン
3. 胆汁
産生能低下 → 脂溶性ビタミン吸収障害
国試頻出ポイント: 肝硬変の合併症(腹水、肝性脳症、食道静脈瘤)と並んで、栄養障害は重要なテーマ。特に「低血糖」「低アルブミン」「脂溶性ビタミン」のキーワードは頻出。
出題パターン注意!: 単独知識問題としてだけでなく、「肝硬変の患者が夜間に冷汗・意識障害を訴えた。看護師のアセスメントとして適切なのは?」というような状況設定問題に発展して出題されることが多い。