核心解説
この問題は、
経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG: Percutaneous Endoscopic Gastrostomy) を造設した患者における、安全な経腸栄養管理の基本を問うています。
胃瘻からの栄養注入は、誤嚥性肺炎 (Aspiration Pneumonia) や消化管障害(下痢、便秘、腹部膨満)を予防することが最優先の看護目標となります。胃瘻管理の根幹は「安全な注入」と「カテーテル管理」にあり、特に誤嚥予防のための体位調整と胃内容物の確認は必須です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 栄養剤注入前には、必ず胃内容物の貯留(残渣)や逆流の有無を確認します。これは、
胃内容物が過剰に貯留している状態で栄養剤を注入すると、胃内圧が上昇し、食道へ逆流して誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まるためです。具体的には、シリンジで胃内容物を吸引し、その量と性状(消化具合、胆汁混入の有無)を観察します。残渣量が多い場合(一般的には100mL以上、または前回注入量の50%以上など施設のプロトコルに従う)は、医師に報告し、注入を一時的に延期する判断も必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番「注入中は患者を完全な仰臥位にする」は誤りです。注入中は
上半身を30~45度挙上する のが必須であり、完全な仰臥位は誤嚥の危険性を著しく高めます。注入後も30分~1時間はこの体位を保つことが推奨されます。
②番「カテーテルの固定は毎日交換する」は誤りです。カテーテル(バンパーやバルーンタイプ)の固定やテープ交換は、汚染や脱落を防ぐために必要に応じて行いますが、
毎日交換する必要はありません。頻回な交換はかえって感染や皮膚トラブル(接触性皮膚炎)のリスクを高めます。
③番「注入後はすぐにカテーテルを抜去する」は誤りです。胃瘻カテーテルは栄養注入のたびに抜去・再挿入するものではなく、
長期留置用のカテーテルです。定期的(数ヶ月ごと)に交換しますが、注入ごとに抜去するのは感染や瘻孔損傷のリスクがあります。なお、注入後にカテーテルを洗浄(フラッシュ)し、閉塞を予防するケアは重要です。
⑤番「栄養剤は一度に全量を急速注入する」は誤りです。栄養剤は
急速注入ではなく、重力法や輸液ポンプを用いて緩徐に注入します。急速注入はダンピング症候群(Dumping Syndrome:急激な高張液流入による血管内脱水や循環血液量減少)や腹部膨満感、下痢を引き起こす原因となります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
胃瘻管理の基本手技と合併症予防をセットで覚えましょう。注入前の確認項目(胃残渣、チューブ位置、皮膚トラブルの有無)、注入中の体位管理(上半身挙上)、注入後のフラッシュ(白湯または生理食塩水)と体位維持はワンセットです。また、経腸栄養の合併症として、
誤嚥性肺炎、
下痢、
便秘、
チューブ閉塞、
創部感染、
リーク(漏れ) などを押さえておきましょう。
概念整理: 胃瘻(PEG)は、胃に直接栄養を補給するルートです。このケアの核心は「誤嚥予防」と「感染予防」の2点です。注入前の胃残渣チェックは誤嚥予防の第一歩であり、必ず実施します。
一目で比較!:
| 手技 | 正しい管理 | 誤った管理(リスク) |
| 注入前の体位 | 上半身30~45度挙上 | 完全仰臥位(誤嚥リスク↑) |
| 注入前の確認 | 胃残渣(逆流・貯留)の確認 | 確認せず注入(胃内圧上昇→逆流) |
| 注入速度 | 緩徐(重力法・ポンプ使用) | 急速注入(ダンピング症候群・下痢) |
| カテーテル管理 | 定期的交換(数ヶ月毎) | 毎日交換・注入毎に抜去(感染・損傷) |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 注入前の胃残渣量・性状、腹部の聴診(腸蠕動音の有無)、皮膚の状態(発赤・びらんの有無)。
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看護診断 (NANDA-I): 「誤嚥リスク状態」「栄養状態の変化:栄養過少または過多」「感染リスク状態」「皮膚統合性の障害リスク状態」。
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計画・実施: 誤嚥予防(体位管理、胃残渣確認、注入速度調整)、栄養状態のモニタリング(体重、Alb値、排便状況)、感染予防(カテーテル挿入部の清潔保持、固定テープの清潔交換)。
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評価: 誤嚥の有無(咳嗽、発熱、呼吸音の変化)、栄養状態の改善、皮膚トラブルの有無。
暗記のコツ: 「PEGの前にやること3つ」=
①上半身を起こす、②胃の逆流をチェックする、③ゆっくり流す。これをリズムよく覚えましょう!
国試頻出ポイント: 胃瘻管理は、
「注入前の体位と胃残渣確認」が最も頻出です。また、経腸栄養と経静脈栄養(TPN)の違いや、合併症としての誤嚥性肺炎の予防策(口腔ケアの重要性を含む)も併せて問われることが多いです。
出題パターン注意!: 基本知識(今回のような「正しい管理」の選択)から、状況設定問題(事例問題)へと発展します。例:「80歳女性、脳梗塞後遺症でPEG管理中の患者。注入中に咳嗽とSpO2低下が認められた。まず行うべき対応は?」→注入中止、体位調整(上半身挙上)、口腔内吸引、医師報告。