こんな問題があと800問挑戦 ›
消化・吸収機能障害のある患者への看護
急性膵炎の患者に対する看護で最も優先すべきものはどれか。
-
1
膵酵素の上昇を抑えるため、蛋白質を制限する
-
2
循環血液量減少に対応するため、輸液管理を行う
✓ 正解
-
3
鎮痛薬の使用は控える
-
4
経口摂取を早期に開始する
-
5
腹部マッサージを行い、疼痛を緩和する
解説
急性膵炎では膵周囲や腹腔内への炎症性渗出、嘔吐などにより循環血液量が減少し、ショック状態に陥るリスクが高い。そのため、輸液管理による循環動態の安定化が最優先される。経口摂取は膵酵素分泌を促進するため、初期は絶食とする。鎮痛薬は疼痛管理のために適切に使用する。蛋白質制限よりも絶食が優先される。腹部マッサージは膵炎を悪化させる可能性がある。
同じテーマの次の問題胃切除術後早期の患者に対する看護で適切なのはどれか。この問題が収録された問題集成人看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、急性膵炎 (Acute Pancreatitis)の急性期看護における看護介入の優先順位を問うています。急性膵炎の病態生理の核心は、トリプシン (Trypsin) などの膵酵素の自己消化作用 (Autodigestion) による膵実質の破壊と、それに伴う強力な炎症反応 (Systemic Inflammatory Response Syndrome, SIRS)です。この炎症により、血管透過性亢進 (Increased Vascular Permeability) が生じ、大量の血漿成分が膵周囲や腹腔内(後腹膜腔)に漏出します。さらに、炎症性サイトカインによる血管拡張と嘔吐による水分喪失が加わり、結果的に循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) を来たしやすい状態となります。したがって、急性期の看護では、循環動態の安定化が最優先事項となります。
1. 核心概念の分析 (Key Concept): この問題の鍵は、急性膵炎の重症度を決定する因子です。膵局所の炎症だけでなく、全身性炎症反応症候群 (SIRS) から多臓器不全 (Multiple Organ Dysfunction Syndrome, MODS) への進展を予防することが看護の最重要目標です。その第一歩が、輸液療法 (Fluid Resuscitation) による循環血液量の維持です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 急性膵炎では、漏出する血漿成分を補い、臓器灌流を維持するために、大量の輸液(晶質液が第一選択)が必須です。看護師は、血圧低下 (Hypotension)、頻脈 (Tachycardia)、尿量減少 (Oliguria) (<30mL/h)、CVP低下 などのショック徴候を早期に発見し、医師への報告と指示に基づく輸液の確実な投与を行います。これにより、腎不全や呼吸不全などの重篤な合併症を予防できます。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番: 混同注意! 膵酵素分泌を刺激するのは主に食事摂取であり、蛋白質制限よりも絶食 (NPO) が最優先です。急性期には消化管を休め、膵臓への刺激を遮断します。
- ③番: 混同注意! 急性膵炎の疼痛は非常に激烈です。鎮痛薬の使用は積極的に行うべきであり、ペチジン (Pethidine) や モルヒネ (Morphine)(胆道系への影響を考慮しつつ)が使用されます。疼痛はストレスとなり、病態を悪化させるため、適切な鎮痛は治療の一部です。
- ④番: 経口摂取は膵酵素分泌を促進し、病状を悪化させます。急性期は絶食が基本です。経口摂取の再開は、症状の改善(腹痛消失、炎症反応低下など)を確認してから、経腸栄養 (Enteral Nutrition) から段階的に開始します。
- ⑤番: 炎症を起こしている膵臓への物理的刺激は、炎症を増悪させ、膵破裂などの危険性を高めます。腹部マッサージは禁忌です。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 急性膵炎の重症度分類(Ranson基準、APACHE II、JSS重症度スコア)とICU管理の必要性、合併症(膵仮性囊胞、膵膿瘍、ARDS、DIC)についても併せて学習すると、より深い理解が得られます。
概念整理: 急性膵炎の病態は「自己消化 (Autodigestion)」と「SIRS」。治療と看護の目標は、①循環動態の安定化(輸液)、②膵臓の安静化(絶食・胃管減圧)、③疼痛コントロール(鎮痛薬)、④重症化予防(臓器モニタリング)である。
一目で比較!:
| 項目 | 急性膵炎 (Acute Pancreatitis) | 慢性膵炎 (Chronic Pancreatitis) |
|---|
| 主症状 | 激烈な上腹部痛、背部痛 | 繰り返す腹痛、消化吸収障害 |
| 病態 | 自己消化による急性炎症 | 不可逆的な線維化・萎縮 |
| 治療優先度 | 輸液、絶食、鎮痛(救命) | 膵酵素補充、疼痛管理(QOL) |
看護過程ポイント:
- アセスメント (Assessment): Vital Signs(特に血圧、脈拍、呼吸数)、尿量 (Urine Output)、腹部所見(圧痛、筋性防御、グレイ・ターナー徴候、カレン徴候)、血液検査(アミラーゼ、リパーゼ、CRP、BUN、Cre、血糖、Ca)。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 【急性疼痛】【体液量減少リスク】【非効果的呼吸パターン】【感染リスク】【栄養バランス変調:必要量以下の栄養摂取リスク状態】
- 計画・実施 (Planning & Implementation): 輸液管理、絶食管理(経鼻胃管挿入の準備と管理)、疼痛管理(体位調整、薬剤投与と効果判定)、呼吸管理(SpO2モニタリング、酸素療法)、安静の確保。
- 評価 (Evaluation): バイタルサインの安定、尿量の確保(30mL/h以上)、疼痛スコアの改善、炎症反応(CRP)の低下。
暗記のコツ: 急性膵炎の治療は「3つのS」で覚えましょう!「Suction(胃管減圧)」「Supplement(輸液)」「Sedation(鎮痛)」。これらの頭文字(S)は、患者さんをショック(Shock)から守るための看護の要です。
国試頻出ポイント: 急性膵炎の看護では、「絶食」「輸液」「疼痛管理」の優先順位が頻出です。特に、「なぜ輸液が最優先なのか?」を病態生理(循環血液量減少)から説明できるようにしておきましょう。また、経腸栄養がTPNより推奨される根拠(腸管粘膜の保護、感染予防)も近年の重要トピックです。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、「急性膵炎の患者が急変した。看護師の最初の行動は?」という状況設定問題に発展します。その場合は、「まずはバイタルサイン確認 → ショックの有無アセスメント → 医師へ報告 → 指示に基づき輸液開始」という臨床判断の流れを押さえましょう。
臨床実践ガイド- 1臨床シナリオ (Clinical Scenario)「40代男性。脂質異常症と飲酒歴あり。深夜に突然の心窩部痛を訴え救急搬送。腹部CTで急性膵炎(中等症)と診断され入院。ICU管理となる。血圧90/60mmHg、脈拍110bpm、呼吸数24回/分、体温38.5℃。血液検査ではアミラーゼ1200U/L、CRP20mg/dL。『お腹が張って痛い…』と苦痛の表情。」
- 2看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)最重要! 観察 → アセスメント → 報告 → 介入 → 評価。1. 観察: バイタルサイン、尿量、CVP、SpO2、腹部膨満の有無、皮膚の色調(黄疸や斑状出血の有無)。2. アセスメント: 頻脈と低血圧から循環血液量減少性ショックの前段階と判断。3. 報告 (SBAR): 「S(状況):急性膵炎で入院中の患者さんが血圧90台、脈拍110台です。B(背景):中等症膵炎でICU管理中。A(アセスメント):循環血液量減少の兆候と捉えています。R(提案):輸液の増量と昇圧薬の準備をお願いします。」4. 介入: 指示に基づき乳酸リンゲル液を急速投与開始。経鼻胃管挿入の準備。疼痛に対してはペチジンの投与を検討(医師へ提案)。酸素投与(2L/分)。
- 3患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)転倒・転落予防: 安静指示が出ているが、疼痛で不穏になることもあるため、ベッド柵の使用とナースコールの徹底。カテーテル関連感染予防(中心静脈ライン、尿道カテーテル)。肺水腫に注意: 大量輸液により、特にARDS合併リスクが高い患者では肺水腫を来す可能性があるため、呼吸音とSpO2の頻回なモニタリングが必須。急変時は直ちに医師へ連絡。
看護プロトコル: 観察項目: バイタルサイン(1時間ごと)、尿量(1時間ごと、30mL/h未満なら報告)、CVP(指示に応じて)、12誘導心電図(心嚢液貯留や心筋虚血の有無)、血糖(急性膵炎で高血糖を来すことがある)。報告基準: 血圧<90mmHg、尿量<30mL/h、SpO2<94%、腹痛の増強。記録のポイント: 疼痛スコア(NRS)、輸液バランス(I/O)、腹部所見の経時的変化。
先輩看護師の一言: 「急性膵炎の患者さんは、『見た目以上に重症』と覚えておいてください。最初は元気に見えても、急に血圧が下がってショックになることがあります。国試で『輸液』と出たら、それは『循環血液量を保つ』という最も大切な命綱だと思ってくださいね。現場で最初に異変に気づくのは、ベッドサイドにいる看護師のあなたです!」
- 急性膵炎 (Acute Pancreatitis) — 膵酵素の自己消化により膵臓自体が炎症を起こす疾患。激烈な上腹部痛と背部痛が特徴で、重症化すると全身性炎症反応症候群 (SIRS) や多臓器不全 (MODS) を引き起こす。
- 循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) — 血管内の血液量が減少し、心拍出量が低下して臓器灌流が保てなくなる状態。急性膵炎では炎症性渗出による血漿喪失が主な原因。
- 輸液療法 (Fluid Therapy) — 血管内の水分・電解質バランスを補正する治療。急性膵炎の初期治療では、晶質液(乳酸リンゲル液など)を積極的に投与し、ショックを予防する。
- SIRS (全身性炎症反応症候群) — 感染症や非感染性の侵襲(外傷、熱傷、膵炎など)によって全身に過剰な炎症反応が生じた状態。急性膵炎の重症化の鍵となる病態。
- 自己消化 — 膵臓で産生された消化酵素(特にトリプシン)が、何らかの原因で膵管内で活性化され、膵実質自体を消化してしまう現象。急性膵炎の根本的な病態。
MyMerciで看護師国家試験を完全対策
過去問と詳しい解説を無料で。弱点を分析し、進捗を管理してより効率的に学習しましょう。
無料で始める
学習参考用です。実際の臨床は最新のガイドラインと所属機関のプロトコルに従ってください。