核心解説
この問題は、
肝硬変 (Liver Cirrhosis) に伴う
腹水 (Ascites) の看護計画を問うています。肝硬変では、肝機能低下によるアルブミン合成能の低下(膠質浸透圧の低下)と、門脈圧亢進症による腹腔内への体液貯留が生じます。看護の基本は、
最重要! 腹水の増減を客観的かつ継続的に評価することです。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 肝硬変による腹水の病態生理は、
低アルブミン血症 (Hypoalbuminemia) と
門脈圧亢進症 (Portal Hypertension) が中心です。これにより血管内から腹腔内へ水分が漏出し、有効循環血液量が減少します。この状態を評価する最も基本的で侵襲の少ない指標が、体重と腹囲の毎日の測定です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 選択肢④「体重と腹囲を毎日測定する」が正解です。体重は体内の水分量の変動を鋭敏に反映し、腹囲は腹水の貯留量を直接的に評価できます。これにより、治療効果の判定や増悪の早期発見が可能になります。記録は毎日同じ条件(朝食前、排尿後など)で行うことが重要です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①「水分摂取量を積極的に増加させる」:
混同注意! 腹水がある場合、水分貯留傾向にあるため、水分摂取量は制限されることが一般的です(1日500~1000mL程度の制限が行われることもあります)。「積極的に増加」は逆効果です。
- ②「腹水穿刺後は安静度を制限しない」: 腹水穿刺後は、穿刺部位の止血や感染予防、再貯留の予防のために安静が必要です。穿刺後は少なくとも数時間の安静臥床が推奨されます。
- ③「食塩制限は1日10g以下とする」:
混同注意! 通常の日本人の食塩摂取量(約10g/日)と混同しないでください。腹水・浮腫がある肝硬変患者では、
1日5~7g以下 の厳格な食塩制限が必要です。10gでは制限としては不十分です。
- ⑤「利尿薬投与中は尿量測定を省略する」:
最重要! 利尿薬(特にスピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬)投与中は、脱水や電解質異常(特に高カリウム血症)のリスクがあるため、尿量測定は必須の観察項目です。省略は重大な医療事故につながりかねません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 肝硬変の腹水管理では、体重・腹囲測定に加えて、
バイタルサイン (Vital Signs)、
浮腫 (Edema) の程度(特に下腿)、
血清アルブミン値 (Serum Albumin)、
電解質 (Electrolytes) の評価も重要です。また、
混同注意! 肝硬変と
ネフローゼ症候群 (Nephrotic Syndrome) はどちらも低アルブミン血症と浮腫を来しますが、原因臓器(肝 vs 腎)と治療(アルブミン製剤 vs ステロイド)が異なるため、比較整理しておきましょう。
概念整理: 肝硬変の腹水病態は「低アルブミン血症(膠質浸透圧低下)」と「門脈圧亢進症」の2つが基本。看護アセスメントの基本は、体重・腹囲・浮腫・バイタルサイン・尿量の5項目を毎日評価すること。
一目で比較!:
| 疾患 | 浮腫の原因 | 主な治療 | 看護のポイント |
|---|
| 肝硬変 | 低アルブミン血症 + 門脈圧亢進 | 食塩制限 (5-7g/日) 利尿薬 アルブミン製剤 | 肝性脳症の観察 出血傾向の観察 |
| ネフローゼ症候群 | 低アルブミン血症 (尿中漏出) | ステロイド 免疫抑制薬 食塩制限 | 感染予防 血栓症予防 |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 体重・腹囲・浮腫の程度を毎日同じ条件で測定・記録する。バイタルサイン、尿量、意識レベル(肝性脳症の兆候)も同時に確認。
-
看護診断: 「体液過剰 (Excess Fluid Volume)」または「体液量過多 (Risk for Imbalanced Fluid Volume)」が優先される。
-
計画・実施: 食塩制限食の提供、水分管理(指示に基づく)、皮膚の清潔と保湿(浮腫による皮膚脆弱性への対応)、腹囲測定時のメモリ位置の統一。
-
評価: 体重減少、腹囲減少、浮腫軽減、尿量増加(利尿薬効果)、電解質正常維持。
暗記のコツ: 「肝硬変の腹水ケアは
5つの測定:体重・腹囲・浮腫・バイタル・尿量」と覚えましょう。また、「食塩制限は
5〜7g(ごーなな)」と語呂合わせで覚えると便利です。
国試頻出ポイント: 肝硬変の合併症(腹水、食道静脈瘤、肝性脳症)の看護は頻出。特に「食塩制限量」「水分制限量」「安静度」「穿刺後のケア」は毎年どこかで出題されています。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(食塩制限量は?)だけでなく、「肝硬変患者の体重が1週間で3kg増加した。どのような状態が考えられるか?」といった状況設定問題に発展することが多いです。そのため、数値だけでなく「なぜその数値になるのか」を病態生理から理解しておくことが重要です。