核心解説
この問題は、
腹部フィジカルアセスメント (Abdominal Physical Assessment) の基本的な実施順序を問うています。腹部は他の部位と異なり、
聴診 (Auscultation) を触診 (Palpation) や打診 (Percussion) よりも先に行うという重要なルールがあります。これは、触診や打診によって腸管が刺激され、腸蠕動音 (Bowel Sounds) が変化してしまうのを防ぐためです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
腹部アセスメントの標準的な手順は、
視診 (Inspection) → 聴診 (Auscultation) → 打診 (Percussion) → 触診 (Palpation) の順です(IAPPの順序)。まず「視診」で腹部全体の形状(膨隆の程度や左右対称性)、皮膚の色調、手術創や発疹の有無、呼吸に伴う動きなどを観察します。
最重要! 視診後は、蠕動音に影響を与える前にすぐに聴診を行います。その後、打診でガスや臓器の状態を評価し、最後に最も刺激の強い触診を行います。問題文では「最初に行うべきこと」と問われているため、
腹部の視診 (Inspection of the Abdomen) が正解です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番の腹部の触診や③番の圧痛点の確認は、アセスメントの最終段階で行うべきであり、最初に行うと腸蠕動音に影響を与えるため不適切です。
④番の腹部の打診も、視診と聴診の後に行う手順であり、最初に行うものではありません。
⑤番の腹部の聴診はアセスメントの中で非常に重要な項目ですが、その前に視診で腹部の全体的な状態を把握することが基本です。視診なしにいきなり聴診器を当てるのは、全体像を捉え損なう可能性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
腹部フィジカルアセスメントの順序は、一般身体診察の基本手順(視診・触診・打診・聴診)とは異なる点に注意が必要です。特に聴診を触診の前に行うのは腹部の特徴です。また、腹部四象限 (Four Quadrants) や九分割法 (Nine Regions) を用いて、症状や所見の位置を正確に記録するスキルも重要です。
概念整理: 腹部フィジカルアセスメントの基本手順は、IAPP(Inspection → Auscultation → Percussion → Palpation)の順序である。触診や打診は腸蠕動を変化させるため、聴診を先行させる。
一目で比較!:
| 部位 | 基本アセスメント順序 | 理由 |
| 胸部・背部 | 視診 → 触診 → 打診 → 聴診 | 肺音・心音の聴診は触診や打診の影響を受けにくい |
| 腹部 | 視診 → 聴診 → 打診 → 触診 | 触診・打診が腸蠕動音(聴診所見)に影響を与えるため |
看護過程ポイント: アセスメントでは、患者の「腹部膨満感」という主観的情報(S)に対し、客観的情報(O)として視診で腹部の膨隆の程度、皮膚の光沢、呼吸様式を観察し、続いて聴診で蠕動音の有無や性質(金属音・減弱など)を評価する。
暗記のコツ: 腹部アセスメントの順序は「
見て(視診)から、聞いて(聴診)、叩いて(打診)、触る(触診)」と覚えましょう。他の部位とは「聴診と打診」の順序が逆になるのがポイントです。
国試頻出ポイント: 腹部のフィジカルアセスメント手順は、毎年のように出題される基本事項です。単に順序を覚えるだけでなく、「なぜその順序なのか(触診が蠕動音を変化させるから)」という根拠まで理解しておくことで、応用問題にも対応できます。
出題パターン注意!: 例えば「イレウス(腸閉塞)が疑われる患者へのアセスメントで最初に行うことは?」というように、具体的な疾患名が付いた形で出題されることもあります。基本手順をしっかり押さえておきましょう。