核心解説
この問題は、心電図モニタリングにおける不整脈の鑑別診断を問うています。特に、
頻脈 (Tachycardia) の分類において、
QRS波の幅 (QRS duration) と
規則性 (Regularity)、そして
P波の有無 (Presence of P waves) が鑑別の鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 発作性上室性頻拍 (Paroxysmal Supraventricular Tachycardia, PSVT) は、
房室結節 (AV node) や心房内の異所性興奮、あるいは副伝導路を介したリエントリー性頻拍であり、心拍数は毎分150~250回と非常に速く、規則的です。QRS波は心室を順行性に興奮させるため、心室の脱分極は通常経路で行われることから、
QRS幅は狭い (0.12秒未満) のが特徴です。頻拍中はP波がQRS波に重なったり、T波に埋もれて不明瞭となるため「確認できない」という表現になります。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
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①番: 心室頻拍 (Ventricular Tachycardia, VT):
混同注意! VTは心室起源の頻脈であり、QRS波は心室筋から直接興奮が伝わるため、
QRS幅が広い (0.12秒以上) のが特徴です。本症例の「QRS波が狭い」という所見に合致しません。
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②番: 洞性頻脈 (Sinus Tachycardia): これは
洞房結節 (SA node) からの正常な興奮が亢進した状態で、心拍数は通常100~150回/分程度です。150回/分以上になることもありますが、P波は先行して明確に確認でき、QRS波は狭いです。「P波が確認できない」という所見から除外されます。
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③番: 心房細動 (Atrial Fibrillation, AF): AFは心房の無秩序な興奮による不整脈で、
絶対性不整脈 (Irregularly irregular rhythm) が特徴です。P波は消失し、基線に細かいf波(細動波)が見られます。本症例の「規則的な頻脈」に合致しません。
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⑤番: 心房粗動 (Atrial Flutter, AFL): AFLは心房内のリエントリー性頻拍で、規則的な
鋸歯状波 (Sawtooth wave/F波) が特徴です。房室伝導比が2:1や3:1などの場合、心室拍は規則的になりますが、P波の代わりにF波が確認できるため、「P波が確認できない」という記述とは合致しません。
関連概念の整理 (Related Concepts): 頻脈性不整脈の鑑別は、「QRS幅は広いか狭いか(心室起源か上室起源か)」と「規則的か不規則か」の2軸で整理すると理解しやすいです。PSVTと洞性頻脈の鑑別では、発症・停止の様式(PSVTは突発性、洞性頻脈は徐々に変化)も重要です。
概念整理:
頻脈性不整脈 (Tachyarrhythmias) の鑑別フローチャート:①QRS幅が広い(0.12秒以上)→ 心室頻拍 (VT) または上室性頻拍+脚ブロック。②QRS幅が狭い(0.12秒未満)→ 規則的か? 規則的:PSVT、心房粗動(伝導比一定)、洞性頻脈。不規則:心房細動 (AF)、心房粗動(伝導比変動)。
一目で比較!:
| 不整脈 | 心拍数 | 規則性 | QRS幅 | P波 |
|---|
| PSVT | 150-250 | 規則的 | 狭い | 不明瞭/欠如 |
| 心室頻拍 | 100-250 | 比較的規則的 | 広い | 房室解離 |
| 心房細動 | 通常100-160 | 不規則 | 狭い | 消失 (f波) |
| 洞性頻脈 | 100-150 | 規則的 | 狭い | 明瞭に存在 |
看護過程ポイント:
アセスメント:モニター心電図の正確な判読(QRS幅、規則性、P波の有無)と同時に、
バイタルサイン (Vital Signs)(特に血圧低下の有無)、意識状態、胸痛・呼吸困難・冷汗などの症状の有無を評価。PSVTは突然発症し、血行動態が不安定になることがある。
介入:血行動態が安定していれば迷走神経刺激法(バルサルバ法、アイスマッサージ)の介助。不安定な場合は医師の指示のもと、
アデノシン三リン酸 (ATP/Adenosine) の急速静注準備や同期カルディオバージョンの準備を行う。
暗記のコツ: 「狭いQRS、規則的なドドド、P波は隠れて不明瞭→PSVT(パーッと急に発症する上室性)」とリズムで覚える。心室頻拍は「広いQRS(ワイドQRS)」がポイント。
国試頻出ポイント: 不整脈の心電図波形の特徴と、それに応じた看護介入(特に薬剤と電気的処置)の組み合わせ問題が頻出。PSVTの治療薬としてアデノシンATP、不安定型に対するカルディオバージョンは必修。
出題パターン注意!: 「心拍数180/分、規則的、QRS幅0.08秒、意識清明」という状況で、まず行うべき看護ケアを問う問題に発展。迷走神経刺激法か、アデノシン投与の準備か、医師への報告か、といった優先順位を問う状況設定問題への対応が必要。