核心解説
この問題は、
重症患者の早期離床 (Early Mobilization) の目的と効果を問うています。早期離床とは、集中治療室(ICU)などの重症患者に対して、安全を確保した上で段階的にベッド上での体位変換から端座位、立位、歩行へと進める介入のことです。近年のエビデンスにより、その効果は
廃用症候群(Disuse Syndrome)の予防 や
全身の機能維持・改善 にあることが明らかになっています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
②
最重要! 深部静脈血栓症(DVT)の予防 は、早期離床の重要な目的の一つです。重症患者は長期臥床により下肢の静脈還流が低下し、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが高まります。早期離床により
下肢の筋ポンプ作用(Muscle Pump) を活性化し、静脈還流を促進することでDVTの発症を予防します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
せん妄の発症率の上昇 →
混同注意! 早期離床はむしろ
せん妄(Delirium) の予防効果が報告されています。早期離床により覚醒状態が維持され、見当識障害の改善につながります。発症率を上昇させるわけではありません。
③
筋力低下の促進 →
混同注意! 早期離床は筋力低下を予防・改善するための介入です。筋力低下を促進するのは長期臥床(廃用)の影響であり、早期離床はその逆の効果を持ちます。
④
心拍出量の低下防止 → 早期離床の直接的・最優先の目的ではありません。適切な離床は循環動態を安定させる方向に働きますが、
心拍出量(Cardiac Output)の維持 は主に輸液療法や薬物療法(強心薬など)で管理されます。
⑤
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の治療 →
混同注意! 早期離床は人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防効果は期待できますが、治療法ではありません。VAPの治療は抗菌薬投与や気管吸引などの呼吸管理が中心です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
早期離床は
ABCDFバンドル(ICU-AW予防) の一部として位置づけられます。A(Awakening:鎮静中断)、B(Breathing:自発呼吸トライアル)、C(Coordination:鎮静と呼吸の調整)、D(Delirium:せん妄管理)、F(Early Mobility:早期離床)の頭文字を取ったもので、重症患者の転帰改善に寄与します。
概念整理:
早期離床 は重症患者の廃用症候群(筋萎縮、関節拘縮、DVT、褥瘡、呼吸器合併症)を予防し、機能維持・回復を促進する介入である。DVT予防は下肢静脈還流促進による効果。
一目で比較!:
| 介入 | 主な目的 | 主な効果 |
|---|
| 早期離床 | 廃用症候群予防・機能維持 | DVT予防 筋力維持 せん妄予防 人工呼吸器離脱促進 |
| 体位変換 | 褥瘡予防 呼吸状態改善 | 皮膚血流維持 無気肺予防 喀痰排出促進 |
| 他動的関節可動域訓練 | 関節拘縮予防 | 関節可動域維持 筋緊張緩和 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 早期離床開始前に循環動態(血圧・心拍数)、呼吸状態(SpO2、呼吸数)、鎮静レベル(RASSスコア)、筋力(MRCスコア)を評価。
計画: 医師の指示のもと、段階的な離床プログラム(ベッドアップ30°→端座位→立位→歩行)を作成。
実施: バイタルサインをモニタリングしながら安全に実施。
評価: 離床前後のバイタルサイン変化、疲労度、めまいの有無を確認。
暗記のコツ: 「早期離床で防げるもの」=「寝たきりで悪くなるもの」と覚える。長期臥床の合併症(筋萎縮、DVT、せん妄、無気肺、褥瘡、便秘)の逆を考えると理解しやすい。
国試頻出ポイント: 早期離床の目的(DVT予防、筋萎縮予防、せん妄予防)と禁忌(血行動態不安定、頭蓋内圧亢進、重症不整脈)の両方を押さえる。単純暗記ではなく、なぜ禁忌となるかの病態生理も問われる。
出題パターン注意!: 「早期離床の効果として正しいものはどれか」のような知識問題に加え、「ICU入室中の患者への早期離床で看護師が注意すべきことはどれか」のような安全面を問う状況設定問題が出題される。