自律神経系の機能障害でみられる症状として適切なのはどれか。 | MyMerci
内部環境調節機能の障害
問題

自律神経系の機能障害でみられる症状として適切なのはどれか。

解説
起立性低血圧は、自律神経系の障害により体位変換時の血圧調節がうまくいかないために生じる代表的な症状である。深部腱反射亢進や病的反射は上位運動ニューロン障害、筋萎縮や線維束性収縮は下位運動ニューロン障害でみられる。

詳細解説

核心解説 この問題は、自律神経系 (Autonomic Nervous System) の機能障害によって生じる症候を問うています。自律神経系は、交感神経と副交感神経から構成され、心拍、血圧、消化、発汗、体温調節など生命維持に不可欠な 不随意機能 (Involuntary Functions) を制御しています。このシステムが障害されると、代表的な症状として 起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension)、発汗異常、排尿障害、便秘、瞳孔不同などが出現します。一方、選択肢にある線維束性収縮や筋萎縮は 下位運動ニューロン障害 (Lower Motor Neuron Lesion)、深部腱反射亢進や病的反射は 上位運動ニューロン障害 (Upper Motor Neuron Lesion) の徴候であり、これらは体性運動系の障害であることを明確に区別する必要があります。 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 起立性低血圧は、自律神経系、特に交感神経の遠心性線維が障害されることで、体位変換(臥位から立位)時に末梢血管が十分に収縮せず、重力に抗して脳への十分な血流を維持できなくなる状態です。これにより、立ちくらみ、眼前暗黒感、失神などの症状が出現します。これは 自律神経障害 (Autonomic Neuropathy) の代表的な症候であり、糖尿病性神経障害やパーキンソン病、シャイ・ドレーガー症候群(多系統萎縮症)などで高頻度にみられます。 誤答の分析 (Distractor Analysis): 混同注意! ① 線維束性収縮 (Fasciculation):筋線維の自発的な収縮で、皮膚表面に「ピクピク」と見える現象です。これは 下位運動ニューロン障害 (LMN) の徴候であり、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) や末梢神経障害でみられます。自律神経系の障害ではありません。 ② 筋萎縮 (Muscle Atrophy):筋肉の体積が減少する状態で、やはり 下位運動ニューロン障害 (LMN) や長期間の不使用(廃用性萎縮)で生じます。自律神経の機能障害では直接起こりません。 ④ 深部腱反射の亢進 (Hyperreflexia):腱反射が異常に強く出る状態で、これは 上位運動ニューロン障害 (UMN) の徴候です。脳卒中や脊髄損傷などでみられます。自律神経障害ではむしろ反射は低下または消失することが多いです。 ⑤ 病的反射の出現 (Pathological Reflex):代表的なものに バビンスキー反射 (Babinski Sign) があります。これは錐体路(上位運動ニューロン)の障害で出現する原始反射であり、自律神経系の障害ではみられません。 関連概念の整理 (Related Concepts): 自律神経障害のその他の症候として、発汗障害 (Anhidrosis / Hyperhidrosis)排尿障害 (Neurogenic Bladder)便秘 (Constipation) または下痢、瞳孔異常 (Anisocoria / Horner症候群)心拍変動の減少(心臓自律神経障害)などがあります。特に 糖尿病 (Diabetes Mellitus) の長期合併症としての自律神経障害は、無痛性心筋梗塞の原因となるため、看護師としての注意深い観察が求められます。
概念整理:
障害部位代表的な症候
自律神経系起立性低血圧、発汗異常、排尿障害、便秘、瞳孔異常、心拍変動減少
上位運動ニューロン (UMN)深部腱反射亢進、病的反射(バビンスキー)、痙性麻痺、筋緊張亢進
下位運動ニューロン (LMN)線維束性収縮、筋萎縮、弛緩性麻痺、腱反射消失・低下

一目で比較!: - 混同注意! 「起立性低血圧」 vs 「失神 (Syncope)」:起立性低血圧は自律神経障害による血圧調節不全が原因。失神は原因が多岐にわたり(心原性、神経原性、反射性)、起立性低血圧は失神の原因の一つです。 - 混同注意! 「自律神経障害」 vs 「体性神経障害」:自律神経は内臓・血管・腺などを支配(不随意)。体性神経(運動・感覚)は骨格筋と皮膚を支配。障害される症状が全く異なります。
看護過程ポイント: - アセスメント: 起立性低血圧が疑われる患者では、臥位・座位・立位での血圧測定 を必ず実施。収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合は陽性と判断。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」「身体的可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」 - 看護介入 (Nursing Intervention): 急な体位変換を避け、動作は「ゆっくり」と。弾性ストッキングの着用、十分な水分摂取、塩分摂取の調整(医師の指示に基づく)、薬剤(ミドドリンなど)の副作用観察。 - 評価 (Evaluation): 患者が安全に動作でき、めまいや失神なく生活できるか。
暗記のコツ: 「律神経は 分でコントロールできない → 起立性低血圧(立つと血圧が下がる)、発汗、排尿など、意識せずに働く機能の障害を覚える!」 「上のニューロン(UMN)は反射を強くする(亢進、病的反射)。下のニューロン(LMN)は筋に栄養を送る線維が切れるので萎縮する(筋萎縮、線維束性収縮)。」
国試頻出ポイント: 看護師国家試験では、糖尿病性神経障害 (Diabetic Neuropathy) の合併症としての自律神経障害と、それに伴う看護ケア(転倒予防、フットケア、排便ケア)が頻出。また、パーキンソン病 (Parkinson's Disease)多系統萎縮症 (Multiple System Atrophy) での自律神経症状もよく問われます。運動ニューロン障害の症候とセットで、神経系全体の障害部位と症状の対応をしっかり整理しておきましょう。
出題パターン注意!: 「60歳男性、糖尿病歴15年。下肢のしびれ感あり。今朝、立ち上がった時に眼前暗黒感を認めた。最も考えられる障害部位はどれか。」のような状況設定問題で、自律神経障害を選ばせるパターンが非常に多いです。単独知識だけでなく、「この症状が出たらどのような病態が隠れているか」を考えられるようにしましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは糖尿病内科病棟の看護師です。70代男性、糖尿病歴20年の患者さんが、血糖コントロール目的で入院しました。既往歴に糖尿病性腎症、網膜症があります。夜間のトイレ歩行時に、ベッドから立ち上がった直後に「くらっときた」と訴え、ベッドサイドにしゃがみ込みました。バイタルサインは、臥位血圧 134/78mmHg、脈拍 72回/分。立位血圧は 96/52mmHg、脈拍 88回/分と上昇しています。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察: まず患者さんを安全な場所(ベッド上)に休ませ、転倒していないか確認。 バイタルサイン(特に血圧と脈拍の体位変換による変化)、意識レベル、顔色、発汗の有無を観察。患者さんの「いつもと違う」という訴えを尊重する。 2. アセスメント: 上記の数値は、収縮期血圧が38mmHg低下しており、起立性低血圧の診断基準(20mmHg以上)を満たします。糖尿病性自律神経障害による血圧調節不全とアセスメント。同時に、低血糖の可能性も否定できないため、血糖測定も実施。 3. 報告 (SBAR): - S (状況): 「○○様、夜間トイレ歩行時に立ちくらみを訴えられました。転倒はありません。」 - B (背景): 「糖尿病歴20年、自律神経障害のリスクがあります。」 - A (アセスメント): 「起立性低血圧による失神発作とアセスメントしました。低血糖の可能性も考慮し、血糖値は120mg/dlで異常ありませんでした。」 - R (提案): 「夜間の安全対策として、ポータブルトイレの使用またはナースコールでの介助依頼を提案します。また、弾性ストッキングの着用と、主治医への昇圧剤の処方依頼についてご検討ください。」 4. 介入と評価: 最重要! すぐに転倒防止策を強化。ベッドサイドにポータブルトイレを設置。弾性ストッキングを装着。患者と家族に、急な立ち上がりを避け、動作は「ゆっくり」と行うよう指導。夜間はナースコールを必ず押すよう徹底。数日後、血圧の変動が改善したかを評価する。
看護プロトコル: - 観察項目: 臥位・座位・立位の血圧と脈拍、めまい・眼前暗黒感・失神の有無、発汗状態、尿量、排便状態、血糖値、内服薬(特に降圧薬、利尿薬、昇圧薬)の効果と副作用。 - 報告基準 (SBAR): 新たな起立性低血圧の出現、収縮期血圧が立位で20mmHg以上低下、転倒・失神の発生、意識変容を伴う場合。 - 記録のポイント: 体位変換時の血圧測定値を具体的に記録。患者の訴え(「ふらつく」「目の前が暗くなる」)をそのまま記載。転倒予防策の内容と指導状況、患者の反応を記録。 - 患者・家族への説明: 「急に立ち上がると血圧が下がってフラフラすることがあります。朝起きるときやトイレに行くときは、まずベッドの端に座って1分待って、それからゆっくり立ち上がるようにしましょう。もしフラフラしたら、無理に歩かずにその場でしゃがむか、近くの壁やベッドに寄りかかってください。」
先輩看護師の一言: 「自律神経障害の患者さんは、自分ではコントロールできない症状で悩んでいます。特に起立性低血圧は転倒のリスクが高く、大腿骨頸部骨折などの大きな外傷につながることも。国試では知識として覚えるだけでなく、『この患者さんにどんな指導が必要か』『どんな環境調整が安全か』まで想像できると、現場で役立つ力になりますよ!『ゆっくり』の一言指導を徹底しましょう。」

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