核心解説
この問題は、
ホルネル症候群 (Horner Syndrome) の典型的な4徴候を問うています。ホルネル症候群は、
頸部交感神経幹 (Cervical Sympathetic Trunk) の障害によって生じる症候群です。交感神経は瞳孔散大筋、眼瞼挙筋(眼瞼ミュラー筋)、眼窩平滑筋、顔面の発汗腺を支配しています。したがって、この神経が障害されると、交感神経の機能が低下(麻痺)することで、以下の4つの症状が出現します。
1.
縮瞳 (Miosis): 瞳孔散大筋の麻痺により、瞳孔括約筋(副交感神経支配)が優位になり、瞳孔が縮小します。
2.
眼瞼下垂 (Ptosis): 眼瞼挙筋(ミュラー筋)の麻痺により、上まぶたが下がります。
3.
眼球陥没 (Enophthalmos): 眼窩平滑筋の麻痺により、眼球が眼窩内にわずかに引っ込んで見えます。
4.
発汗低下 (Anhidrosis): 顔面(特に患側)の交感神経性発汗が障害され、皮膚が乾燥します。
これら4つの症状が揃うことで、ホルネル症候群と診断されます。原因としては、肺尖部腫瘍(パンコースト腫瘍)、頸部リンパ節腫脹、頸部外傷、脳幹梗塞(ワレンベルグ症候群)などが代表的です。
最重要! 縮瞳と眼瞼下垂の組み合わせが、視診での最も重要な発見ポイントです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④番です。選択肢④は「縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥没、発汗低下」と、ホルネル症候群の4徴候を完全に満たしています。交感神経障害により、瞳孔は散大せずに縮小し、まぶたは下がり、眼球は陥没し、発汗は低下する、という一連の病態を正確に表しています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
- ①番(散瞳、眼瞼下垂、眼球陥没、発汗低下): 散瞳(Mydriasis)は交感神経刺激症状であり、ホルネル症候群では逆に縮瞳がみられます。瞳孔散大筋が麻痺するため、瞳孔は開きません。
- ②番(縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥没、発汗亢進): 発汗亢進(Hyperhidrosis)は交感神経が刺激された時にみられます。ホルネル症候群は交感神経の機能低下なので発汗は低下します。
- ③番(散瞳、眼瞼下垂、眼球突出、発汗亢進): 散瞳と発汗亢進は上記同様に誤りです。眼球突出(Exophthalmos)は、甲状腺眼症(バセドウ病)などでみられる所見であり、ホルネル症候群では眼球は陥没します。
- ⑤番(縮瞳、眼瞼下垂、眼球突出、発汗亢進): 眼球突出と発汗亢進が誤りです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ホルネル症候群と対比して覚えたいのは、
交感神経刺激症状です。例えば、
アドレナリン作動薬の点眼や、
甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism) では、瞳孔散大、眼瞼裂開大(まぶたが上がる)、眼球突出、発汗亢進がみられます。ホルネル症候群は、これらの完全な「逆」の症状が出現すると理解すると覚えやすいでしょう。また、原因となる病変の位置を考えることも重要で、
肺尖部腫瘍 (Pancoast Tumor) は国試でも頻出です。
概念整理:
ホルネル症候群 =
頸部交感神経幹の障害 → 交感神経機能低下 → 縮瞳・眼瞼下垂・眼球陥没・発汗低下。症状は「閉じて、引っ込んで、乾く」と覚える。
一目で比較!
| 症候 | 交感神経刺激(例: アドレナリン点眼、甲状腺機能亢進症) | 交感神経障害(例: ホルネル症候群) |
|---|
| 瞳孔 | 散瞳(開く) | 縮瞳(閉じる) |
| 眼瞼 | 開大(見開く) | 下垂(下がる) |
| 眼球 | 突出(飛び出す) | 陥没(引っ込む) |
| 発汗 | 亢進(汗をかく) | 低下(乾く) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 患側の瞳孔径、眼瞼裂の大きさ、眼球の位置、顔面の発汗状態を観察。原因疾患の有無(特に肺尖部腫瘍による咳嗽、胸痛、上肢のしびれ)を確認。
看護診断: 視覚障害のリスク状態、身体像の乱れ(顔面非対称による)。
介入: 原因疾患の治療が優先される。眼瞼下垂による視野障害があれば、安全な環境調整を実施。
暗記のコツ: ホルネル症候群の4徴は「
縮・垂・没・低(縮瞳、下垂、陥没、低下)」と覚えましょう。また、英語の頭文字を取って「
MPEA(Miosis, Ptosis, Enophthalmos, Anhidrosis)」も有名です。
国試頻出ポイント: 症状の組み合わせ問題として出題される他、
肺尖部腫瘍(パンコースト腫瘍)や
脳幹梗塞(ワレンベルグ症候群)の随伴症状として、あるいは
頚部交感神経節ブロックの合併症として問われることがあります。