50歳の男性。交通事故による頸髄損傷で第5頸髄(C5)レベル以下の完全麻痺と診断された。損傷後3週間経過したが、突然の頭… | MyMerci
内部環境調節機能の障害
問題

50歳の男性。交通事故による頸髄損傷で第5頸髄(C5)レベル以下の完全麻痺と診断された。損傷後3週間経過したが、突然の頭痛、発汗、顔面紅潮、血圧上昇がみられた。この患者に生じている可能性が最も高い病態はどれか。

解説
第6胸髄(Th6)より上位の脊髄損傷患者では、損傷レベル以下の侵害刺激(膀胱充満、便貯留など)により交感神経が過剰に興奮し、高血圧、頭痛、発汗、顔面紅潮などの症状が出現する。これを自律神経過反射(自律神経過緊張症候群)という。神経原性ショックは損傷急性期にみられる。

詳細解説

核心解説 この問題は、頸髄損傷 (Cervical Spinal Cord Injury) の経過中に発生する重篤な合併症である自律神経過反射 (Autonomic Dysreflexia) の病態と症状を問うています。特に、第6胸髄 (Th6) より上位の脊髄損傷で発生リスクが高く、症状を早期に発見し適切に対処しないと、脳出血や死亡に至る危険性があるため、看護師には緊急対応能力が求められます。 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 本症例はC5レベル完全麻痺で損傷後3週間(亜急性期)です。突然の頭痛、発汗、顔面紅潮、血圧上昇は、自律神経過反射 (Autonomic Dysreflexia) の古典的な4徴候です。これは、損傷レベル以下の侵害刺激(例:膀胱充満、便貯留、褥瘡、爪の陥入など)が脊髄反射弓を介して交感神経を過剰に興奮させ、損傷レベル以下の血管収縮と損傷レベル以上の代償性血管拡張を引き起こすことで発生します。この患者では、膀胱留置カテーテルの閉塞や便秘が誘因として最も疑われます。 誤答の分析 (Distractor Analysis): 混同注意! ①番の肺塞栓症は、突然の胸痛や呼吸困難、低酸素血症が主体で、顔面紅潮や発汗は典型的ではありません。②番の神経原性ショックは損傷急性期(数時間~数日)にみられる病態で、血管運動中枢との連絡遮断による低血圧徐脈が特徴であり、高血圧とは対極です。③番の起立性低血圧は臥位から座位・立位への体位変換時に血圧が低下する病態で、本例の高血圧とは矛盾します。④番の迷走神経反射は徐脈と低血圧を特徴とし、排尿・排便時の緊張により誘発されることがありますが、本例の血圧上昇とは全く逆の病態です。 関連概念の整理 (Related Concepts): 脊髄損傷 (Spinal Cord Injury) の合併症を病期で整理しましょう。急性期(数時間~数日): 神経原性ショック (Neurogenic Shock)脊髄ショック (Spinal Shock)(弛緩性麻痺、反射消失)。亜急性期~慢性期(損傷後数週間~): 自律神経過反射 (Autonomic Dysreflexia)。長期合併症: 褥瘡、変形性関節症、異所性骨化、慢性疼痛、呼吸器合併症(特にC4以上)。
概念整理: 自律神経過反射は、Th6以上の脊髄損傷者に特有の高血圧緊急症です。刺激は損傷レベル以下に存在し、症状は主に損傷レベル以上に出現します(頭痛、顔面紅潮、発汗)。
一目で比較!:
病態血圧心拍数顔面・皮膚発生時期
自律神経過反射急上昇徐脈紅潮・発汗亜急性~慢性期
神経原性ショック低下徐脈温かい・乾燥急性期
起立性低血圧低下頻脈蒼白慢性期

看護過程ポイント: アセスメント: バイタルサイン(特に血圧の急上昇)、症状の出現パターン、誘因の探索(膀胱・直腸・皮膚)。看護診断: [非効果的脳組織灌流リスク]、[急激な血圧上昇に関連した損傷リスク]。計画・実施: 即時対応として、患者を座位にする → 誘因の除去(カテーテル閉塞解除、便摘除など) → それでも改善なければ医師報告・降圧薬投与。評価: 血圧が正常範囲に戻り、頭痛・発汗が消失する。
暗記のコツ: 「サボるな!自律神経反射」と覚えましょう。「サ」: 座位にする、「ボ」: 膀胱チェック、「る」: ルート(カテーテル)確認、「な」: 直腸(排便)確認。「反射」で自律神経過反射を想起。
国試頻出ポイント: 「Th6より上位の脊髄損傷」「突然の高血圧+頭痛」「膀胱充満が最大の誘因」「緊急時の対応(座位+誘因除去)」の4点がセットで出題されます。状況設定問題では、看護師の初期対応の優先順位が問われます。
出題パターン注意!: 単純な症状と病名の組み合わせから、事例問題として「バイタルサインの変化を読み取り、看護師が最初に行うべき行動はどれか」という形に発展します。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 30代男性、C6完全麻痺。リハビリテーション病棟で車椅子座位訓練中。突然「頭が割れそうに痛い」と訴え、顔面が紅潮し、額に冷や汗を認めた。バイタルサインは血圧 220/120 mmHg、脈拍 48回/分、呼吸数 20回/分。あなたはこの患者さんにどのような初期対応をしますか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! 1. 安全確保と急変対応: 直ちに患者を座位(または頭部挙上)にする。これは、血圧上昇による脳出血リスクを軽減するためです。2. 誘因の迅速なアセスメントと除去: まず膀胱を疑います。留置カテーテルがあれば、カテーテルの閉塞や折れ曲がりがないか確認し、バルーンを触診。閉塞があれば、生理食塩水でフラッシュするか、新しいカテーテルに交換します。自己導尿中であれば、導尿を試みます。膀胱が空であれば、次に直腸を疑い、便貯留がないか確認し、必要に応じて摘便を行います(ただし、摘便そのものが刺激となる場合もあるため、医師指示の下で行う)。3. 皮膚・その他の刺激の確認: 褥瘡の悪化、衣服の締め付け、爪の陥入、熱傷などがないか確認。4. モニタリングと報告: 血圧を2~5分ごとに測定。上記処置で改善しない場合(通常数分以内に改善)、直ちに医師に報告し、降圧薬(例:ニフェジピンカプセル舌下投与、硝酸薬貼付など)の指示を仰ぎます。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 絶対禁忌! この状態で安易に降圧薬を投与する前に、必ず誘因を取り除くことを最優先します。誘因を除去せずに降圧薬で血圧だけ下げると、刺激が持続するため再上昇を繰り返し、血圧が不安定になります。また、患者を完全に臥位にすると、頭部への血流が増加し脳出血リスクが高まるため避けます。患者の医療者用の緊急対応カード(注意書き)をベッドサイドに掲示しておくことも重要です。
看護プロトコル: 観察項目: 血圧(特に収縮期血圧の急上昇)、心拍数(徐脈の有無)、頭痛の強さ(Numerical Rating Scale, NRS)、顔面紅潮・発汗の程度、誘因の有無(最終排尿・排便時間、カテーテル状況、褥瘡の状態)。報告基準(SBAR): S: 「自律神経過反射の症状が出現しました」B: 「C6完全麻痺の患者です」A: 「血圧220/120、脈拍48、顔面紅潮と激しい頭痛あり。膀胱カテーテルを確認中です」R: 「カテーテル閉塞が疑われます。対応後、再評価しますが、改善なければ降圧薬の指示をお願いします」。記録のポイント: 症状出現時刻、バイタルサイン、対応内容(誘因除去の有無と結果)、医師への報告時刻と指示内容、患者・家族への説明内容。
先輩看護師の一言: 「脊髄損傷の患者さんは、自分では損傷レベル以下の刺激に気づけないんだよね。だから、急に『頭が痛い』『気持ち悪い』と言い出したら、まず『自律神経過反射かも!』って疑ってほしい。特に膀胱は最大の誘因だから、『最後に排尿したのはいつ?』『カテーテルは詰まってない?』を必ずチェック!この対応が早いか遅いかで、患者さんの命に関わるからね。国試では症状と対応のセットを絶対に覚えよう!」

重要概念

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