核心解説
この問題は、
頸髄損傷 (Cervical Spinal Cord Injury) の経過中に発生する重篤な合併症である
自律神経過反射 (Autonomic Dysreflexia) の病態と症状を問うています。特に、
第6胸髄 (Th6) より上位の脊髄損傷で発生リスクが高く、症状を早期に発見し適切に対処しないと、
脳出血や死亡に至る危険性があるため、看護師には緊急対応能力が求められます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 本症例はC5レベル完全麻痺で損傷後3週間(亜急性期)です。突然の
頭痛、発汗、顔面紅潮、血圧上昇は、
自律神経過反射 (Autonomic Dysreflexia) の古典的な4徴候です。これは、損傷レベル以下の侵害刺激(例:膀胱充満、便貯留、褥瘡、爪の陥入など)が脊髄反射弓を介して交感神経を過剰に興奮させ、
損傷レベル以下の血管収縮と損傷レベル以上の代償性血管拡張を引き起こすことで発生します。この患者では、膀胱留置カテーテルの閉塞や便秘が誘因として最も疑われます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の肺塞栓症は、突然の胸痛や呼吸困難、低酸素血症が主体で、顔面紅潮や発汗は典型的ではありません。②番の神経原性ショックは損傷急性期(数時間~数日)にみられる病態で、血管運動中枢との連絡遮断による
低血圧と
徐脈が特徴であり、高血圧とは対極です。③番の起立性低血圧は臥位から座位・立位への体位変換時に血圧が低下する病態で、本例の高血圧とは矛盾します。④番の迷走神経反射は徐脈と低血圧を特徴とし、排尿・排便時の緊張により誘発されることがありますが、本例の血圧上昇とは全く逆の病態です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
脊髄損傷 (Spinal Cord Injury) の合併症を病期で整理しましょう。急性期(数時間~数日):
神経原性ショック (Neurogenic Shock) と
脊髄ショック (Spinal Shock)(弛緩性麻痺、反射消失)。亜急性期~慢性期(損傷後数週間~):
自律神経過反射 (Autonomic Dysreflexia)。長期合併症: 褥瘡、変形性関節症、異所性骨化、慢性疼痛、呼吸器合併症(特にC4以上)。
概念整理: 自律神経過反射は、Th6以上の脊髄損傷者に特有の
高血圧緊急症です。刺激は
損傷レベル以下に存在し、症状は主に
損傷レベル以上に出現します(頭痛、顔面紅潮、発汗)。
一目で比較!:
| 病態 | 血圧 | 心拍数 | 顔面・皮膚 | 発生時期 |
|---|
| 自律神経過反射 | 急上昇 | 徐脈 | 紅潮・発汗 | 亜急性~慢性期 |
| 神経原性ショック | 低下 | 徐脈 | 温かい・乾燥 | 急性期 |
| 起立性低血圧 | 低下 | 頻脈 | 蒼白 | 慢性期 |
看護過程ポイント:
アセスメント: バイタルサイン(特に血圧の急上昇)、症状の出現パターン、誘因の探索(膀胱・直腸・皮膚)。
看護診断: [非効果的脳組織灌流リスク]、[急激な血圧上昇に関連した損傷リスク]。
計画・実施: 即時対応として、患者を座位にする → 誘因の除去(カテーテル閉塞解除、便摘除など) → それでも改善なければ医師報告・降圧薬投与。
評価: 血圧が正常範囲に戻り、頭痛・発汗が消失する。
暗記のコツ: 「サボるな!自律神経反射」と覚えましょう。「サ」: 座位にする、「ボ」: 膀胱チェック、「る」: ルート(カテーテル)確認、「な」: 直腸(排便)確認。「反射」で自律神経過反射を想起。
国試頻出ポイント: 「Th6より上位の脊髄損傷」「突然の高血圧+頭痛」「膀胱充満が最大の誘因」「緊急時の対応(座位+誘因除去)」の4点がセットで出題されます。状況設定問題では、看護師の初期対応の優先順位が問われます。
出題パターン注意!: 単純な症状と病名の組み合わせから、事例問題として「バイタルサインの変化を読み取り、看護師が最初に行うべき行動はどれか」という形に発展します。