80歳女性。3日前から腹部全体の膨満感と便秘が続いている。昨夜から嘔吐を繰り返し、嘔吐物は黄褐色で悪臭を伴う。腹部は全体… | MyMerci
栄養の摂取・吸収・代謝機能の障害
問題

80歳女性。3日前から腹部全体の膨満感と便秘が続いている。昨夜から嘔吐を繰り返し、嘔吐物は黄褐色で悪臭を伴う。腹部は全体に膨満し、グル音が亢進している。腹部CTで小腸から大腸にかけての拡張と、大腸に多量のガスと便貯留を認めたが、明らかな閉塞部位は指摘できなかった。この患者の状態として最も考えられるのはどれか。

解説
高齢者で腹部膨満、便秘、嘔吐(悪臭ある黄褐色嘔吐物は腸内容物の逆流を示す)があり、CTで閉塞部位がないにもかかわらず全腸管の拡張を認める。腸雑音は亢進しているが、これは初期の代償性亢進であり、麻痺性イレウスでも初期には聴取されることがある。閉塞機転がないことから、腸管運動が停止した麻痺性イレウスが最も考えられる。高齢者では電解質異常や薬剤、感染症などが原因となる。

詳細解説

核心解説 この問題は、イレウス (Ileus) の病態鑑別を問うています。特に、高齢者の腹部膨満と嘔吐において、CTで明らかな閉塞部位を認めない ことが診断の鍵となります。イレウスは大きく「機械的イレウス(腸管の閉塞)」と「機能的イレウス(腸管運動の停止)」に分類されます。 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 本症例では、CTで「明らかな閉塞部位」がないにも関わらず、全腸管の拡張とガス・便貯留を認めています。これは、腸管の蠕動運動が停止した 麻痺性イレウス (Paralytic Ileus) の典型的な所見です。高齢者では、電解質異常(特に低カリウム血症)、薬剤(抗コリン薬、オピオイドなど)、感染症、腹部手術後 などが原因で発生しやすく、腸管内容物の停滞と内圧上昇により、悪臭を伴う嘔吐(腸内容物の逆流)をきたします。腸雑音は初期には亢進することがある(代償性) ため、腸雑音が亢進していても麻痺性イレウスを否定できません。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②番の単純性機械的イレウス は、腸管が物理的に狭窄や閉塞されている状態です。CTで閉塞部位が認められるため、本症例には該当しません。
③番の偽性腸閉塞 は、腸管運動障害による機能的な閉塞症状を示す点で麻痺性イレウスと類似しますが、通常は慢性経過をたどるか、特定の疾患に伴って生じます。急性発症の本症例では麻痺性イレウスがより適切です。
④番の虫垂炎 は、限局した炎症であり、腹部全体の膨満と多量のガス・便貯留は特徴的ではありません。
⑤番の絞扼性イレウス は、腸管がねじれて血行障害を伴う緊急疾患です。CTで腸管の拡張と閉塞部位がみられ、早期に 腹膜刺激症状やショック を呈します。本症例では閉塞部位を認めず、症状も比較的緩徐であるため考えにくいです。 関連概念の整理 (Related Concepts)
イレウスの分類と鑑別ポイントを押さえましょう。
分類原因CT所見腸雑音嘔吐
機械的イレウス腫瘍、癒着、ヘルニア嵌頓などによる物理的閉塞閉塞部位の確認、口側腸管の拡張亢進(金属音)→減弱閉塞部位より口側の内容物
麻痺性イレウス電解質異常、薬剤、炎症、手術後の腸管運動低下全腸管の拡張、閉塞部位なし減弱または消失(初期に亢進あり)腸内容物(黄褐色・悪臭)
絞扼性イレウス腸間膜の捻転による血行障害閉塞部位、腸管壁の肥厚・造影不良亢進から急激に消失暗赤色・血性(進行例)

概念整理: イレウスは「閉塞の有無」と「血行障害の有無」で分類される。CTで閉塞部位が確認できなければ、まず機能的イレウス(麻痺性イレウス)を考える。
一目で比較!: 麻痺性イレウス vs 機械的イレウス。腸雑音の質とCT所見(閉塞部位の有無)が最も重要な鑑別点。
看護過程ポイント: アセスメント:バイタルサイン、腹部所見(膨満、圧痛、腸雑音)、嘔吐物の性状(量、色、臭気)、排便状況、電解質(特にK)、薬剤歴。看護診断:腸管運動低下 / 体液量不足 / 誤嚥リスク。計画・実施:絶飲食、経鼻胃管(NGチューブ)挿入による減圧、輸液療法による脱水補正と電解質是正、安静保持、バイタルサインと腹部所見の経時的観察。評価:嘔吐の消失、腹部膨満の軽減、腸雑音の回復。
暗記のコツ: 「麻痺=閉塞なく動かない」と覚えましょう。CTで「閉塞がないのに腸がパンパンに膨れている」イメージが麻痺性イレウスです。
国試頻出ポイント: イレウスの分類と特徴、特に麻痺性イレウスの原因(高齢者、術後、低K血症)と看護介入(絶飲食・減圧・輸液)は頻出。CT所見(閉塞の有無)と腸雑音の変化をセットで問う問題が多い。
出題パターン注意!: 単純な分類問題から、「高齢者の腹部膨満と嘔吐。CT所見は? 看護介入は?」という事例問題に発展。特に高齢者のイレウスは薬剤性や電解質異常が原因であることが多く、原因検索が重要。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
夜勤中の急性期病棟。80歳女性、3日前から便秘傾向。昨夜から嘔吐を繰り返し、ナースコールで「気持ち悪い、お腹が張って痛い」と訴え。訪室すると、腹部は板状に膨満し、聴診でグル音が亢進している。嘔吐物は黄褐色で悪臭あり。バイタルサインはBP 100/60、HR 100、体温37.2℃。看護師としてどのようにアセスメントし、医師に報告すべきでしょうか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察・アセスメント:バイタルサイン(特に血圧低下、頻脈の有無)、腹部所見(膨満の程度、圧痛、筋性防御の有無)、嘔吐物の性状(量・色・臭気・内容物)、腸雑音(減弱 or 亢進か、金属音か)、排便の最終確認日時、内服薬の確認(特にオピオイド、抗コリン薬、利尿薬など)。
2. 報告(SBAR)
- S(状況):80歳女性、3日前から便秘と腹部膨満、今夜から嘔吐繰り返す。嘔吐物は黄褐色悪臭。
- B(背景):腹部CTで明らかな閉塞なし、全腸管拡張とガス・便貯留。腸雑音亢進。
- A(アセスメント):麻痺性イレウスを疑う。脱水と電解質異常のリスクあり。
- R(提案):絶飲食指示、経鼻胃管挿入による減圧、輸液と電解質補正の指示を仰ぎたい。
3. 看護介入最重要! 医師の指示を受けて、絶飲食とし、経鼻胃管(NGチューブ)を挿入して胃内容物を減圧。輸液ルートを確保し、生理食塩液やリンゲル液で補液を開始。必要に応じて電解質補正(特にK)。腹部膨満が強い場合は、座位またはファウラー位 をとり、呼吸を楽にする。嘔吐時の誤嚥予防のため、枕元に吐物用の容器を置き、体位を横向きに保つ。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 誤嚥性肺炎のリスク:嘔吐時は必ず顔を横向きにし、吸引器を準備する。
- 脱水と電解質異常の進行:イレウスでは大量の消化液が腸管内に貯留し、体内から失われる。バイタルサイン、尿量、皮膚のツルゴールを観察し、輸液管理を厳重に行う。
- 腸管穿孔のリスク:腹部膨満が急激に増悪する場合や、突然の激痛、腹膜刺激症状(筋性防御、Blumberg徴候)が出現した場合は、緊急対応が必要。
看護プロトコル: 観察項目:バイタルサイン(1時間毎)、腹部周囲径(安静時・毎日測定)、腸雑音(4時間毎)、嘔吐量・性状、尿量、排ガス・排便の有無。報告基準:嘔吐の増加、血圧低下(収縮期90未満)、腹部の急激な膨満増強、腹膜刺激症状出現。記録のポイント:観察項目と実施したケア、患者の反応を経時的に記録。
先輩看護師の一言: 「高齢者のイレウスは、『閉塞がないのに動かない』麻痺性が非常に多いです。原因は低カリウム血症や薬の影響。『この患者さん、お腹が張って吐いてるけど、CTで詰まってない』という情報を聞いたら、まず麻痺性イレウスを疑い、絶飲食と減圧の指示を仰ぎましょう。嘔吐物の悪臭は腸内容物の逆流を示す重要なサインです!」

重要概念

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