核心解説
この問題は、
イレウス (Ileus) の病態鑑別を問うています。特に、高齢者の腹部膨満と嘔吐において、
CTで明らかな閉塞部位を認めない ことが診断の鍵となります。イレウスは大きく「機械的イレウス(腸管の閉塞)」と「機能的イレウス(腸管運動の停止)」に分類されます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 本症例では、CTで「明らかな閉塞部位」がないにも関わらず、全腸管の拡張とガス・便貯留を認めています。これは、腸管の蠕動運動が停止した
麻痺性イレウス (Paralytic Ileus) の典型的な所見です。高齢者では、
電解質異常(特に低カリウム血症)、薬剤(抗コリン薬、オピオイドなど)、感染症、腹部手術後 などが原因で発生しやすく、腸管内容物の停滞と内圧上昇により、悪臭を伴う嘔吐(腸内容物の逆流)をきたします。
腸雑音は初期には亢進することがある(代償性) ため、腸雑音が亢進していても麻痺性イレウスを否定できません。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②番の単純性機械的イレウス は、腸管が物理的に狭窄や閉塞されている状態です。CTで閉塞部位が認められるため、本症例には該当しません。
③番の偽性腸閉塞 は、腸管運動障害による機能的な閉塞症状を示す点で麻痺性イレウスと類似しますが、通常は慢性経過をたどるか、特定の疾患に伴って生じます。急性発症の本症例では麻痺性イレウスがより適切です。
④番の虫垂炎 は、限局した炎症であり、腹部全体の膨満と多量のガス・便貯留は特徴的ではありません。
⑤番の絞扼性イレウス は、腸管がねじれて血行障害を伴う緊急疾患です。CTで腸管の拡張と閉塞部位がみられ、早期に
腹膜刺激症状やショック を呈します。本症例では閉塞部位を認めず、症状も比較的緩徐であるため考えにくいです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
イレウスの分類と鑑別ポイントを押さえましょう。
| 分類 | 原因 | CT所見 | 腸雑音 | 嘔吐 |
|---|
| 機械的イレウス | 腫瘍、癒着、ヘルニア嵌頓などによる物理的閉塞 | 閉塞部位の確認、口側腸管の拡張 | 亢進(金属音)→減弱 | 閉塞部位より口側の内容物 |
| 麻痺性イレウス | 電解質異常、薬剤、炎症、手術後の腸管運動低下 | 全腸管の拡張、閉塞部位なし | 減弱または消失(初期に亢進あり) | 腸内容物(黄褐色・悪臭) |
| 絞扼性イレウス | 腸間膜の捻転による血行障害 | 閉塞部位、腸管壁の肥厚・造影不良 | 亢進から急激に消失 | 暗赤色・血性(進行例) |
概念整理: イレウスは「閉塞の有無」と「血行障害の有無」で分類される。CTで閉塞部位が確認できなければ、まず機能的イレウス(麻痺性イレウス)を考える。
一目で比較!: 麻痺性イレウス vs 機械的イレウス。腸雑音の質とCT所見(閉塞部位の有無)が最も重要な鑑別点。
看護過程ポイント:
アセスメント:バイタルサイン、腹部所見(膨満、圧痛、腸雑音)、嘔吐物の性状(量、色、臭気)、排便状況、電解質(特にK)、薬剤歴。
看護診断:腸管運動低下 / 体液量不足 / 誤嚥リスク。
計画・実施:絶飲食、経鼻胃管(NGチューブ)挿入による減圧、輸液療法による脱水補正と電解質是正、安静保持、バイタルサインと腹部所見の経時的観察。
評価:嘔吐の消失、腹部膨満の軽減、腸雑音の回復。
暗記のコツ: 「麻痺=閉塞なく動かない」と覚えましょう。CTで「閉塞がないのに腸がパンパンに膨れている」イメージが麻痺性イレウスです。
国試頻出ポイント: イレウスの分類と特徴、特に麻痺性イレウスの原因(高齢者、術後、低K血症)と看護介入(絶飲食・減圧・輸液)は頻出。CT所見(閉塞の有無)と腸雑音の変化をセットで問う問題が多い。
出題パターン注意!: 単純な分類問題から、「高齢者の腹部膨満と嘔吐。CT所見は? 看護介入は?」という事例問題に発展。特に高齢者のイレウスは薬剤性や電解質異常が原因であることが多く、原因検索が重要。