核心解説
この問題は、腹部の代表的な身体所見とその関連疾患を問う、
急性虫垂炎 (Acute Appendicitis) の診断に必須の知識です。
急性虫垂炎では、虫垂の炎症が周囲の腹膜を刺激することで、特定の部位に限局した圧痛が出現します。この局在を正確に把握することが、診断の鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は
4. McBurney点圧痛 です。McBurney点(マクバーニー点)は、右上前腸骨棘と臍(へそ)を結ぶ線上で、その外側3分の1の点と定義されます。この部位は、通常
虫垂 (Appendix) の先端が位置する体表上の投影点であり、急性虫垂炎の初期〜進行期にかけて最も強く圧痛を認めることが多いです。この所見は、急性虫垂炎を疑う最も古典的かつ重要な身体所見の一つです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! それぞれの徴候が示す疾患を明確に区別することが重要です。
- ①
Cullen徴候 (Cullen's Sign):臍周囲の皮下出血。主に
急性膵炎 (Acute Pancreatitis) や腹腔内出血(異所性妊娠破裂など)で認められます。
- ②
Blumberg徴候 (Blumberg's Sign):反跳痛(Rebound Tenderness)。これは腹膜刺激症状の一つであり、急性虫垂炎の進行により腹膜に炎症が波及した場合にも陽性となりますが、それに限らず、あらゆる腹膜炎症(腹膜炎全般)で認められる非特異的な所見です。よって「急性虫垂炎の診断に有用」という点では、McBurney点圧痛ほど特異的ではありません。
- ③
Grey-Turner徴候 (Grey Turner's Sign):側腹部の皮下出血。これもCullen徴候と同様、
急性膵炎 (Acute Pancreatitis) や後腹膜出血を疑う所見です。
- ⑤
Murphy徴候 (Murphy's Sign):深吸気時の右季肋部圧痛の増強。これは
胆嚢炎 (Cholecystitis) に特徴的な身体所見であり、急性虫垂炎とは関連しません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
- 急性虫垂炎のその他の身体所見:
Rovsing徴候(左側腹部を圧迫した際の右側腹部痛)、
Psoas徴候(右大腿を伸展した際の右下腹部痛:虫垂が後腹膜にある場合)、
Obturator徴候(右股関節を内旋させた際の下腹部痛:骨盤内に虫垂がある場合)。
- 鑑別疾患:腸間膜リンパ節炎、卵巣囊腫捻転、異所性妊娠、尿路結石など。
概念整理
| 身体所見 | 特徴 | 関連疾患 |
| McBurney点圧痛 | 右上前腸骨棘と臍を結ぶ線上の外側1/3点の圧痛 | 急性虫垂炎 |
| Blumberg徴候 | 反跳痛(腹膜刺激徴候) | 腹膜炎全般(虫垂炎含む) |
| Murphy徴候 | 深吸気時の右季肋部圧痛増強 | 胆嚢炎 |
| Cullen徴候 | 臍周囲の皮下出血 | 急性膵炎、腹腔内出血 |
| Grey-Turner徴候 | 側腹部の皮下出血 | 急性膵炎、後腹膜出血 |
一目で比較!
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急性虫垂炎 vs 胆嚢炎:疼痛部位が右下腹部(虫垂炎)か右季肋部(胆嚢炎)かで鑑別します。随伴症状として、虫垂炎では発熱・悪心、胆嚢炎では発熱・黄疸がみられることがあります。
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皮下出血の鑑別:Cullen徴候とGrey-Turner徴候はともに急性膵炎でみられますが、皮下出血の部位が異なります。両者をセットで覚えましょう。
看護過程ポイント
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アセスメント:腹痛のある患者さんに対しては、まず「いつから」「どこが」「どのように(痛みの性状)」「どんな時に強くなるか」を詳しく聴取します。身体所見の確認は、医師の診断に役立つ情報を提供する重要な看護行為です。
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看護介入:急性虫垂炎が疑われる場合、診断が確定するまでは絶飲食とし、消炎鎮痛薬の使用は症状を隠蔽する可能性があるため、医師の指示に従います。手術(虫垂切除術)が決定した場合は、術前準備(絶飲食、皮膚消毒、抗生剤投与)を速やかに行います。
暗記のコツ
- 各徴候を「臓器+体の部位+症状」でイメージして覚えましょう。
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McBurney点:「虫垂(盲腸の先端)」→「右下腹部(McBurney点)」→「圧痛」
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Murphy徴候:「胆嚢(肝臓の下)」→「右季肋部(息を吸うと下がる)」→「吸気時痛み増強」
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Cullen/Grey-Turner徴候:「膵臓(お腹の奥)」→「炎症が強い(出血がお腹の表面に出る)」→「臍/側腹部の皮下出血」
国試頻出ポイント
- 単純に「〇〇の徴候はどれか」という知識問題だけでなく、「腹部所見の画像を見て(あるいは患者の訴えを聞いて)正しい徴候名を選ぶ」問題や、「身体所見から最も疑われる疾患を選ぶ」問題として頻出です。特に、
急性虫垂炎と胆嚢炎の鑑別は超頻出なので、必ず押さえましょう。
出題パターン注意!
- 「50歳女性。上腹部痛あり。右季肋部に圧痛あり。深吸気時に痛みが増強する。」→ 正解は
Murphy徴候 (胆嚢炎) を選ばせる問題。
- 「20歳男性。右下腹部痛あり。McBurney点に圧痛あり。」→ 正解は
急性虫垂炎 を選ばせる問題。
- 両方をセットで覚え、どちらが問われても答えられるようにしておきましょう。