38歳男性。2時間前から突然の心窩部痛があり、持続している。痛みは背部に放散し、前かがみになると軽減する。身体所見では上… | MyMerci
栄養の摂取・吸収・代謝機能の障害
問題

38歳男性。2時間前から突然の心窩部痛があり、持続している。痛みは背部に放散し、前かがみになると軽減する。身体所見では上腹部に圧痛を認める。血清アミラーゼ値が1,200IU/L(基準値40~130IU/L)と高値であった。この患者の診断と治療について正しいのはどれか。

解説
急性膵炎の治療の基本は、膵臓の安静を保つための絶食と、循環血液量減少に対する輸液である。原因として最も多いのはアルコール多飲であり、胆石はその次である。軽症例では抗菌薬は必須ではない。血清リパーゼは診断に有用だが、重症度判定にはCRPやCT所見などが用いられる。重症化で血清カルシウムは低下(脂肪壊死によるカルシウム沈着)する。

詳細解説

核心解説 この問題は、急性膵炎 (Acute Pancreatitis) の診断と治療について問うています。患者は心窩部痛が背部に放散し、前かがみで軽減するという特徴的な症状(体幹前屈位で軽減する腹痛)を示し、血清アミラーゼ値が著明に上昇していることから、急性膵炎の診断が確定します。治療の基本は、膵臓の外分泌刺激を遮断し、臓器を安静に保つことです。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 急性膵炎は、膵臓の自己消化(自家融解)によって発症する急性炎症です。膵管内で活性化された膵酵素(トリプシンなど)が膵実質を消化し、炎症・壊死を引き起こします。病態の中心には、膵酵素の異常活性化 (Premature Activation of Pancreatic Enzymes) とそれに続く炎症カスケードがあります。治療の第一目標は、膵臓への刺激を最小限にし、自然治癒を促すことです。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 急性膵炎の治療は、絶対的安静、絶食・絶飲による膵臓の安静、そして大量輸液による循環動態の安定化が基本です。絶食により膵液分泌を抑制し、輸液療法 (Fluid Therapy) で炎症による血管透過性亢進で失われた循環血液量を補充します。これが第一選択の保存的治療です。よって、選択肢4「絶食と輸液による保存的治療が第一選択である」が正解です。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番「経過中に血清カルシウム値は上昇する」:混同注意! 重症急性膵炎では、膵周囲の脂肪組織が壊死し、脂肪酸とカルシウムが結合して 血清カルシウム値は低下 します(脂肪壊死によるカルシウム沈着)。上昇するのは逆です。
- ②番「抗菌薬は必ず投与する必要がある」:抗菌薬投与は、壊死性膵炎 (Necrotizing Pancreatitis) など感染を合併した重症例に限定されます。軽症の間質性浮腫性膵炎では、感染のリスクは低く、予防的な抗菌薬投与は推奨されていません。
- ③番「原因として最も多いのは胆石である」:混同注意! 急性膵炎の原因として最も多いのは、わが国では アルコール多飲 (Alcohol Abuse) です。胆石 (Gallstones) はアルコールに次いで多い原因であり、最も多いわけではありません。
- ⑤番「重症度判定に血清リパーゼ値が最も有用である」:血清リパーゼ値は、アミラーゼと同様に診断に有用な指標ですが、重症度判定には用いられません。重症度判定には、CRP値、CTによる造影所見、BUN値、SOFAスコア などが用いられます。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 急性膵炎 の診断は、上腹部痛(特に背部放散痛、前かがみで軽減)と血清アミラーゼ(またはリパーゼ)の基準値の3倍以上の上昇が基準です。治療の3本柱は、(1) 絶食と輸液による保存的治療、(2) 疼痛コントロール(ペンタゾシンなど)、(3) 重症例でのICU管理(呼吸循環管理、経腸栄養の早期開始、感染時抗菌薬投与)です。経過中に低カルシウム血症や高脂血症(特にトリグリセリド高値)を合併することがあります。
概念整理: 急性膵炎は、膵酵素の自己消化 による急性炎症。原因はアルコール多飲が最多(胆石は次点)。治療の基本は膵臓の安静(絶食・絶飲)と循環維持(輸液)。重症化すると低カルシウム血症や多臓器不全を来す。
一目で比較!:
項目急性膵炎胆嚢炎/胆石症
腹痛の特徴心窩部痛、背部放散、前かがみで軽減右上腹部痛、右肩放散、食事で増強
主な血液検査異常アミラーゼ・リパーゼ高値白血球・CRP上昇、肝胆道系酵素上昇
治療第一選択絶食+輸液保存的治療抗菌薬、絶食、重症例は手術
最多原因アルコール多飲胆石

看護過程ポイント: アセスメント:疼痛の性状(部位、放散、増悪・軽減因子)、バイタルサイン、腹部所見(圧痛・筋性防御の有無)、検査値(アミラーゼ、リパーゼ、CRP、Ca、BUN)。看護診断:急性疼痛、体液量不足リスク、栄養バランス変化リスク(絶食中)。計画・実施:絶食管理、輸液ルート確保と流量管理、疼痛コントロール(体位変換、鎮痛薬投与)、経過観察(重症化サイン:低血圧、頻脈、呼吸不全、乏尿)。評価:疼痛の軽減、バイタルサイン安定化、尿量確保。
暗記のコツ: 「アミラーゼが上がったら、アルコール?胆石?まずは絶食と点滴!」と覚えましょう。「アルコール多飲が原因で最多、胆石は次点。重症化するとCaが下がる(低カルシウム血症)」がワンセットです。
国試頻出ポイント: 急性膵炎の症状(背部放散痛、前かがみ軽減)、原因(アルコール多飲が最多)、治療の基本(絶食+輸液)、重症度マーカー(CRP、CT所見、低Ca血症)が頻出です。原因疾患の鑑別(アルコール vs 胆石)もよく問われます。
出題パターン注意!: 状況設定問題では、「絶食中の患者に経口摂取を開始するタイミング」や「疼痛が増強した場合の対応(再発や合併症の疑い)」が出題されます。また、胆石が原因の場合は、胆管炎を合併していないか(Charcot三徴:右上腹部痛・発熱・黄疸)も注意が必要です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは内科病棟の看護師。38歳男性が「急にみぞおちが痛くなって、背中まで響く。前かがみになると少し楽になる」と来院し、急性膵炎で入院となりました。アルコール歴は毎日ウイスキーをコップ2杯程度。胆石の既往はありません。絶食と大量輸液が開始されました。夜勤帯に「痛みが強くなってきた、息が苦しい」と訴えがあります。 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まずバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2、体温)と腹部所見(圧痛の増強、筋性防御の有無)を確認。急変時は直ちに医師へSBARで報告します。急性膵炎の重症化兆候(低血圧、頻脈、呼吸不全、乏尿、意識レベルの変化)を見逃さないことが肝心です。疼痛が強い場合、医師の指示で鎮痛薬(ペンタゾシンなど)を投与しますが、モルヒネは Oddi括約筋 (Sphincter of Oddi) を収縮させ、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 絶食管理は厳守。誤って経口摂取がないか、また患者が口渇を訴える場合は、含嗽や保湿ケアを提供。転倒転落予防のため、鎮痛薬投与後はベッド柵を上げ、ナースコールを手元に置きます。重症例では 中心静脈カテーテル (Central Venous Catheter, CVC)動脈ライン (Arterial Line) が挿入されることもあり、感染対策とルート管理が重要です。
看護プロトコル: 観察項目:疼痛スケール(NRS)、バイタルサイン(特に血圧・脈拍・尿量)、腹部所見(圧痛・膨満・腸蠕動音)、SpO2、検査値(アミラーゼ、CRP、Ca、BUN、クレアチニン)。報告基準(SBAR):S(状況)「急性膵炎の患者さん、疼痛が増強しています」、B(背景)「絶食・輸液管理中」、A(アセスメント)「重症化の可能性を考えます」、R(提案)「鎮痛薬の追加投与と緊急血液検査・CTの検討をお願いします」。記録:疼痛の性状・程度・持続時間、実施したケアとその効果、バイタルサイン変化。
先輩看護師の一言: 「急性膵炎の患者さんは、痛みが強くて不安も大きいです。看護師はバイタルサインや検査値をモニタリングするだけでなく、『この痛みはいつもと違うか?』『呼吸状態は大丈夫か?』と常にアセスメントする姿勢が大切です。絶食中の口渇ケアや、体位変換の工夫(前かがみで楽になるなら、枕を調整して楽な姿勢を保つなど)も、患者さんの苦痛を和らげる看護の腕の見せどころです!」

重要概念

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