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栄養の摂取・吸収・代謝機能の障害
問題

60歳男性。2年前から時々みぞおちの痛みがあり、最近痛みが強くなり、黒色便に気づいた。上部消化管内視鏡検査で胃角部小弯に2cmの潰瘍を認め、潰瘍底に露出血管を認めた。この患者の出血量として最も考えられるのはどれか。ただし、患者の血圧は100/60mmHg、脈拍は90回/分である。

解説
露出血管を伴う胃潰瘍からの出血は、しばしば大量出血となる。黒色便(メレナ)が出現するためには通常50~100mL以上の消化管出血が必要とされるが、露出血管を認める活動性出血の場合、500mL以上の出血が生じている可能性が高い。バイタルサイン(血圧低下、脈拍上昇)も循環血液量減少を示唆している。

詳細解説

核心解説 この問題は、上部消化管出血 (Upper Gastrointestinal Bleeding) における出血量の推定を問うています。特に、露出血管 (Exposed Vessel) を伴う胃潰瘍からの出血は、しばしば大量かつ持続性であり、緊急の対応が必要です。

核心概念の分析 (Key Concept)
黒色便(メレナ)が出現するためには、通常 50~100mL以上 の消化管出血が必要です。しかし、この患者では内視鏡で露出血管 (Exposed Vessel) が確認されており、これは活動性出血のリスクが極めて高い所見です。潰瘍底の血管が露出しているため、止血が不十分であったり、再出血を繰り返したりして、大量出血 に至る可能性が高いです。さらに、血圧 100/60mmHg(正常下限またはやや低下)と脈拍 90回/分(やや上昇)というバイタルサインは、循環血液量が減少し、代償期から軽度のショック状態に入りかけていることを示唆しています。

正解の根拠 (Answer Rationale)
黒色便の出現と露出血管の存在、そしてバイタルサインの変動を総合的に判断すると、循環血液量の15~20%以上(約750~1000mL以上)の出血が疑われます。選択肢の中で最も可能性が高いのは 500mL以上 の出血です。実際の臨床では、このような症例では緊急内視鏡下での止血術(クリッピングやアルゴンプラズマ凝固など)と同時に、大量輸液や輸血が検討されます。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 5~50mLの出血では、便潜血は陽性になりますが、黒色便として目に見えることは稀です。この出血量で黒色便が出現するのは極めてまれです。
② 5mL未満の出血は、顕性出血ではなく、便潜血反応のみ陽性となるレベルです。問題文の「黒色便」という所見とは矛盾します。
④ 50~250mLの出血では、黒色便が出現する可能性はありますが、露出血管を認める場合、通常はさらに多量の出血が起きています。この選択肢は「最小限の出血量」を推定させる誤答です。
⑤ 250~500mLの出血も可能性は否定できませんが、露出血管からの活動性出血とバイタルサインの変動を考慮すると、「500mL以上」の方がより妥当です。

関連概念の整理 (Related Concepts)
吐血 (Hematemesis) と下血(黒色便:Melena)の違い:上部消化管出血が大量かつ急速な場合は吐血(鮮紅色~暗赤色)として現れ、少量かつ緩徐な場合は黒色便として現れます。また、出血量の推定には、バイタルサイン(ショックインデックス=脈拍÷収縮期血圧、正常0.5~0.7)が非常に有用です。本例ではショックインデックスは90/100=0.9と上昇しており、循環血液量の減少を示しています。

概念整理: 上部消化管出血の出血量推定:
出血量症状・所見
5~10mL便潜血陽性
50~100mL以上黒色便(メレナ)出現
250~400mL立ちくらみ、頻脈
500mL以上血圧低下、ショック徴候(冷汗、蒼白、乏尿)


一目で比較!: 吐血 vs 下血:吐血は上部消化管からの出血が口腔から排出されたもの。下血(黒色便)は消化管を通過した血液が消化酵素の影響で黒色化したもの。

看護過程ポイント: アセスメントでは、バイタルサイン(特に血圧、脈拍、ショックインデックス)、意識レベル、皮膚の色調・温湿度、尿量を観察。看護診断としては「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」が優先される。介入は、絶食、静脈路確保、輸液・輸血の準備、緊急内視鏡の準備、患者の不安への対応(精神的ケア)など。

暗記のコツ: 「黒色便は50mL以上」と覚えましょう。さらに、「露出血管あり+バイタルサイン変動=大量出血(500mL以上)」とセットで覚えると、類似問題に対応できます。

国試頻出ポイント: 消化管出血の出血量推定とバイタルサインの組み合わせは頻出です。特に、ショックインデックスの計算と解釈、緊急処置の優先順位(気道確保 → 静脈路確保 → 輸液 → 内視鏡)を問う問題と組み合わせて出題されることが多いです。

出題パターン注意!: 単純な「黒色便の原因」を問う問題から、事例問題として「出血性ショック状態の患者への看護介入」や「緊急内視鏡後の患者の観察項目」など、より深い内容へと発展します。バイタルサインの変化を根拠に、出血の程度をアセスメントできるようにしておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは夜勤の看護師です。60歳男性の患者さんが、「夕方から胃のあたりがしくしく痛んで、さっき黒い便が出た」と訴え、救急外来を受診しました。来院時、血圧106/68mmHg、脈拍88回/分、顔色はやや蒼白で、冷汗を認めます。内視鏡検査で胃角部に露出血管を伴う潰瘍が確認されました。医師からは「緊急で内視鏡的止血術を行います。患者さんは絶食、ベッド上安静でお願いします」と指示が出ました。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
最重要! まず、静脈路の確保(太めの留置針で2ルート確保)と、輸液(乳酸リンゲル液など)の開始準備をします。同時に、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)と意識レベルをモニタリングし、ショックインデックスを計算します(本例では約0.83)。ショックインデックスが1.0以上 になると、顕性ショック状態と判断し、医師への迅速な報告と輸血準備が必要です。患者さんには、「今、止血の処置を行います。安静にしていてくださいね」と声をかけ、不安を軽減します。緊急内視鏡の準備(前処置、患者説明、同意書確認、機器準備)を並行して進めます。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 転倒・転落予防:出血によるふらつきや血圧低下で転倒リスクが高いため、ベッド上安静とし、ナースコールを手元に置く。 - 誤嚥予防:吐血の可能性があるため、側臥位またはファウラー位を保ち、吸引器を準備。 - 薬剤アレルギーの確認:緊急内視鏡時に使用する鎮静薬や止血薬(トロンビンなど)のアレルギーの有無を確認。 - 禁忌事項:出血が疑われる状態での経口摂取は絶対禁忌。経鼻胃管の挿入も、露出血管を損傷するリスクがあるため、医師の指示なしに行わない。

看護プロトコル: 観察項目は、バイタルサイン(15分毎)、意識レベル、皮膚の色調・温湿度、尿量(1時間毎)、腹痛の有無と性状、嘔気・吐血の有無。報告基準は、血圧が90mmHg以下、脈拍が100回/分以上、意識レベルの低下、吐血の出現。記録は、来院時の状態、バイタルサインの推移、看護介入の内容と患者の反応、医師への報告内容と指示を詳細に記載する。家族への説明は、病状(出血性胃潰瘍)、治療(緊急内視鏡的止血術)、安静の必要性、今後の見通しについて、医師と連携して説明する。

先輩看護師の一言
「黒色便とバイタルサインの変化を見たら、『この患者さんは大量出血しているかもしれない!』と直感できるようになってくださいね。特に露出血管が見つかったケースは、止血処置後も再出血のリスクが高いので、『いつ出血が再開してもおかしくない』という緊張感を持って観察を続けることが大切です。国試でも『メレナ+頻脈=大量出血の可能性』という流れは絶対に覚えておきましょう!」

重要概念

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