核心解説
この問題は、感覚機能の障害の中でも特に「味覚障害」の原因を問うています。
最重要! 味覚障害の原因として最も頻度が高いのは
亜鉛欠乏症 (Zinc Deficiency) です。
亜鉛は味蕾 (Taste Buds) の細胞の新生や修復、および味覚伝達に関与する重要な微量元素であり、不足すると味覚が低下したり(味覚減退:Hypogeusia)、異味を感じたり(異味症:Dysgeusia)します。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題は「味覚障害の原因」を直接問う知識問題です。各感覚(視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚)に対応する脳神経とその機能を整理しておくことが重要です。味覚は主に
顔面神経 (Facial Nerve, CN VII)(舌前2/3)と
舌咽神経 (Glossopharyngeal Nerve, CN IX)(舌後1/3)が伝導します。しかし、問題は「原因」であり、神経障害以外の全身性要因(特に栄養障害)も広く含まれます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は⑤番の
亜鉛欠乏症 (Zinc Deficiency) です。亜鉛は味覚の維持に不可欠であり、欠乏すると味蕾の機能が低下します。特に高齢者や、偏食、胃腸疾患、薬剤(例:降圧薬、抗てんかん薬)の影響で亜鉛欠乏が生じやすく、味覚障害の主要な原因となります。治療には
亜鉛補充療法(ポラプレジンクなど) が行われます。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①番
混同注意! 動眼神経麻痺 (Oculomotor Nerve Palsy) は眼球運動障害、瞳孔対光反射障害をきたし、味覚には影響しません。
②番
混同注意! 嗅神経障害 (Olfactory Nerve Disorder) は嗅覚障害(Anosmia)の原因です。嗅覚と味覚は密接に関連し、嗅覚障害により味覚が鈍くなったように感じることはありますが(風味障害)、純粋な味覚(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)の低下の原因としては亜鉛欠乏の方が直接的です。
③番
視床下部障害 (Hypothalamic Disorder) は食欲調節、体温調節、内分泌機能などに関与しますが、味覚障害の直接的原因とはなりません。
④番
混同注意! 三叉神経障害 (Trigeminal Nerve Disorder, CN V) は顔面の感覚(痛覚・触覚・温度覚)や咀嚼筋の運動障害をきたします。味覚伝導路ではないため、味覚障害の直接原因とはなりません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 味覚障害の原因は多岐にわたります。主要なものは以下の通りです。
| 原因分類 | 具体例 |
|---|
| 栄養障害 | 亜鉛欠乏症(最多)、鉄欠乏症、ビタミンB群欠乏症 |
| 薬剤性 | ACE阻害薬、抗菌薬(特にマクロライド系)、抗がん剤、向精神薬 |
| 口腔内疾患 | 口腔カンジダ症、舌炎、シェーグレン症候群(口腔乾燥) |
| 神経障害 | 顔面神経麻痺、舌咽神経障害、頭部外傷 |
| その他 | 加齢(生理的変化)、放射線治療後、心因性(うつ病など) |
概念整理: 味覚障害の病態生理の中心は
味蕾細胞の機能低下 であり、その原因として最も頻度が高いのは
亜鉛欠乏症 であることをしっかりと覚えておきましょう。各脳神経の機能(特に感覚神経と運動神経の違い)も併せて整理が必要です。
一目で比較!:
| 脳神経 | 主な機能 | 障害時の症状 |
|---|
| 嗅神経 (CN I) | 嗅覚 | 嗅覚障害(Anosmia) |
| 視神経 (CN II) | 視覚 | 視力障害、視野欠損 |
| 動眼神経 (CN III) | 眼球運動、瞳孔反射 | 眼球運動障害、複視、散瞳 |
| 三叉神経 (CN V) | 顔面感覚、咀嚼筋運動 | 顔面感覚鈍麻、咀嚼障害 |
| 顔面神経 (CN VII) | 顔面表情筋運動、味覚(舌前2/3) | 顔面神経麻痺、味覚障害 |
| 舌咽神経 (CN IX) | 咽頭感覚、味覚(舌後1/3) | 嚥下障害、味覚障害 |
看護過程ポイント: 味覚障害のある患者の看護では、
アセスメントとして「いつから、どのような味が分かりにくいか(甘味・塩味など)、服薬状況、口腔内の状態、亜鉛摂取状況」を確認します。
看護介入としては、食事の味付けの工夫(例:酸味や香辛料の活用)、口腔ケアの徹底、栄養指導(亜鉛を多く含む食品:牡蠣、レバー、牛肉、納豆など)の提供が重要です。
暗記のコツ: 味覚の「味」という漢字には「未」と「口」が含まれます。「口の中で未(まだ)味わうのが難しい=亜鉛不足」と連想すると覚えやすいでしょう。また、脳神経は「嗅視動滑三外顔聴舌副舌」の語呂合わせで覚え、それぞれの機能(感覚か運動か)を紐付けると混乱しにくいです。
国試頻出ポイント: 味覚障害の原因としての亜鉛欠乏症は非常に頻出です。また、脳神経の機能別分類と障害症状を絡めた問題もよく出題されます。特に、顔面神経と舌咽神経が味覚に関与するという点、三叉神経は味覚に関与しないという点は確実に押さえましょう。
出題パターン注意!: 単純な原因を問う問題(本問)から、事例問題に発展することがあります。例えば「高齢の女性で、降圧薬(ACE阻害薬)を内服中、最近食事が美味しくないと訴えている。味覚障害の原因として考えられるのはどれか」といった形です。この場合、薬剤性と亜鉛欠乏症の両方を考慮する必要があります。