核心解説
この問題は、
複視 (Diplopia) をきたす病態を問うています。複視とは、一つの物体が二つに見える症状で、眼球運動の協調が障害されることで生じます。
最重要! 正解は
動眼神経麻痺 (Oculomotor Nerve Palsy) です。動眼神経(第Ⅲ脳神経)は、上眼瞼挙筋、内直筋、上直筋、下直筋、下斜筋を支配し、瞳孔の収縮や調節にも関与します。この神経が麻痺すると、眼球の内転、上下転が障害され、両眼の視線が一致しなくなるため複視が出現します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
複視は、両眼で対象物を見た際に、片方の眼球の動きが制限されることで、網膜上の像の位置がずれることにより発生します。動眼神経麻痺では、外眼筋の機能が低下し、
眼球運動障害 (Ophthalmoplegia) が生じ、これが直接複視の原因となります。特に、内転や上下転が障害されるため、特定の方向を向いた時に複視が強くなります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番
網膜剥離 (Retinal Detachment):主症状は、視野欠損(暗幕がかかったように見える)、飛蚊症、光視症です。片眼性の症状であり、両眼の視線不一致による複視は生じません。
③番
緑内障 (Glaucoma):主症状は、視野狭窄(特に周辺視野から欠ける)で、急性緑内障では眼痛や霧視を伴いますが、複視の原因とはなりません。
④番
黄斑変性症 (Macular Degeneration):主症状は、中心暗点(物の中心が見えにくい、歪んで見える)です。両眼の眼球運動自体は正常なため、複視は生じません。
⑤番
白内障 (Cataract):主症状は、視力低下、霧視、グレア(まぶしさ)です。水晶体の混濁による視機能低下であり、眼球運動障害は伴いません。
概念整理
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複視 (Diplopia): 単眼複視(片眼の問題:白内障・乱視)と両眼複視(両眼の位置ずれ:神経麻痺・斜視)がある。問題で問われるのは通常、神経・筋疾患による両眼複視。
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動眼神経麻痺 (Oculomotor Nerve Palsy): 第Ⅲ脳神経障害。主症状:眼瞼下垂(Ptosis)、眼球の外転・下方偏位、瞳孔散大(対光反射消失)、複視。
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鑑別すべき神経: 滑車神経麻痺(第Ⅳ脳神経):下方視で複視。外転神経麻痺(第Ⅵ脳神経):外転障害で水平方向の複視。
一目で比較!
| 病態 | 主症状 | 複視の有無 |
|---|
| 動眼神経麻痺 | 眼瞼下垂、眼球運動障害、瞳孔散大 | あり(両眼複視) |
| 網膜剥離 | 視野欠損、飛蚊症、光視症 | なし |
| 緑内障 | 視野狭窄、眼痛(急性発作時) | なし |
| 黄斑変性症 | 中心暗点、変視症 | なし |
| 白内障 | 視力低下、霧視 | なし(まれに単眼複視) |
看護過程ポイント
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アセスメント: 複視の出現パターン(どの方向を見た時に生じるか)、眼瞼下垂や瞳孔不同の有無を評価。神経学的所見と合わせて、原因となる脳神経障害(動眼神経・滑車神経・外転神経)を特定する。
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看護診断: 知覚・感覚の変調(視覚)、転倒リスク状態、セルフケア不足(視覚障害関連)。
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介入: 安全な環境の提供(転倒予防のため、通路の整理、歩行補助具の使用推奨)。眼帯使用(複視を軽減するため、片眼を遮蔽するが、両眼視が必要な状況では注意)。必要に応じて眼科・脳神経科医への報告。
暗記のコツ
「動眼神経は3つの神経の中で唯一、眼瞼と瞳孔も動かす!」と覚えましょう。動眼神経(Ⅲ)、滑車神経(Ⅳ)、外転神経(Ⅵ)は眼球運動を支配しますが、動眼神経だけが「眼瞼挙筋」と「瞳孔括約筋・毛様体筋」も支配します。したがって、
複視+眼瞼下垂+瞳孔散大 があれば、動眼神経麻痺を第一に疑います。
国試頻出ポイント
- 複視の原因として、
動眼神経麻痺、
重症筋無力症 (Myasthenia Gravis)(日内変動あり、眼瞼下垂が特徴)、
甲状腺眼症 (Graves' Ophthalmopathy)(眼球突出、外眼筋の肥厚)が頻出。
- 「複視=眼球運動障害」の基本を押さえ、どの脳神経(Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ)が関与するかセットで覚えると得点源になります。