核心解説
この問題は、感覚機能の障害の中でも特に
耳鳴(Tinnitus) の原因について、その病態生理を正しく理解しているかを問うものです。耳鳴は、外部からの音刺激がないにもかかわらず、実際に音が聞こえるように感じる症状で、そのほとんどが
聴覚系(Auditory System) の異常によって引き起こされます。本問では、聴覚系以外の感覚器(視覚系)の疾患を選別する必要があります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 耳鳴の原因は、大きく分けて内耳から大脳皮質聴覚野に至る聴覚伝導路のどこかに障害が生じることで発症します。原因疾患としては、
メニエール病(Meniere's Disease)、
突発性難聴(Idiopathic Sudden Sensorineural Hearing Loss)、
聴神経腫瘍(Vestibular Schwannoma)、
耳硬化症(Otosclerosis)、加齢性難聴、薬剤性(アスピリン、アミノグリコシド系抗生物質など)、そして
騒音曝露(Noise Exposure) による音響外傷などが代表的です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は
2番(視神経炎) です。視神経炎(Optic Neuritis)は、
視神経(Optic Nerve) に炎症が生じる疾患であり、症状は主に視力低下、視野欠損、眼球運動時の痛みなど、視覚に関するものです。耳鳴は聴覚系の症状であるため、視神経炎はその原因とはなり得ません。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
①番(突発性難聴): 内耳の有毛細胞や蜗牛神経の障害により、急激な難聴とともに
高頻度で耳鳴を伴います。耳鳴の代表的かつ緊急性の高い原因の一つです。
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③番(耳硬化症): 中耳のアブミ骨が固着する伝音難聴(Conductive Hearing Loss)です。この疾患も耳鳴を来すことが多く、特に低音性の耳鳴が特徴的です。
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④番(騒音曝露): 大きな音にさらされることで内耳の有毛細胞が損傷され、一過性または永続性の耳鳴を引き起こします。工事現場やヘッドホンでの大音量聴取などが原因となります。
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⑤番(聴神経腫瘍): 内耳道や小脳橋角部に発生する良性腫瘍で、
聴神経(第VIII脳神経) を圧迫します。その結果、
一側性の進行性難聴と耳鳴 が代表的な初発症状です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
混同注意! 耳鳴の原因となる疾患と、めまい(Vertigo)の原因となる疾患は重なる部分が多いです(例:メニエール病)。しかし、本問で問われているのは「耳鳴」のみです。また、
薬剤性耳鳴 も頻出事項です。特にループ利尿薬(フロセミドなど)やアミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシンなど)は、
内耳毒性(Ototoxicity) を持つため、投与中は耳鳴の有無を必ず確認する必要があります。
概念整理: 耳鳴の原因はほぼ全て
聴覚伝導路(Auditory Pathway) の障害による。外耳・中耳(耳垢栓塞、耳硬化症)から内耳(騒音性難聴、突発性難聴、メニエール病)、後迷路(聴神経腫瘍)まで、部位別に整理しておくと良い。
一目で比較!:
| 症状 | 関連感覚器 | 代表的原因疾患 |
|---|
| 耳鳴 | 聴覚器(内耳〜聴神経) | 突発性難聴、耳硬化症、聴神経腫瘍、騒音曝露 |
| 視力障害 | 視覚器(網膜〜視神経) | 視神経炎、網膜剥離、緑内障 |
看護過程ポイント: 耳鳴を訴える患者のアセスメントでは、まず
問診(聴取) が重要。発症の時期(急性or慢性)、片側性か両側性か、音の性質(金属音、ブーンという音など)、随伴症状(難聴、めまい、耳閉感)を確認する。原因疾患によって対応が大きく変わるため、耳鼻咽喉科への紹介も検討する。
暗記のコツ: 「耳鳴りは“耳”のトラブル。目(視神経炎)は関係ない。」と覚えましょう。聴覚系以外の感覚器疾患(視覚、味覚、嗅覚)は耳鳴の原因にならない、というシンプルなルールです。
国試頻出ポイント: 耳鳴の原因となる薬剤(特にアミノグリコシド系、ループ利尿薬、アスピリン)と、合併しやすい症状(難聴、めまい)をセットで問う問題が頻出。また、本例のように「最も適切でないもの(原因とならないもの)」を選ばせる出題形式もよく見られます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「耳鳴の原因はどれか」と聞かれるだけでなく、事例問題で「患者が耳鳴を訴えた。原因として考えられるのはどれか」という形で出題されることもある。常に病態と症状を結びつけて考えましょう。