核心解説
この問題は、
脊髄 (Spinal Cord) の各伝導路の機能と、障害時に出現する症状の鑑別を問うています。脊髄は大きく分けて、
後索 (Dorsal Column / Posterior Funiculus)、
脊髄視床路 (Spinothalamic Tract)、
皮質脊髄路 (Corticospinal Tract / 錐体路) という3つの主要な伝導路があり、それぞれが異なる感覚や運動を伝えています。この問題では、特に後索の機能を正確に理解しているかが鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 脊髄後索は、
深部感覚 (Deep Sensation / Proprioception) を伝導する経路です。深部感覚には、
位置覚 (Position Sense / Kinesthesia)、
振動覚 (Vibration Sense / Pallesthesia)、
二点識別覚 (Two-point Discrimination) が含まれます。後索が障害されると、これらの感覚が障害され、閉眼時に自分の手足の位置がわからなくなる「位置覚障害」や、歩行時のふらつき(特に閉眼時に増悪する
ロンベルグ徴候 (Romberg's Sign))が出現します。したがって、選択肢⑤「位置覚障害」が正解です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
- ①番「触覚障害」:触覚は、粗触覚は脊髄視床路、識別性触覚(微細な触覚)は後索を介して伝えられます。そのため、後索単独の障害では触覚は完全には消失せず、むしろ識別性触覚の障害として現れます。しかし、問題文では「脊髄後索の障害でみられる症状」として典型的なものを選ぶため、位置覚障害の方がより代表的です。
- ②番「発汗障害」:発汗は自律神経(交感神経)の機能です。交感神経は脊髄の側角(中間質外側核)から出るため、後索障害とは無関係です。
- ③番「温痛覚障害」:温痛覚(温度覚と痛覚)は、脊髄視床路 (Spinothalamic Tract) を伝導します。脊髄の前索と側索を上行するため、後索障害ではみられません。
- ④番「筋萎縮」:筋萎縮は、下位運動ニューロン(脊髄前角細胞や末梢神経)の障害によるものです。後索障害では筋萎縮は生じません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
脊髄の主要な伝導路とその機能を整理しておきましょう。
| 伝導路 | 走行部位 | 伝える情報 | 障害時の主症状 |
| 後索 (Dorsal Column) | 後索 | 深部感覚(位置覚・振動覚)、識別性触覚 | 位置覚障害、ロンベルグ徴候 |
| 脊髄視床路 (Spinothalamic Tract) | 前索・側索 | 温痛覚、粗触覚 | 温痛覚障害 |
| 皮質脊髄路 (Corticospinal Tract) | 側索・前索(錐体路) | 随意運動の指令 | 痙性麻痺、バビンスキー徴候 |
概念整理
脊髄後索は「深部感覚の高速道路」、脊髄視床路は「温痛覚の伝導路」、皮質脊髄路は「運動指令の伝導路」です。後索障害の代表的な所見は「位置覚障害」と「ロンベルグ徴候」であることを必ず覚えましょう。
一目で比較!
| 症状 | 障害部位 | 代表的な疾患 |
| 位置覚障害 | 脊髄後索 | 脊髄癆(梅毒による)、亜急性連合性脊髄変性症(ビタミンB12欠乏) |
| 温痛覚障害 | 脊髄視床路 | 脊髄空洞症(空洞が中心管周囲にできると、まず脊髄視床路交差部が障害され、温痛覚のみ解離性に障害される) |
| 運動麻痺(痙性) | 皮質脊髄路(錐体路) | 脳卒中、脊髄損傷 |
看護過程ポイント
神経学的アセスメントでは、患者さんの「
バランス (Balance)」と「
協調運動 (Coordination)」の評価が重要です。位置覚障害がある患者さんは、特に閉眼時に不安定になるため、転倒リスクが高まります。歩行介助や環境調整(手すりの設置、照明の確保)を計画に含めましょう。
暗記のコツ
「
後索は『
深い場所』をイメージ!『
深部感覚』(位置覚・振動覚)」と覚えましょう。または「後索は『プロプリオセプション』(固有受容感覚/深部感覚の英語名 Proprioception)の頭文字『P』」と関連付けるのも良いでしょう。
国試頻出ポイント
この問題は、脊髄の各伝導路の機能を問う「組み合わせ問題」や「障害部位の特定問題」の基礎となります。例えば「
脊髄空洞症 (Syringomyelia) でみられる解離性感覚障害(温痛覚のみ障害され、触覚は保たれる)はなぜか?」という発展問題にも対応できるように、各伝導路の走行と機能を立体的に理解しておきましょう。