努力呼気時に胸腔内圧が陽圧になる原因はどれか。 | MyMerci
呼吸器系
問題

努力呼気時に胸腔内圧が陽圧になる原因はどれか。

解説
努力呼気時には腹筋と内肋間筋が収縮し、腹腔内圧が上昇して横隔膜が押し上げられる。これにより胸腔内圧が陽圧(大気圧より高い圧)となり、肺胞内の空気が気道を通って体外へ押し出される。

詳細解説

核心解説 この問題は、呼吸生理の中でも特に「努力呼気 (Forced Expiration)」のメカニズムを理解しているかを問うています。最重要! 安静呼気(受動的呼気)と努力呼気(能動的呼気)では、胸腔内圧の変化を生み出す筋肉の働きが全く異なります。
通常の安静呼気は、横隔膜と外肋間筋の弛緩による受動的な過程で、胸腔内圧は陰圧(大気圧より低い)のままです。しかし、努力呼気は能動的な過程であり、腹筋 (Abdominal Muscles) と内肋間筋 (Internal Intercostal Muscles) の収縮が必要です。腹筋の収縮により腹腔内圧が上昇し、横隔膜が胸腔側へ押し上げられます。同時に、内肋間筋の収縮により肋骨が下制され、胸郭容積がさらに縮小します。この結果、胸腔内圧は大気圧よりも高い陽圧に変化し、肺胞内の空気が気道を通って体外へ強制的に押し出されます。これが努力呼気のメカニズムです。
つまり、選択肢5が示す「腹筋と内肋間筋の収縮による腹腔内圧上昇」が、胸腔内圧を陽圧にする直接の原因です。

正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は⑤です。努力呼気時には、腹筋 (Abdominal Muscles)内肋間筋 (Internal Intercostal Muscles) が能動的に収縮します。腹筋の収縮は腹腔内圧を上昇させ、横隔膜を上方へ押し上げます。内肋間筋の収縮は肋骨を下方へ引き下げ、胸郭を狭めます。これらの作用により、胸腔内圧が大気圧より高い陽圧となり、肺から空気が押し出されます。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 肺胞表面張力 (Alveolar Surface Tension) の増加は、肺胞の虚脱(無気肺)を促進する要因であり、胸腔内圧を陽圧にする原因ではありません。
混同注意! 気管支平滑筋 (Bronchial Smooth Muscle) の弛緩は気道拡張を意味し、気道抵抗を減少させますが、胸腔内圧そのものを陽圧にするわけではありません。
③ 横隔膜 (Diaphragm) の収縮は吸気筋の活動であり、胸腔内圧を陰圧にします。努力呼気時には横隔膜は弛緩します。
④ 外肋間筋 (External Intercostal Muscles) の収縮は吸気筋の活動であり、肋骨を挙上して胸郭を拡大し、胸腔内圧を陰圧にします。努力呼気時には外肋間筋は弛緩します。

関連概念の整理 (Related Concepts)
- 混同注意! 安静呼気 (Quiet Expiration / Passive Expiration): 横隔膜と外肋間筋の弛緩による受動的な過程。胸腔内圧は陰圧のまま。
- 努力呼気 (Forced Expiration / Active Expiration): 腹筋と内肋間筋の能動的な収縮による過程。胸腔内圧が陽圧になる。
- 胸腔内圧 (Intrapleural Pressure): 正常安静時は陰圧(約 -5 cmH₂O)。努力呼気時には陽圧に転じる。この陽圧化が気道閉塞を悪化させる可能性があるため、COPD患者などでは口すぼめ呼吸( pursed-lip breathing)が推奨されます。

概念整理: 呼吸の筋と胸腔内圧の関係
呼吸相主な筋胸腔内圧肺容量
安静吸気横隔膜 外肋間筋陰圧(-)増加
安静呼気(筋の弛緩による受動的)陰圧(-)減少
努力吸気横隔膜 外肋間筋 胸鎖乳突筋 斜角筋より強い陰圧(- -)増加
努力呼気腹筋 内肋間筋陽圧(+)減少


一目で比較!: 吸気筋 vs 呼気筋
分類主な筋作用
吸気筋 (Inspiratory Muscles)横隔膜 外肋間筋胸腔を拡大し、陰圧を生み出して空気を肺に引き込む
呼気筋 (Expiratory Muscles)腹筋(特に腹直筋 内外腹斜筋 腹横筋) 内肋間筋胸腔を縮小し、陽圧を生み出して空気を肺から押し出す


看護過程ポイント: 呼吸筋のアセスメントと看護介入
- アセスメント: 患者の呼吸パターンを観察し、努力呼気の兆候(腹筋の収縮、内肋間筋の使用、口すぼめ呼吸の有無)を評価する。呼吸困難 (Dyspnea) の患者では、努力呼気の筋活動が顕著になる。
- 看護診断: 非効果的気道浄化 (Ineffective Airway Clearance) / 非効果的呼吸パターン (Ineffective Breathing Pattern) / ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)
- 看護介入: 呼吸リハビリテーションとして、横隔膜呼吸法(腹式呼吸)や口すぼめ呼吸を指導し、努力呼気時の気道虚脱を予防する。COPD患者では、腹筋を使いすぎると気道閉塞が悪化するため注意。

暗記のコツ:
吸う(吸気)=イン(陰圧)=インスパイア(Inspiration)」と覚えましょう。吸気筋(横隔膜、外肋間筋)が収縮すると胸腔は拡大され、内圧は陰圧(イン)になります。逆に、吐く(呼気)=アウト(陽圧)=エクスパイア(Expiration)です。努力呼気筋(腹筋、内肋間筋)が収縮すると胸腔は縮小され、内圧は陽圧(アウト)になります。

国試頻出ポイント:
看護師国家試験では、この問題のように呼吸筋の作用と胸腔内圧の関係を問う問題が頻出です。特に「努力呼気時に陽圧になる」というメカニズムは、COPD患者の呼吸困難や、気胸時の胸腔ドレナージ管理(陽圧になるリスク)の理解にもつながる重要な概念です。また、人工呼吸器管理(陽圧換気)の理解の基礎にもなります。

出題パターン注意!:
- 単純知識問題: 「努力呼気時に収縮する筋はどれか」→ 腹筋と内肋間筋
- 応用問題(状況設定): 「COPD患者の呼吸困難時、どのような呼吸法を指導すべきか」→ 口すぼめ呼吸(呼気時の気道内圧を維持し、気道虚脱を予防する)。このときの病態生理学的な理由として、努力呼気時の胸腔内圧陽圧化を理解しているかが問われます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
70代男性、COPD増悪で入院中。呼吸数28回/分、SpO2 88%(酸素2L/分 鼻カニューレ投与中)。患者は肩で息をし、口をすぼめてゆっくり息を吐いている(口すぼめ呼吸)。看護師が胸部を観察すると、呼気時に腹筋が強く収縮しているのが確認できる。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察: 患者の呼吸パターン(努力呼気の有無)、バイタルサイン(呼吸数、SpO2、血圧、心拍数)、呼吸補助筋の使用(胸鎖乳突筋、斜角筋、腹筋)、口すぼめ呼吸の効果、咳嗽の有無と喀痰の性状を観察する。
2. アセスメント: COPD患者では、気道が狭く虚脱しやすいため、努力呼気による胸腔内圧の上昇は気道閉塞をさらに悪化させる危険性がある。しかし、患者が自発的に行っている口すぼめ呼吸は、呼気時に気道内圧を維持し、気道虚脱を防ぐ有効な代償メカニズムである。現在の呼吸数とSpO2から、呼吸困難が進行している可能性を考慮する。
3. 報告(SBAR): 「S(状況): 70代男性、COPD増悪中の患者さんが呼吸困難を訴えています。B(背景): 現在酸素2L/分投与中で、努力呼吸が顕著です。A(アセスメント): 努力呼気時の腹筋収縮が強く、胸腔内圧が陽圧となり気道閉塞が悪化するリスクがあります。口すぼめ呼吸は行えていますが、SpO2が88%と低下しています。R(提案): 酸素投与量の増量と、医師の診察が必要と考えます。」
4. 介入: 医師の指示に基づき、酸素投与量を増量(例:3L/分)。患者の呼吸を楽にするため、ファウラー位(半坐位)をとる。口すぼめ呼吸の継続を促すとともに、必要に応じて吸入薬(β2刺激薬など)の使用を確認する。
5. 評価: 介入後、呼吸数が低下し、SpO2が上昇したか(目標: 90%以上)、呼吸困難の程度が改善したかを評価する。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 最重要! COPD患者では、努力呼気による胸腔内圧の上昇が気道虚脱を促進するため、過度な努力呼気は禁忌です。口すぼめ呼吸を指導し、ゆっくりと呼気を行うように促します。
- 酸素投与は、COPD患者では高二酸化炭素血症(CO2ナルコーシス)を誘発するリスクがあるため、低流量から開始し、SpO2をモニタリングしながら調整します(目標 SpO2 88-92%が一般的)。
- 無気肺(Atelectasis)や痰詰まりによる低酸素血症を予防するため、体位ドレナージや咳嗽・深呼吸の指導も併せて行います。

看護プロトコル
- 観察項目: 呼吸数、呼吸パターン(努力呼気の有無、口すぼめ呼吸の使用)、SpO2、呼吸補助筋の使用、咳嗽、喀痰の量・色・性状、胸部聴診所見(wheeze, crackleの有無)、意識レベル、チアノーゼの有無。
- 報告基準(SBAR): 上記シナリオ参照。
- 記録のポイント: 患者の呼吸状態(呼吸数、SpO2、呼吸パターン)、行った看護介入(酸素投与量の調整、体位変換、口すぼめ呼吸の指導)、医師への報告内容と指示内容、介入後の評価をSOAP形式で記録する。
- 家族への説明の留意点: 「息切れが強い時は、口をすぼめてゆっくり息を吐くようにしてください。また、無理に強く息を吐くと、かえって息苦しくなることがあるので注意が必要です」と具体的に説明する。

先輩看護師の一言: 「呼吸が苦しそうな患者さんを見ると、つい『大きく息を吸って、しっかり吐いて!』と言いたくなりますよね。でも、COPDの患者さんにとっては、『強く吐く』ことが逆効果になる場合があるんです。胸腔内圧が上がって、細い気道がつぶれてしまうからです。だからこそ、口すぼめ呼吸のように、ゆっくりと吐くことを意識させることが大切です。国試でも臨床でも、『なぜこの呼吸法が有効なのか』を病態生理から説明できる看護師になりましょう!」

重要概念

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