核心解説
この問題は、呼吸生理学の基本である
肺胞換気量 (Alveolar Ventilation) の計算を問うています。肺胞換気量とは、実際にガス交換(酸素摂取と二酸化炭素排出)に関与する空気の量を指し、単純な1回換気量と呼吸数の積である分時換気量とは異なります。ここでは、解剖学的死腔(ガス交換に関与しない気道内の空間)を差し引くことが重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
肺胞換気量の公式は、
(1回換気量 - 解剖学的死腔)× 呼吸数 です。数値を代入すると、(500 mL - 150 mL) × 12 回/分 = 350 mL × 12 回/分 =
4200 mL/分 となります。これは、毎分約4.2リットルの空気が肺胞レベルでガス交換に利用されていることを示します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
-
混同注意! ②番(6000 mL/分)は分時換気量(1回換気量×呼吸数)であり、解剖学的死腔を考慮していないため誤りです。
- ①番(3000 mL/分)は、死腔量(150 mL)のみを呼吸数で乗じた値(150×12=1800)に近いですが、正確ではありません。
- ③番(5400 mL/分)は、換気量と呼吸数を誤って加算したような値です。
- ④番(1800 mL/分)は、解剖学的死腔のみの分時換気量(150 mL×12回)であり、肺胞換気量とは異なります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
-
分時換気量 (Minute Ventilation): 1回換気量×呼吸数。本例では500×12=6000 mL/分。
-
解剖学的死腔 (Anatomical Dead Space): 気道内の空気でガス交換不能な領域。通常体重1kgあたり約2mLと推定されます。
-
生理学的死腔 (Physiological Dead Space): 解剖学的死腔 + 肺胞死腔(換気されても血流がない領域)。疾患(肺塞栓症など)で増加します。
概念整理: 肺胞換気量は「実際にガス交換に使われる空気量」であり、分時換気量から死腔換気を差し引いたものです。死腔が増加する病態(COPD、肺塞栓症など)では、同じ分時換気量でも肺胞換気量が低下し、低酸素血症をきたすリスクが高まります。
一目で比較!:
| 指標 | 計算式 | 本例の値 |
| 分時換気量 | 1回換気量×呼吸数 | 500×12 = 6000 mL/分 |
| 死腔換気量 | 解剖学的死腔×呼吸数 | 150×12 = 1800 mL/分 |
| 肺胞換気量 | (1回換気量 - 死腔)×呼吸数 | 350×12 = 4200 mL/分 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、人工呼吸器装着患者の肺胞換気量低下を疑う際、1回換気量と呼吸数だけでなく、動脈血ガス分析(PaCO2上昇は肺胞換気量低下の指標)を確認します。看護診断としては「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」が考えられます。
暗記のコツ: 「肺胞に届く空気 = (吸う量 - 無駄な空間)× 呼吸数」とイメージしましょう。「肺胞換気量」と「分時換気量」は必ず区別してください。語呂合わせ: 「ぶんじ(分時)はぜんぶ(全部)、はいほう(肺胞)はむだ(死腔)をひく」。
国試頻出ポイント: 呼吸生理の計算問題は毎年出題される基本事項です。特に、死腔の概念を組み込んだ計算と、その臨床的意義(低換気の評価)が問われます。PaCO2の変動と肺胞換気量の関係も頻出です。
出題パターン注意!: 単純な計算問題から、「人工呼吸器設定変更後の肺胞換気量変化を評価する」といった状況設定問題に発展します。また、COPD患者や術後患者の肺胞換気量低下をアセスメントする事例問題にも応用されます。