核心解説
この問題は、
肺循環(小循環 / Pulmonary Circulation)と
体循環(大循環 / Systemic Circulation)の基本的な違いを理解しているかを問うています。
肺循環は右心室から肺動脈を通って肺へ静脈血を送り、肺静脈から左心房へ動脈血を戻す回路です。体循環と比較して血圧が低く(低圧系)、ガス交換を主目的とします。この回路の「血液の質(酸素分圧)」と「血管の名称」の関係を正確に把握することが鍵です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
選択肢③「肺動脈は静脈血を運ぶ」が正解です。
最重要! 肺動脈 (Pulmonary Artery) は右心室から肺へ向かう血管で、全身から戻ってきた静脈血(酸素分圧の低い血液)を運びます。ここで「動脈=動脈血」と誤解しやすいですが、血管名は「心臓から遠ざかる方向」で決まり、血液の質(酸素分圧)とは無関係です。肺動脈は静脈血を運ぶ唯一の動脈です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
①「肺動脈は大動脈弓から分枝する」:
大動脈弓 (Aortic Arch)は体循環の起始部で、そこから分枝するのは腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈などです。肺動脈は
右心室から起始します。
②「肺静脈は静脈血を運ぶ」:
肺静脈 (Pulmonary Vein) は肺でガス交換された動脈血(酸素分圧の高い血液)を左心房に運びます。静脈血を運ぶのは肺動脈です。
④「肺静脈は酸素分圧の低い血液を左心房に送る」:肺静脈は酸素分圧の高い血液を左心房に送ります。酸素分圧の低い血液を送るのは肺動脈です。
⑤「肺循環の血圧は体循環よりも高い」:
混同注意! 肺循環は低圧系 (Low-pressure System)で、正常肺動脈圧は収縮期で約15-30mmHg、拡張期で約4-12mmHg程度です。体循環の大動脈圧(収縮期約120mmHg)と比較して明らかに低くなっています。
関連概念の整理 (Related Concepts):
肺循環の基本を整理します。
| 血管 | 起始/終点 | 運ぶ血液の種類 | 酸素分圧 |
|---|
| 肺動脈 | 右心室 → 肺 | 静脈血 (Venous Blood) | 低い |
| 肺静脈 | 肺 → 左心房 | 動脈血 (Arterial Blood) | 高い |
概念整理: 血管名は「血液の質」ではなく「血流の方向(心臓から遠ざかる=動脈、心臓へ戻る=静脈)」で決まる。この原則を理解していれば、肺動脈・肺静脈の混乱は防げます。
一目で比較!: 体循環 vs 肺循環
| 項目 | 体循環(大循環) | 肺循環(小循環) |
|---|
| 起始 | 左心室 | 右心室 |
| 主血管 | 大動脈 | 肺動脈幹 |
| 血圧 | 高圧系 (120/80mmHg) | 低圧系 (25/10mmHg) |
| 機能 | 全身への酸素・栄養供給 | ガス交換(CO2排出・O2取り込み) |
看護過程ポイント: 肺循環の知識は
肺高血圧症 (Pulmonary Hypertension) や肺水腫 (Pulmonary Edema)のアセスメントに直結します。右心不全では肺循環のうっ滞が生じ、肺動脈楔入圧の上昇や呼吸困難 (Dyspnea) を観察します。肺動脈圧が異常高値の場合は右心負荷を評価する必要があります。
暗記のコツ: 「動脈は心臓から出ていく道、静脈は心臓に戻ってくる道」と覚えましょう。「肺動脈は唯一、静脈血を運ぶ動脈」という逆転現象をキーワードにすると忘れにくいです。「Pulmonary Artery (PA) = Venous Blood」とセットで暗記!
国試頻出ポイント: 循環器系の基本問題として必出です。肺動脈と肺静脈の血液の質を問う単純知識問題、あるいは
混同注意!「動脈は動脈血、静脈は静脈血」という誤った先入観を利用したひっかけ問題として出題されます。また、先天性心疾患(例:ファロー四徴症)や肺塞栓症 (Pulmonary Embolism) の病態理解の基礎にもなります。
出題パターン注意!: 「肺動脈の酸素分圧は体循環の大動脈と比較してどうか?」のように比較問題に発展する場合や、「肺静脈の酸素分圧が低下する疾患はどれか?(例:肺胞低換気、シャント性疾患)」のような応用問題が出ることもあります。