核心解説
この問題は、
補体系 (Complement System) の活性化経路のうち、
抗原抗体複合体 (Antigen-Antibody Complex; Immune Complex) によって開始される経路を問うています。補体は、自然免疫と獲得免疫をつなぐ重要なタンパク質群であり、感染防御や炎症反応において中心的な役割を担います。活性化経路は主に3つありますが、その中でも古典的経路のみが、特異的な免疫反応の結果として産生される抗原抗体複合体に依存して開始されます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は
古典的経路 (Classical Pathway) です。この経路は、IgGまたはIgMが抗原と結合して形成された抗原抗体複合体に、補体第1成分である
C1q が結合することで開始されます。これにより、C1r、C1sが活性化され、C4とC2が切断され、C3転換酵素(C4b2a)が形成されるというカスケード反応が進行します。つまり、この経路は獲得免疫の存在を前提としており、抗体依存性の活性化経路といえます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②番の終末経路は、3つの経路(古典的・第二・レクチン)が合流する共通経路であり、膜侵襲複合体(MAC: C5b-9)形成に至る部分を指します。経路自体を開始するものではありません。③番の選択的経路という名称は正式な分類にはありません。④番のレクチン経路 (Lectin Pathway) は、微生物表面のマンノースなどの糖鎖に、マンノース結合レクチン (MBL) が結合することで開始されます。⑤番の第二経路(副経路)(Alternative Pathway) は、微生物の細胞表面などでC3が自然に加水分解されることにより、常に低レベルで活性化されており、抗体を必要としません。これらは抗原抗体複合体を必要としない点で古典的経路と明確に区別されます。
関連概念の整理 (Related Concepts): 補体活性化経路は、「古典的」「第二(副)」「レクチン」の3つです。これらの経路は最終的に
C3転換酵素 (C3 Convertase) を形成し、C3をC3aとC3bに切断します。C3bはオプソニン化作用(食細胞による貪食促進)を持ち、C3aはアナフィラトキシン(肥満細胞からのヒスタミン遊離を促し、炎症を誘発)として働きます。最終的には膜侵襲複合体 (MAC) が形成され、標的細胞を溶解します。
概念整理: 補体活性化経路の3つのスタート地点を理解しましょう。
| 経路名 | 開始因子 | 抗体の必要性 |
|---|
| 古典的経路 | 抗原抗体複合体 (IgG/IgM) + C1q | 必要 |
| 第二経路(副経路) | 微生物表面などでのC3の自然加水分解 | 不要 |
| レクチン経路 | 微生物の糖鎖 + MBL (マンノース結合レクチン) | 不要 |
一目で比較!:
混同注意! 「古典的経路 = 抗体が必要」 と 「第二経路・レクチン経路 = 抗体不要(自然免疫的)」 をセットで覚えましょう。
看護過程ポイント: 補体の異常活性化は、全身性エリテマトーデス (SLE) などの自己免疫疾患や、アナフィラキシーショックなどの病態に関与します。看護師は、これらの疾患における炎症症状(発熱、皮疹、関節痛)や補体価の低下(消費による)をアセスメントする必要があります。
暗記のコツ: 「古典的 = クラシックな免疫(抗体)」 と覚えましょう。「抗体が先にできた『古典的な』免疫反応の後に補体が働く」というイメージです。
国試頻出ポイント: 補体の活性化経路は、免疫学の基本的な知識として頻出です。特に、「どの経路が抗体を必要とするか」を問う問題がよく出題されます。事例問題では、SLE患者の血清補体価低下のメカニズムとして出題されることもあります。
出題パターン注意!: 単純な経路名の暗記だけでなく、「補体活性化の結果、産生されるC3a(アナフィラトキシン)が関与する病態は?」といった発展問題や、各経路の違いを比較する問題に注意しましょう。