核心解説
この問題は、
細胞傷害性T細胞 (Cytotoxic T Lymphocyte, CTL) の抗原認識機構に関する基礎的な免疫学の知識を問うています。CTLは主に
CD8陽性T細胞 であり、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などの異常な細胞を排除する役割を担います。この認識には、標的細胞上の
MHCクラスI分子 (Major Histocompatibility Complex Class I) と、そこに提示された
ペプチド (抗原断片) の複合体を、CTL上の
T細胞受容体 (TCR) と
CD8分子 が同時に認識することが必須です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! CTLが標的細胞を認識するためには、標的細胞表面に発現する
MHCクラスI分子 と、その中に結合している
抗原ペプチド の複合体が必須です。CD8分子がMHCクラスI分子のα3ドメインに結合することで、認識の安定性と特異性が高まります。これによりCTLが活性化され、標的細胞へ
パーフォリン (Perforin) や
グランザイム (Granzyme) を放出し、
アポトーシス (Apoptosis) に導きます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
①番はCD4分子とMHCクラスII分子です。これは
ヘルパーT細胞 (Th細胞) が抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージなど)を認識する際に必須の組み合わせです。CTLはCD8陽性であり、CD4は発現しません。
②番の補体C3bと抗原抗体複合体は、
オプソニン化 (Opsonization) による食作用の促進に関わるメカニズムです。CTLの直接的な標的認識には関与しません。
③番のFc受容体とIgG抗体は、
抗体依存性細胞傷害 (ADCC: Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity) に関わる機構で、主に
NK細胞 (Natural Killer Cell) がこの機構で標的を認識・傷害します。CTLはADCCを主な作用機序としません。
④番のMHCクラスII分子とペプチド複合体は、①と同様にヘルパーT細胞 (CD4陽性T細胞) の認識に必須です。CTL (CD8陽性T細胞) は
MHCクラスI分子 に提示されたペプチドを認識します。
関連概念の整理 (Related Concepts):
-
MHCクラスI: 全ての
有核細胞 に発現。内因性抗原(ウイルスタンパク質、腫瘍抗原など)を提示。CD8陽性T細胞(CTL)に認識される。
-
MHCクラスII:
抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞) に発現。外因性抗原(細菌など)を提示。CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)に認識される。
- 両者の役割を混同しないことが、免疫学の問題を解く上での鍵です。
概念整理: CTL (CD8+ T細胞) の標的認識は「MHCクラスI分子 + ペプチド(内因性抗原)」の複合体が必須。一方、ヘルパーT細胞 (CD4+ T細胞) は「MHCクラスII分子 + ペプチド(外因性抗原)」を認識する。
一目で比較!:
| 特徴 | MHCクラスI | MHCクラスII |
|---|
| 発現細胞 | 全ての有核細胞 | 抗原提示細胞 (APC) |
| 提示する抗原 | 内因性抗原(ウイルス・腫瘍) | 外因性抗原(細菌・異物) |
| 認識するT細胞 | CD8陽性T細胞 (CTL) | CD4陽性T細胞 (ヘルパー) |
| 主な機能 | 感染細胞・腫瘍細胞の殺傷 | 免疫応答の調節・活性化 |
看護過程ポイント: 直接的な看護ケアというよりは、免疫抑制剤使用患者や移植患者の看護(拒絶反応のアセスメント、感染リスク評価)において、この細胞性免疫の知識が重要になります。
暗記のコツ: 「CD8(シーディーエイト)はクラスI(アイ)と覚えよう!I(ローマ数字の1)と8の形が似ているから。CD4(フォー)はクラスII(ツー)で、4と2で数字が小さい方が小さい方(クラス)とペア。」
国試頻出ポイント: MHCクラスIとIIの違い、CTLとヘルパーT細胞の機能の違い、臓器移植(拒絶反応)やHIV感染症(CD4陽性T細胞減少)の病態理解の基礎として頻出です。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「CTLは何を認識するか?」だけでなく、状況設定問題で「ウイルス感染細胞を排除する免疫細胞はどれか」や「臓器移植後の拒絶反応のメカニズムとして正しいものはどれか」のように発展して問われることがあります。