核心解説
この問題は、
腎臓 (Kidney) における
体液調節 (Body Fluid Regulation)、特に
尿の濃縮・希釈機構と各ネフロン部位での役割を問うています。腎臓は体液量と浸透圧を恒常的に維持するために、
抗利尿ホルモン (ADH, Antidiuretic Hormone) を中心とした精緻な制御システムを持っています。この問題の核心は、「ADHがどこで、どのようなメカニズムで水分再吸収を調節するか」を正しく理解しているかどうかです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ④番の「集合管の水透過性はADHにより調節される」が正解です。
ADH (バソプレシン) は視床下部で合成され、下垂体後葉から分泌されます。血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少に反応して分泌が促進されます。ADHが
集合管 (Collecting Duct) の基底側膜にあるV2受容体に結合すると、細胞内cAMPが上昇し、
アクアポリン2 (Aquaporin-2) が管腔側膜に挿入されます。これにより、集合管の水透過性が著しく高まり、水分が受動的に再吸収され、濃縮尿が生成されます。逆にADHが分泌されないと、集合管は水透過性が低く、希釈尿が生成されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番「糸球体で能動的に水分を再吸収する」は誤り。糸球体 (Glomerulus) では、血圧により
限外ろ過 (Ultrafiltration) が行われ、血球やタンパク質以外の成分がボウマン腔へろ過されます。これは受動的な物理現象であり、
能動的再吸収は行われません。再吸収は尿細管以降の部位で行われます。
②番「近位尿細管ではADHの作用で水分再吸収が促進される」は誤り。
近位尿細管 (Proximal Tubule) では、水分の約60~70%がナトリウムと共に
等張性に受動的に再吸収されます。この再吸収はADH非依存的であり、ADHの作用は受けません。ADHが作用するのは主に
集合管です。
③番「ヘンレループではナトリウムは再吸収されない」は誤り。
ヘンレループ (Loop of Henle) の
太い上行脚 (Thick Ascending Limb) では、Na-K-2Cl共輸送体(NKCC2)を介してナトリウムが能動的に再吸収されます。この部分は尿の濃縮に重要な
間質の浸透圧勾配を作り出す役割を担います。
⑤番「遠位尿細管では水分は受動的にのみ再吸収される」は誤り。
遠位尿細管 (Distal Tubule) は、ADHの影響を受けにくく、基本的に水透過性が低い部位です。ここでは主に
ナトリウムやカルシウムの再吸収が行われ、水分の再吸収はADH非依存的な受動的再吸収はほとんど行われません。水分の最終的な再吸収調節は集合管で行われます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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尿細管糸球体フィードバック (Tubuloglomerular Feedback): ヘンレループ上行脚の緻密斑 (Macula Densa) が遠位尿細管のNaCl濃度を感知し、糸球体のろ過量 (GFR) を調節する仕組みです。
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レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系 (RAAS): 循環血液量減少時に活性化され、
アルドステロン (Aldosterone) が遠位尿細管と集合管でナトリウムの再吸収を促進し、水分も受動的に再吸収されます。こちらはADHとは異なる調節経路です。
概念整理: 腎臓の体液調節は、ADHによる水分調節(主に集合管)と、アルドステロンによるNa+調節(主に遠位尿細管・集合管)の二大システムが中心です。ADHは「水の出口を開ける鍵」、アルドステロンは「Na+のポンプを強めるスイッチ」とイメージすると覚えやすいでしょう。
一目で比較!:
| 部位 | 主な機能 | ADHの作用 |
|---|
| 糸球体 | ろ過 (濾過) | なし |
| 近位尿細管 | Na+, 水分, ブドウ糖の再吸収 (ADH非依存) | なし |
| ヘンレループ | 間質浸透圧勾配の形成 (Na+再吸収) | なし |
| 遠位尿細管 | Na+, Ca2+の再吸収, K+分泌 | ほぼなし (水透過性低) |
| 集合管 | ADHによる水分再吸収調節 | あり(アクアポリン挿入) |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 患者の尿量、尿比重、血清Na濃度、血清浸透圧を評価します。ADH分泌異常症候群 (SIADH) では低Na血症・高張尿、尿崩症 (DI) では高Na血症・低張尿(多尿)が特徴です。
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看護診断: 「体液過剰 (Excess Fluid Volume)」または「体液不足 (Deficient Fluid Volume)」が考えられます。原因疾患(心不全、腎不全、糖尿病など)と関連づけて診断します。
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計画・実施: 厳密な
輸液管理 (Fluid Management) と体重測定、尿量測定が必要です。ADH関連薬剤(デスモプレシンなど)投与時の観察も重要です。
暗記のコツ: 「ADHが働くのは集合管(集まる管)」→「集合管で水を集める(再吸収する)」と語呂合わせで覚えましょう。「近位尿細管はADHがなくても水を吸う(吸収する)」と覚えると、ADH非依存性の再吸収を理解しやすくなります。
国試頻出ポイント: 腎臓の機能は毎年出題される頻出分野です。特に「ADHと集合管の関係」「尿の濃縮と希釈」「RAASとアルドステロン」の3点はセットで問われます。また、SIADHや尿崩症の病態と看護も合わせて学習しておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(本問のような「正しいのはどれか」)に加え、状況設定問題として「低Na血症の患者にみられる症状はどれか」「多尿の患者への看護介入」など、病態と結びつけた出題が増えています。