核心解説
この問題は、
抗利尿ホルモン (ADH: Antidiuretic Hormone) の分泌調節機序を問うています。
ADH は視床下部で産生され、下垂体後葉から放出され、腎臓の集合管での水の再吸収を促進することで体内の水分バランスを維持します。 その分泌は主に「血漿浸透圧」と「循環血液量」の二つの要素によって調節されます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ADH 分泌を促進する最も強力な刺激は
血漿浸透圧の上昇 です。体内が脱水状態になると血漿が濃縮され(浸透圧が上昇)、視床下部の浸透圧受容体(Osmoreceptor)が感知し、ADH 分泌が促進されます。これにより腎臓で水の再吸収が進み、体内の水分が保持され、浸透圧が正常に戻ります。②番の「血漿浸透圧の上昇」が正解です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
混同注意! ①番「血圧の上昇」: 血圧上昇は圧受容体(Baroreceptor)を介してADH分泌を抑制します。逆に、血圧低下はADH分泌を促進します。
- ③番「血漿浸透圧の低下」: これはADH分泌を抑制する因子です。水分過剰時などにみられます。
- ④番「循環血液量の増加」: これもADH分泌を抑制する因子です。循環血液量が増加すると、心房壁が伸展され、ANPが分泌されるなどしてADHは抑制されます。
- ⑤番「心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) の増加」: ANPはADHと拮抗的に作用し、ナトリウムと水の排泄を促進することで循環血液量を減少させます。ADH分泌を促進するのではなく、むしろ抑制方向に働きます。
関連概念の整理 (Related Concepts): ADH 分泌は以下の3つの主要な刺激で促進されます。
1.
血漿浸透圧の上昇(最も強力)
2.
循環血液量の減少(10%以上の減少で顕著)
3.
ストレス・疼痛・悪心・低酸素血症(非浸透圧性刺激)
これらと逆の状態(浸透圧低下、血液量増加、血圧上昇)は抑制します。
概念整理: ADH分泌調節は「体内の水分量と濃度のバランス」を保つための生命維持機構です。覚えるべきは「
濃い(浸透圧高い)→ADH↑→水をためる→薄まる(正常化)」と「
血圧低い/血液量少ない→ADH↑→水をためる→血圧/血液量回復」の二軸です。
一目で比較!:
| 因子 | ADH分泌への作用 |
|---|
| 血漿浸透圧上昇 | 促進 |
| 血漿浸透圧低下 | 抑制 |
| 循環血液量減少 | 促進 |
| 循環血液量増加 | 抑制 |
| 血圧上昇 | 抑制 |
| ANP増加 | 抑制 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 脱水症状(口渇、皮膚ツルゴル低下、尿量減少)や溢水症状(浮腫、体重増加)の観察、血清Na値と尿量のモニタリング。ADH分泌異常症候群 (SIADH) では低Na血症に注意。
計画・実施: 水分出納バランス(I/O管理)の正確な記録が重要。輸液療法では、患者の体液状態に合わせた適切な輸液剤選択が必要です。
暗記のコツ: 「
ADHは体に水を
A(溜め)るホルモン。だから、
体が乾いた(浸透圧↑・血液量↓)ときに分泌が促進される」とイメージしましょう。
国試頻出ポイント: ADH分泌調節因子、SIADH(ADH過剰分泌)と尿崩症(ADH欠乏・腎臓の抵抗性)の鑑別、脱水と溢水の看護が頻出。特に「浸透圧上昇→ADH促進」は超基本事項です。
出題パターン注意!: 単純な分泌因子の組合せ問題に加え、事例問題で「高Na血症の患者にみられるADHの反応は?」「SIADHの患者で注意すべきバイタルサインは?」など、病態と関連させた応用問題に注意。