核心解説
この問題は、
アルドステロン (Aldosterone) の生理作用を問う、内分泌と腎臓生理の基礎知識問題です。アルドステロンは副腎皮質から分泌される
鉱質コルチコイド (Mineralocorticoid) であり、生体の体液量と電解質バランスの維持に極めて重要な役割を果たします。作用部位は主に腎臓の
遠位尿細管 (Distal Tubule) と
集合管 (Collecting Duct) です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
④番が正解です。アルドステロンは標的細胞内の受容体に結合し、
Na⁺-K⁺-ATPase の活性を促進 します。これにより、尿細管腔から細胞内への
ナトリウム (Na⁺) 再吸収が促進 され、同時に細胞内から尿細管腔への
カリウム (K⁺) 排泄が促進 されます。また、水素イオン (H⁺) の排泄も促進され、酸塩基平衡の調節にも関与します。この結果、
体液量が増加 し、血圧が上昇します。まさに「Na⁺をため込み、K⁺を捨てる」ホルモンです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:
混同注意! アルドステロンは水分再吸収を抑制するのではなく、Na⁺再吸収に伴って
促進 します。抗利尿ホルモン (ADH / バソプレシン) の作用と混同しやすいポイントです。
②番: カルシウム (Ca²⁺) 再吸収は、主に
副甲状腺ホルモン (PTH) や
活性型ビタミンD によって調節されます。アルドステロンはカルシウム代謝に直接影響しません。
③番:
混同注意! アルドステロンは水素イオン (H⁺) 排泄を抑制するのではなく、
促進 します。H⁺排泄促進により血液の酸性化(代謝性アルカローシス)を防ぎます。
⑤番: アルドステロンはカリウム (K⁺) 再吸収を促進するのではなく、
排泄を促進 します。この作用により血中K⁺濃度は低下します。K⁺再吸収は主に近位尿細管やヘンレループで行われます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
アルドステロンの分泌は主に
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS) によって制御されます。血圧低下やNa⁺低下を感知するとレニンが分泌され、アンジオテンシンIIが生成、これがアルドステロン分泌を刺激します。また、
高K⁺血症 も直接アルドステロン分泌を強力に促進します。臨床的には、
原発性アルドステロン症 (Primary Aldosteronism / Conn症候群) では高血圧、低K⁺血症、代謝性アルカローシスが特徴です。一方、
アジソン病 (Addison's disease / 慢性副腎皮質機能低下症) ではアルドステロンが不足し、低Na⁺血症、高K⁺血症、代謝性アシドーシス、血圧低下が生じます。これらの鑑別も国試では頻出です。
概念整理:
アルドステロン:副腎皮質由来、標的臓器 = 腎臓(遠位尿細管・集合管)。作用 =
Na⁺再吸収↑ + K⁺排泄↑ + H⁺排泄↑。結果 = 体液量↑、血圧↑、K⁺↓。制御 = RAAS、高K⁺血症。
一目で比較!:
| ホルモン | Na⁺ | K⁺ | 水分 | Ca²⁺ |
|---|
| アルドステロン | 再吸収↑ | 排泄↑ | 間接的再吸収↑ | 影響なし |
| ADH (バソプレシン) | 影響なし | 影響なし | 再吸収↑ | 影響なし |
| PTH (副甲状腺ホルモン) | 影響なし | 影響なし | 影響なし | 再吸収↑ (尿中Ca²⁺↓) |
| ANP (心房性ナトリウム利尿ペプチド) | 排泄↑ | 影響なし | 排泄↑ | 影響なし |
看護過程ポイント:
アセスメント:血中K⁺値(低K⁺血症の有無と症状:脱力感、不整脈)、血圧(高血圧のコントロール状態)、体液量(浮腫、体重増加、尿量)。
看護介入:K⁺製剤投与時のモニタリング、K⁺制限食の指導(アルドステロン亢進時)、低K⁺血症による不整脈(特にT波の平低、U波出現)の心電図モニタリング。降圧薬(特にアンジオテンシン変換酵素阻害薬/ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬/ARB)内服中の患者では、K⁺上昇に注意が必要。
暗記のコツ: 「
あるどすとろん、ナトカリ体操:Na⁺(ナ)はため込め、K⁺(カリ)は捨てろ!水素も捨ててアルカローシス」と語呂合わせで覚えましょう。
国試頻出ポイント: 「アルドステロンの作用として正しい組合せ」「RAASの構成要素とそれぞれの作用」「原発性アルドステロン症とアジソン病の検査値(Na⁺、K⁺、血圧)の対比」「K⁺保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)の作用機序との関連」が頻出です。
出題パターン注意!: 単純知識問題として「アルドステロンの作用はどれか」が出題されるほか、事例問題(例えば「高血圧、低K⁺血症の患者のアセスメント」)や「ホルモンとその作用部位の組合せ」としても出題されます。