核心解説
この問題は、
高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) における体内水分の移動メカニズムを理解しているか問うています。
最重要! ポイントは
浸透圧 (Osmotic Pressure) の概念です。
脱水には大きく分けて3つの種類がありますが、高張性脱水は
水分喪失がナトリウム喪失を上回る 状態です。これにより
細胞外液 (Extracellular Fluid, ECF) の
浸透圧が上昇 します。
細胞内外の浸透圧を均衡させようと、浸透圧の高い細胞外側へ、細胞内から水分が移動します。この結果、
細胞内液 (Intracellular Fluid, ICF) の量は減少し、一方で
細胞外液量は一過性に増加する方向 に働きます。しかし、全体としては水分が不足しているため、細胞外液量も最終的には減少します。
問題文は「体液の変化」として「細胞内液量が減少し、細胞外液量が増加する」という、水分移動の一過程を捉えた正しい記述が③となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
高張性脱水では、ECF浸透圧上昇 → ICFからECFへ水分移動 → ICF量減少、ECF量は相対的に増加(ただし絶対量は減少)。この「浸透圧による水分シフト」が③の状態です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①:これは
混同注意! 等張性脱水 (Isotonic Dehydration) の特徴です。水分とナトリウムが等しく喪失されるため、浸透圧は変わらず、細胞内外ともに減少します。
②:これはありえません。浸透圧に差があれば、必ず水は移動します。
④:高張性脱水ではECF浸透圧が高いため、水は細胞内から外へ出ていく(細胞内液減少)ので、逆の現象です。
混同注意! これは
低張性脱水 (Hypotonic Dehydration) の特徴に近いです。
⑤:脱水状態で両方が増加することはありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
脱水の3分類(高張性・等張性・低張性)と、それぞれの
血清ナトリウム濃度 (Serum Sodium Level) および水分シフトの方向を必ずセットで覚えましょう。
| 脱水の種類 | 血清Na値 | ECF浸透圧 | 水分シフト |
|---|
| 高張性 | 上昇 (>145mEq/L) | 上昇 | ICF → ECF (ICF減少) |
| 等張性 | 正常 (135-145mEq/L) | 正常 | なし (ECF減少主体) |
| 低張性 | 低下 (<135mEq/L) | 低下 | ECF → ICF (ICF増加) |
概念整理: 高張性脱水の核心は「ECF浸透圧上昇 → ICF水分流出 → ICF量減少、ECF量は相対的増加」という浸透圧勾配による水移動の理解です。
一目で比較!: 脱水3分類の比較。高張性(水不足、Na高)、等張性(水もNaも不足)、低張性(Na不足が主体、水過剰)。特に高張性と低張性で水分シフトが真逆になることを意識しましょう。
看護過程ポイント:
アセスメント: 高張性脱水の患者では、口渇、尿量減少、皮膚ツルゴル低下に加え、細胞内脱水による意識障害(せん妄)の出現に注意。血清Na値・浸透圧を確認。
計画・実施: 水分摂取の促進、または
低張性輸液(5%ブドウ糖液など) の投与が考慮されます。
暗記のコツ: 「高張性脱水」は「濃い外の世界(ECF高浸透圧)→ 中の水分(ICF)が外に吸い出される → 細胞がしぼむ(ICF減少)」とイメージしましょう。
国試頻出ポイント: 脱水の種類と輸液選択は頻出です。高張性脱水には低張液(5%TZなど)、等張性脱水には等張液(生理食塩液、リンゲル液)、低張性脱水には高張液(3%食塩水など)が基本と関連づけて覚えましょう。
出題パターン注意!: 「血清Na 150mEq/L、口渇、意識障害あり。どの脱水か?」のような検査値と症状からの判断問題、または「高張性脱水の患者に行う輸液はどれか」という治療選択問題に発展します。