核心解説
この問題は、解剖学・神経学の基本概念である
皮膚分節(デルマトーム Dermatome)の定義を問うています。
デルマトームは、1つの脊髄神経後根(感覚根)が感覚支配する皮膚の領域を指します。この概念は、脊髄損傷や椎間板ヘルニアなどの神経障害レベルを評価するための指標として、神経学的アセスメントで極めて重要です。体幹では帯状に、四肢では末梢に向かって規則正しく配列しており、痛みや触覚の消失範囲から障害部位を推定します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は③番です。デルマトームは、
最重要!脊髄の後根(感覚根)とそれに対応する脊髄分節が支配する皮膚の感覚領域です。各脊髄神経は、後根を通じて特定の皮膚領域から感覚情報を受け取っており、その領域がデルマトームとして定義されます。臨床では、ピンや綿花を用いた感覚テストでどのレベルの脊髄神経が機能しているかを評価します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番は
混同注意!交感神経節は自律神経系(主に血管・立毛筋・汗腺などを支配)であり、皮膚分節(デルマトーム)は体性神経系(脊髄神経)の概念です。混同しやすいですが、全く異なる系です。
②番は
混同注意!末梢神経は脊髄神経叢(腕神経叢など)から形成され、複数の脊髄神経根が集まって構成されます。1つの末梢神経の支配領域は「末梢神経支配領域」であり、デルマトームとは異なります。例:正中神経障害では母指球筋の萎縮や母指〜示指の感覚障害が生じますが、これは単一の脊髄神経根の領域ではありません。
④番は
混同注意!この記述は
筋分節(ミオトーム Myotome)の定義です。ミオトームは1つの脊髄分節が支配する骨格筋の集まりであり、デルマトーム(感覚支配領域)と対をなす概念です。
⑤番は脳神経にも感覚支配領域はありますが(例:三叉神経の顔面皮膚)、一般的な「皮膚分節(デルマトーム)」の定義は脊髄神経を指します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
デルマトームとミオトームは対をなす概念で、神経学的診察では両方を評価します。また、皮膚の知覚には末梢神経支配領域(皮膚神経支配)もあり、例えば前腕の外側は外側前腕皮神経(筋皮神経の枝)、内側は内側前腕皮神経(腕神経叢の内側索由来)など、末梢神経の走行に沿った領域もあります。デルマトームは脊髄レベルでの評価、末梢神経支配領域は末梢神経障害の評価に使われ、この違いを理解しておくことが重要です。
概念整理: デルマトームは脊髄神経後根(感覚根)に対応する皮膚の感覚領域。脊髄損傷や神経根障害のレベルの評価に用いる。ミオトームは脊髄神経前根(運動根)に対応する骨格筋群の概念。
一目で比較!:
| 項目 | デルマトーム Dermatome | ミオトーム Myotome | 末梢神経支配領域 |
|---|
| 定義 | 1つの脊髄神経後根が支配する皮膚領域 | 1つの脊髄分節が支配する骨格筋群 | 1つの末梢神経が支配する皮膚領域 |
| 評価項目 | 感覚(触覚・痛覚・温覚) | 運動(筋力・反射) | 感覚(末梢神経障害の範囲) |
| 臨床応用 | 脊髄損傷レベル・椎間板ヘルニア | 脊髄損傷レベル・神経根症 | 末梢神経損傷(手根管症候群など) |
看護過程ポイント:
アセスメント:脊髄損傷患者や神経症状のある患者の感覚障害範囲を、デルマトームマップを指標に正確に評価し記録する。
計画:感覚障害部位の皮膚保護(褥瘡予防・やけど予防)を看護計画に含める。
評価:経時的な感覚レベルの変化(改善 or 悪化)を評価し、医師に報告する。
暗記のコツ: 「デルマ(Derma=皮膚)+トーム(Tome=部分)」で「皮膚の部分」。脊髄から出る神経の「出口(後根)」と皮膚の地図を結びつけて覚えましょう。体幹は帯状(水平方向)、四肢は縦方向に走行する特徴をイメージすると覚えやすいです。
国試頻出ポイント: デルマトームの定義を直接問う問題、または脊髄損傷のレベル(Th4:乳首、Th10:臍、L1:鼠径部)を問う問題とセットで出題されることが多い。また、ミオトーム(筋分節)と混同する誤答選択肢がよく出されるため、両者の違いを明確にしておくこと。
出題パターン注意!: 「胸髄Th10レベルに損傷がある患者の感覚障害部位はどこか」という応用問題に発展する可能性があります。単なる定義暗記ではなく、デルマトームマップを頭に入れておく必要があります。