核心解説
この問題は、
正中神経 (Median Nerve) の損傷による特徴的な症状を問うています。正中神経は腕神経叢(C5〜T1)から起こり、前腕の回内筋、手根屈筋、そして母指球筋(母指対立筋、短母指外転筋、母指対立筋など)を支配します。
正中神経が損傷されると、母指の対立運動が障害され、母指球筋が萎縮して手掌が平らになる「
猿手 (Ape Hand)」変形を呈します。これは、母指と示指での物品のつまみ動作(ピンチ動作)が困難になることを意味し、日常生活動作(ADL)に大きな影響を与えるため、看護介入では患肢の保護と機能代償の指導が重要になります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 選択肢2「猿手(母指対立不能と母指球筋の萎縮)」が正解です。正中神経は、
母指対立筋を含む母指球筋群の運動と、手掌側の母指から環指橈側半分の感覚を支配します。損傷により、母指と他の指を対向させることができなくなり(母指対立不能)、長期にわたると母指球筋が萎縮して「猿手」という特徴的な変形が出現します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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混同注意! ①番の「下垂手(手関節の背屈不能)」は、
橈骨神経 (Radial Nerve) 損傷の症状です。橈骨神経は上腕三頭筋、手関節・手指の伸筋を支配するため、損傷すると手関節の背屈ができず「下垂手 (Wrist Drop)」となります。
- ③番の「下垂足(足関節の背屈不能)」は、
総腓骨神経 (Common Peroneal Nerve) 損傷の症状であり、下肢の神経障害です。
- ④番の「トレンデレンブルグ徴候(患側立脚時の骨盤下降)」は、
中殿筋 (Gluteus Medius) の筋力低下によるもので、
上殿神経 (Superior Gluteal Nerve) 損傷などで生じます。
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混同注意! ⑤番の「鉤爪手(環指・小指のMP関節過伸展、IP関節屈曲)」は、
尺骨神経 (Ulnar Nerve) 損傷の症状です。尺骨神経は手内筋(骨間筋、虫様筋の一部)を支配し、損傷すると環指・小指が「鉤爪 (Claw Hand)」変形を呈します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
上肢の三大末梢神経損傷は看護師国家試験でも頻出です。
最重要! 橈骨神経:下垂手、尺骨神経:鉤爪手、正中神経:猿手 の三つをセットで覚えましょう。また、正中神経と尺骨神経は手の巧緻運動に深く関わるため、損傷時はリハビリテーション看護や日常生活動作(ADL)援助が看護の重点となります。
概念整理 上肢三大末梢神経損傷の特徴
| 神経 | 主な運動支配 | 損傷時の変形 | 感覚障害領域 |
| 橈骨神経 (Radial Nerve) | 手関節・手指伸筋 | 下垂手 (Wrist Drop) | 上腕後面・前腕後面・手背橈側 |
| 正中神経 (Median Nerve) | 前腕回内筋・手根屈筋・母指球筋 | 猿手 (Ape Hand) | 手掌母指~環指橈側半分 |
| 尺骨神経 (Ulnar Nerve) | 手内筋(骨間筋・虫様筋)・小指球筋 | 鉤爪手 (Claw Hand) | 手掌・手背の小指側(環指尺側半分~小指) |
一目で比較! 下垂手 vs 猿手 vs 鉤爪手:手の変形と障害神経を対比。
- 下垂手:手関節を背屈できず、重力で垂れ下がる → 橈骨神経
- 猿手:母指球が平らになり、母指を対立できない → 正中神経
- 鉤爪手:環指・小指が屈曲し、伸ばせない → 尺骨神経
看護過程ポイント
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アセスメント:手の変形の有無、母指対立・ピンチ動作の可否、手掌の感覚障害範囲を確認。
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看護診断:「末梢神経損傷に関連した知覚障害」「筋力低下に関連したセルフケア不足」など。
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計画・介入:患部の保護(熱傷・外傷予防)、関節拘縮予防のための他動的関節可動域訓練(ROM訓練)、ADL援助(食事・整容時の自助具紹介など)。
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評価:感覚・運動機能の経時的変化、合併症(拘縮・褥瘡)の有無。
暗記のコツ 「
ま(
まっすぐ)
せ(
せん)
い(
い)
く(
く)」:
ま=正中神経→
猿手、
せ=橈骨神経→
下垂手、
い=尺骨神経→
鉤爪手。
国試頻出ポイント 末梢神経損傷の組み合わせ問題(神経名と変形、支配筋、感覚領域のマッチング)は毎年出題されます。「変形の名称」だけでなく、「どの手指に症状が出るか」「ADL上の具体的な障害(例:ボタンかけ困難、箸が使いづらい)」を問う状況設定問題にも対応できるようにしましょう。
出題パターン注意! 「手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome)で障害される神経は?」という関連問題や、「患者の手の変形を見て看護師が最初に確認すべき神経は?」という臨床判断を問う事例問題にも発展します。